第53話 何でこうなった

勉強会は1時間しか続かなかった。

そして、今リビングにいた。

「何で、今、野球を見てるんですか?」

そして、野球を見ていた。


「スポーツ観戦よ。雀君。」

スポーツ観戦か。スポーツ観戦をなんで、鈴華さんの家でしてるのだろうか。


「何で?」


「仕方ないじゃない。風香が勉強会で勉強をするのは、やっぱりおかしいって言うのだから。」


確かに、そう言っていた。だから勉強会はお開きになった。

それで、リビングでテレビを見ることになった。

「それで、その本人が、いないのは?」

そもそも、何故スポーツ観戦なんだ。そして、最初に勉強会を辞めようって言った鈴華さんの妹がここにはいない。


「知らないわ。でも良いじゃない。前に約束しなかった?」


約束、スポーツ……ああ、したなそんな話。で、何で今。

「ああ、約束しましたね。スポーツ観戦するって」


「ええ、ちょうど良かったでしょ?」

鈴華さんは、無表情でジッとこっちを見て小首を傾げていた。


「ええ、なんか違う気がするけど。」

僕の想定と随分違った。


「何が違うの雀君。」


「いや、こんな感じじゃなくて、もっと準備して観戦するものだと。」

もっと大々的に行うものだと思っていた。だから、こんないきなり開催されるのは予定外の予想外だった。


「では、今度そうしましょう。雀君。テスト終わりの楽しみね。」

鈴華さんは、そう言うと小さく欠伸をしていた。まあ、楽しみか。


「それで、鈴華さん。野球のルール知ってますか?」


「ふっ、知らないわよ。ボールを使うのよね。」

そりゃそうだ。鈴華さんが、野球のルールを知らないのも、野球でボールを使うのもそりゃそうだ。


「まあ、球技ですからね。」


「馬鹿にしてるわね。雀君は知ってるの?」

鈴華さんは、ムスッとした表情でそう言っていた。


「まあ、最低限は、知ってますけど。」


「教えて、良く分からないわ。教えなさい。雀君。1ミリもルール知らないわ。」

ムスッとした表情で、鈴華さんは、そう言っていた。


「ええ、全く分からないのに見てたんですか?」


「ええ、そうよ。教えて雀君」

謎にドヤ顔をしている鈴華さんは、ちょっと可愛かった。


「僕も教えられるほど詳しくないんですけど。」


「そうなの?」

鈴華さんは、無表情で首を傾げていた。


「ええ、僕もスポーツとかしませんよ。だから、本当にそんな詳しくないですよ。」


「そんなことは知ってるわ。でも、頑張りなさい。」

無表情でそんな無茶を言ってきた。まあ、いつまでも無駄話をしていたいが、そろそろ、時間も無かった。


「ええ、無理ですよ。てか、そろそろ帰れないとですし。」

流石にそろそろ帰らないといけない。色々な意味で。


「そうね。今回は勘弁してあげるわ。雀くん」


「そうして下さい。」

少しスポーツの勉強も必要だ。テスト勉強もあるのに。


「それじゃあ、送るわ。」


「大丈夫ですよ。」

僕を送っても帰りが1人になるので危ないだろう。


「そう。遅くまで悪かったわね。」


「いえ、こちらこそ、遅くまでお邪魔してすいませんね。」

そうとりあえず、ほぼ反射的に言い返した。


「それも、そうね。もっと謝罪しなさい。雀君。」

鈴華さんは、小さく笑った。ご機嫌そうだった。


「ええ、理不尽ですね。」


「それが人生よ。玄関まで送るわ。」


「それは、お願いします。」

まあ、玄関までは送って欲しい。


そんな事で玄関まで送って貰って

「また、明日ね。雀君。」

鈴華さんが僕に手を振った時に、玄関が開いた。


「「えっ」」

その目の前の人物が、鈴華さんの父親だと言うことはすぐに分かった。


「えっと……こんばんは。お邪魔してました。」

もう、それ以外の言葉が出なかった。何でこうなった。何この気まずさ。


「こんばんは」


「父さん邪魔よ。バイバイ、雀君。」

鈴華さんは、酷かった。

とりあえず、帰ろう。

全力で、鈴華さんの父親に頭を下げて全力で歩き始めた。

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