テストと新聞
第43話 登校2
「おはようございます。雀くん昨日は楽しかったです。」
朝、チャイムの音を聞きドアを開けると鈴華さんが、小さく欠伸をしていた。
連絡とかは特に無かったが、この時間には来ると思っていた。
「おはよう。今日も迎えに来てくれてありがとうございます。昨日、人生ゲームしかして無いですけどね。」
昨日は、人生ゲームを結局ずっとしていた。みんな、変えることなく母親が帰ってきて、それで夕飯まで食べて帰った。マジで、何なのだろうか。まあ、それは、無くは無い。良くある。問題は、鈴華さんと母親が妙に仲が良いことだ。母親からどんな情報が流れるか分からない。子供の頃の写真とか渡されかねない。それは、恥ずかしい。
「楽しかったから良いのよ。それにしても、今日は起きるの早かったのね?待つ予定だったわ。」
鈴華さんは、そう言って本を僕に見せた。
「学習能力あるんですよ。」
早く起きて出かける準備をしていた。この前から学んだのだ。
「流石ね。偉いわ」
鈴華さんが、褒めてきた。えっ、罠?何それ?罠。
「えっ、褒めないでください。怖いですから。」
「私を何だと思ってるんですか?私は褒めて伸ばすタイプよ。」
鈴華さんは、ムスッとした表情で呟いた。
「……絶対に違う。」
貶して伸ばそうとしないタイプだ。それは、言い過ぎだけど、褒めて伸ばすタイプではない。
「可笑しいわね。何で食い違うのかしら。」
「まあ、どっちでも良いですけど。学校に行きましょう。鈴華さん」
鈴華さんは、本をしまうと、僕が鍵を閉めているところを退屈そうに眺めてから、思い出したように話し始めた。
「そうね。そう言えば聞いた?」
「何を?」
全く心当たりが無かった。
「その感じだと聞いてないのね。それもそうか。連絡先なんて知らないものね。」
「何の話ですか?」
全く分からなかった。マジで、何の話だろうか。
「君の体育祭の頑張りの一部は無駄になったわ。」
別に頑張っても無いし。無駄になるとかそう言うのは無いけど。
体育祭の頑張りって何?二人三脚の走ったの?あれは、鈴華さん的に、思い出にカウントされなかったのか?いや、それは無いな。じゃあ、何?
「何が起きたんですか?」
「……つまりは、昨日ね。あの六角関係は崩壊したらしいのよ。」
鈴華さんは、無表情でそう言うと欠伸をしてから、のびをしていた。猫みたいだ。
六角関係ってあれか、なるほど。結局崩壊したのか。
「なんで?誰かが突撃したの?」
「そうらしいわ。一人が唐突に告白して、ドミノ倒しに告白と失恋が発生したらしいわ。」
「地獄かな?誰も両想いにならないものなんだね。」
不思議だ。幼馴染でずっといて、どこも両想いにならないのは、まあここで自分の意思を曲げずにしっかりと振るのは凄いと思う。
「地獄は、ここからよ。」
「ええ、まだなんかあるんですか?」
「この事件の結果、矢印が全部逆を向き始めたらしいわ。」
全然、尊敬できないは、何それ。結局、何も変わってないじゃん。
「……もう勝手にしてくれって感じですね。」
良く分からない他人の恋路に関わる必要も無いし。自分のやつですらよく分かってないし。
「そうよね。先輩にも、もう関わらなければ良いのでわ?って言っておいたわ。」
「じゃあ、もう、巻き込まれることもないですね。学校に行きましょう」
とりあえず、学校に行こう。
「そうね。そう言えば今日の英語の小テスト勉強した?雀くん」
鈴華さんは無表情でこっちを見た。うん?
「えっ、小テスト。えっ?」
そんなものあったの。えっ、嘘でしょ。
「嘘よ。びっくりした?雀君。」
鈴華さんは笑っていた。渾身の笑顔だった。
本当に、ビビった。
「………今から、無視します。鈴華さん」
「良いわよ。勝手に話し続けるから、そしたら、雀君は、そのうち返答するわ。」
鈴華さんはそう言って笑っていた。
「……楽しいですか?」
「ええ、楽しいわ。読書の次ぐらいに」
鈴華さんは、そう言って無表情でピースをしていた。
「読書に勝てるように精進しますよ。」
とりあえず、そう笑った。
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