テストと新聞2

第54話 写真部に行こう3

あれから1週間平穏な時間が流れた。鈴華さんの父親が何を言っていたかとかは、怖くて聞けていない。まあ、何も言ってこないなら大丈夫だろう。テスト勉強は、まあ普通に進んでいた。鈴華さんは真面目だし、僕も勉強はしっかりとするほうだった。ただ、一緒に勉強すればするほど、鈴華さんにテストで勝てる気がしなかった。1教科も勝てる気がしない。無理ゲーな気がする。


まあ、そんなことで何もなく平和だったが、間違えなく平和を乱す事件が起きた。六角関係のうちの写真部の人に呼び出されたのだ。名前は……まあね、そういうこともあるよ。


「何かしらね。雀君」

鈴華さんは、いつもは本を持っている手に単語帳を持っていた。


「知らないですけど。新聞の完成か。もしくは、面倒な事か。」

まあ、両方だと思う。嫌な予感しかしない。マジで、本気で怒っても僕ら良いと思うけど。鈴華さんは、そんな感じじゃないし。


「まあ、どっちでも良いけど。早く終わらせて勉強会をしましょう。雀君」

鈴華さんは、そう言って無表情で、写真部の前で立ち止まり単語帳を見ていた。もう飽きてるのか、それとも僕をテストで叩き潰し為に全力を注いでいるのか。まあ、めんどくさくそうだった。


両手で単語帳を持っている鈴華さんのために、写真部の部室のドアを開けた。部室には、六角先輩経由で連絡をしてきた本人はいなかった。その代わりに見たことのない女性生徒がいた。


「……」


「……」

目が合って、無言で数秒過ぎた。


「教室を間違えたわね。雀君」

鈴華さんが、そう言って振り返って戻ろうとしたときに


「合ってますよ。すいません、呼び出して。まずは、プレゼントです。」

そう言って写真部の人が現れた。まあ、そりゃそうだ。写真部の部員が彼女一人なわけない。鈴華さんは、両手が塞がっていたので、鈴華さんが持っていた単語帳を僕は受け取ってた。鈴華さんは、作り直した新聞を受け取っていた。


「ありがとう。では、帰りましょう。雀君。」

鈴華さんは、満足そうにそう言っていた。


「待ってください。まだありますから。」

写真部の人は、そう言って焦っていた。


「雀君、任せたわ。」

しかし、新聞を読むのに夢中になっている、鈴華さんは、興味がないらしい。


「…任されました。犯人分かりましたか?」


「そのことなんだけど。みんな違うって言うんです。」


「そりゃそうでしょ。誰だって罪は認めないでしょ。」

直接聞いたのか。アホかな?まあ、犯人は不明と。それでわざわざ呼び出されたのか。


「いや、その、それ以外にもしっかりと1週間観察してたんですけど。誰も違うって言うです。」


「……そうですか。それだけですか?では、帰りましょう。鈴華さん」


「ちょっと、ちょっと待ってください。絶対に、私の幼馴染たちが犯人ではないと思います。流石に分かります。嘘をついてるかどうかわ」


「……そう。まあ、そうなんですね。」

幼馴染のウソか、確かにそれなりに分かる。


「それで、私は諦めて先生に白状をしたんです。」

どうやら、彼女はしっかりと責任を感じているらしく、新聞を作ったことを白状したらしい。白状して教師に探すのを手伝って貰うことにしたのだろう。まあ、犯人が六角形の人々ではないなら、教師が捨てたのだろう。


「それで。」


「それで、しっかりと怒られたんですけど。まあ、それは、置いておいて、先生は、その新聞は回収してないって言うんですよ。」

写真部の人は、そんな笑えない事実を告げた。つまり、完全に迷宮入りである。終わりのおしまいである。


「……」

何を言えば良いか分からなかった。


「……まあ、ネットとかには、情報は出てませんよ。」

写真部の人はフォローのようにそう小さく呟いた。何のフォローにもなっていない。全く分からないのか、なるほど。


「……マジで、本当に笑えないから、何とか探してくださいよ。それに、まあ僕らの記事はまだマシですけど。他の人の記事は」

とりあえず、どうしようもないし、結局迷宮入りした事件が二つに増えただけだ。手紙の犯人とこの事件の犯人。もう、分からないな。


「…すいません。」


「帰りましょう。鈴華さん」

まあ、ここにいても何も進まない事が分かった。ちょうど、新聞を読み終えたころの鈴華さんに声をかけると


「そうね。つまり、状況が悪くなったって報告でしょ。良い知らせを待っているわ。」

鈴華さんは、そう言って無表情で頭を下げていた。さて、戻ってテスト勉強をするか。考えるのを辞めた。

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