第49話 帰り道

帰り道、六角形先輩を含めた3人で歩いていた。

「「何で5人に喋ってるんですかね。」」


この先輩、最悪だった。いや、悪くはないけどさ、そもそも、この日に限って、5人が図書室にやって来たらしい。代わる代わるやって来た六角関係の人々に世間話として、偽物の新聞の話をしたらしい。本当に。

パッと鈴華さんを見ると僕と似たような表情になっていた。

ジト目で、六角形先輩を睨んでいた。


「……何で私は、今、後輩二人に睨まれてるんですか?」


「はぁあ。これで事件は迷宮入り決定だわ。雀君」

鈴華さんは、無表情でため息をついていた。

迷宮かどうかは知らないけど。でも話していたのが数人だったら、犯人がすぐに分かった。けど、もう6人もいれば考えるのめんどくさい。


「迷宮とは言わなくても、犯人候補が6人って。」


「何の話?」

まったく状況を理解しておらず、キョトンとしている六角先輩には、妙にイラっとさせられた。


「「新聞の犯人ですよ。」」

鈴華さんと声が揃った。


しばらく、先輩は、黙りこみ見たことのない表情になってから

「……今日は用事があったんだよ。では、さようなら後輩たち。」

そう言って笑いながら走り去っていった。


「逃げましたね。雀君。六角形先輩」


「逃げましたね。帰りますか。」

まあ、追いかけたところで、何にもならない。とりあえず、帰ろう。


「そうね。まあ、新聞は写真の子に任せましょ。雀君」


「それじゃあ。明日こそは、勉強ですね。」

結局、今日はあまり勉強をしなかった。テストの勝負もあるのだ。いや、マジで勝てる気しないけど。


「雀君。ちょっと待って。」

鈴華さんの携帯が鳴った。電話か。誰からだろうか。


「良いですけど。」


まあ、待つことにした。1分程度仲良さそうに談笑していた。

電話を終えると鈴華さんは、ジッとこっちを見てきた。

それから、無表情で淡々と

「ねえ、雀君。今から私の家に来ない?」

そう言った。


「えっ?」

ちょっと、突然すぎて意味が分からなかった。


「間違えたわ。今から私の家に来なさい。雀君。」


拒否権はないらしいが、流石に勝手に行くのはあれだし、母が心配すると思う。

「いや、親に言わないと。」


「大丈夫よ。君の母親からの電話だったから。」

鈴華さんは、小さく笑っていた。


一瞬、思考が止まった。何で?

「何で?」

何で、僕の母が鈴華さんに電話してるの?何で電話番号知ってるの?


「『今日帰り、遅くなるから』って言ってたわ。」


「何で君に連絡が行くんですか?鈴華さん」

『言ってたわ。』ではなくて、何故帰りが遅くなる連絡が僕ではなくて、鈴華さんに届くのだろうか?意味不明である。


「分からないわ。君が信頼されてないのでわ。ともかく、行くわよ。」

すげえ辛辣。決定なのか、行くこと。マジか、絶対に勉強できないじゃん。


「マジですか。」


「マジよ。ちょっと待って」

そう言うと鈴華さんは、僕を静止した。それから、携帯を取り出して電話をかけ始めた。


「えっ。誰に電話?」

そう、思わず声を出したが、鈴華さんは、こっちを小さく顔を膨らませて睨んで黙るようにジェスチャーをしていた。


「良いわよ。喋って、雀君。夜ご飯も用意してくれるって行くわよ。」

鈴華さんは、電話を終えると僕の手を掴み引っ張り始めた。ああこれ、決定なのね。引っ張る力は強くないけど、抵抗できる気はしなかった。


「誰に電話しましたか?」


「母よ。行くわよ、雀君」

鈴華さんは、無表情で抑揚なく、当たり前のようにそれを告げた。

鈴華さんの両親いるの?マジで。

ええ、マジで。

鈴華さんは、なんかうちの母親に会っても余裕そうだし仲良くしてるけど。

僕には、そんな胆力無かった。


「マジで。マジかよ。」


「マジよ。行くわよごちゃごちゃ、言ってないで」

鈴華さんは、そう言って僕の手を引っ張って歩き始めた。

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