第47話 写真部に行こう2

とりあえず、写真部の部室に案内された。

部室には人がいなかった。

「知り合い?雀くん」

鈴華さんは、少し怪訝そうな表情でこっちを見てきた。


「知りません。鈴華さんの知り合いじゃないんですか?」

濡れ衣が発生しそうになっていたが、僕は知らない。クラスメイトじゃない人は、基本的にあの二人以外知らない。


「違うわよ。雀くん」

鈴華さんは、小さく首を傾げていた。


「でも、めっちゃ知り合い面してませんか。」


「……あっ、分かったわ。多分勘違いよ。」

なるほど、勘違いか。鈴華さんがそう言っているが、鈴華さんを勘違いすることなんてあるかな。いや鈴華さんは、間違えたりしないと思うけどな。ワンちゃん、鈴華さんの姉となら分かるけど。でも、高校生じゃないしな。まあ、でも、面倒だし勘違いで良いか。


「違うわ。バカップル。ていうか、二人三脚で同じだったでしょ。」


二人三脚。六角関係の一角つまり、

「「六角形の頂点。」」

あの関係性の一人なのか。なるほど、それだったら。こっちを一方的に知っているのが理解できる。


「六角形?何?」

彼女は、怪訝そうな表情でこっちを見ていた。あっ、不味い。

鈴華さんの方は、面倒な事は嫌なのか、部室を見ているフリをしていた。


「えっ、ああ何でもないです。それで、そのお名前は。」

仕方ないので僕がとりあえず、まずは、応対する事にした。


「名前知らないのね。宇都宮 空です。……それで、何の用ですか?」

彼女は、そう言うと頭を下げた。確かに見たことあるような気がする。二人三脚で同じだったのか。


「その、僕らの写真を不正利用している新聞記事がありまして。」

色々迷ったがまあ、普通に正面から聞いてみることにした。嘘をつかれる可能性もあるが、まあ、鈴華さんの圧があれば何とかなると思う。


「…………そんなのがあるんだ。」

目の前の人物の返答は、少し変な間があった。それを見て、鈴華さんも、宇都宮さんを見ていた。


「「何か知ってますね。」」

鈴華さんと声が揃った。鈴華さんは無表情であった。そりゃそうだ。


「…知りません。」


絶対、知ってるわ。この人。

「「本当ですか?」」


「……多分、その。それ作ったの私です。写真は、写真部から……」

マジかよ。犯人見つかったじゃん。うわああ。でも、だとしたら何故僕ら以外も貶しているのだ?でも、


「「犯人じゃん。」」


「いえ、そうなんですけど。その作ったのは私です。でも、作っただけです。」

目の前の犯人は、無理のありそうな言い訳を始めていた。


「何言ってるの?この人。」

無表情で、鈴華さんは抑揚のない声で犯人に詰め寄っていた。


「……私のそのストレス発散として、その……偽物の新聞を作ってるんですよね。」


「最低の趣味ね。」

鈴華さんは、無表情で冷酷にそう告げた。まあ、この場合は正論か。


「……まあ、否定は、しません。その新聞を作ってそれを見て満足してたんです。それが、その、多分盗まれました。」

犯人は、そう言った。いや、日本は推定無罪だから、犯人はダメか。容疑者か?


「多分?何を言っているんですか?あなたは。」

鈴華さんは、さらに詰め寄っていた。僕が犯人だったら自供していると思う。てか、今思うのは、変だけど、鈴華さんって僕に対して大分、マイルドに接しているんだな。少しニヤツキそうになった。


「……ただ、無くしたと思ったんです。でも、掲示されてたって事は……。本当に掲示したことは、知らなかったんです。」

あれ、宇都宮さん、本当に掲示したこと知らない感じなのかもしれない。


「そんな、嘘が通用しますか?雀君も、黙ってないでなんか言いなさいよ。」

鈴華さんは、ご立腹だった。僕が会話に参加していないことにもご立腹らしい。

無表情で少し顔を膨らませていた。


「ねえ、君が掲示してないならさ。誰が犯人なんですか?」

とりあえず、聞いてみるか。


「心当たりは、二人います。ごめんなさい、勝手に写真を使って。掲示の方は、どうにかしますから。」

多分、それなら、六角関係のうちの誰かだろう。


まあ正直、写真の僕は新聞なんてどうでも良い。もっと言えば学校内だったら、写真を使われるのも100歩譲っても良いけど。多分、鈴華さんが言いたいのはそこではない。


「「いや、写真を使われるのは良い、あっ」」

鈴華さんと声が揃った。


「……仲良いですね。」


「…雀君。言ってやって。」

鈴華さんは、無表情で腕を組んでいた。ただただ可愛いだけなのでは?


「……記事を書くならさ。最も良い内容にしてほしいんです。何バカップルって。終始いちゃついてるって、アホみたいって、おかしいですよね。つまり、つまりですよ。」

僕が一呼吸おいて、鈴華さんを見ると鈴華さんは小さく笑っていた。


「「書き直してください」」

鈴華さんと声が揃った。まあ、そっちの方が面白そうだし。それに、鈴華さんがどう思ったかは知らないが、新聞のクオリティの高さには目を見張った。

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