第36話 体育祭2

担任からの呼び出しは、確認だった。

僕の悪口が書かれた紙が、というか、嘘が書かれた紙が数十枚置かれていたらしい。それに、心当たりがないかと聞かれた。内容には全く心当たりが無かったが。この紙を用意したのは、多分、手紙の人だろう。


「本当に、手紙の人は何がしたいのだろうか?」

非常に面倒なことになったと溜息をつきながらテントに向かって歩き始めた。

そして面倒ごとに出会った。


「「「天野 雀だな」」」

知らない3人の男の人に取り囲まれていた。


「どなたですか?」


「俺らは、二人三脚で競争する。それの邪魔をしないでくれないか?」


「頼む。」


「この通りだ。」

どうやら、二人三脚を走る人たちらしい。なるほど、いや、ここで僕に頭を下げれるぐらいなら、はぁ。いや、でも3人で来るってことは?いや、おかしくね。だって、全員好きな人は違うんでしょ。……お互いの好きな人を勘違いしているのか。こいつら、全員、同じ人を好きだと勘違いしているのか。


「いや、ええそんなこと言われても。」


「「「……とにかく頼んだ。いいだろ。どうせ、アホみたいにいちゃつく為に出ただけだろう」」」


「いや、その、無理ですよ。普通に僕たちにも勝てば良いだけなのでは?てか、そもそも、こういう事をお願いしに来た時点で、無理だと思いますよ。さようなら。」

僕は、手紙の人の件で少しイラっとしていたこともあり、そう言い残してテントに向かう歩みを速めた。


本当に、ああどうにかして1位を取ってやりたい。そもそも、僕のところにこずに普通に僕たちに勝てば良かったじゃん。



とりあえずテントに帰るか。

「助けてください、天野さん」

しばらく歩いていたら、知り合いに出会った。

鈴華さんの妹だ。彼女は、少し困っていたのか、助けを求めていた。


「迷子ですか?鈴華さんのいる場所に一緒に行きますか?」


「迷子ではないですけど。姉のところには行きます。それと、助けてもらいたい内容は違います。」

てっきり、迷ったのかと思った。そもそも、僕に助けてもらう内容なのど、姉の元に案内するぐらいではないだろうか?


「ええ、何ですか?」


「君の幼馴染?妹?をどうにかして欲しいんです。」

幼馴染?妹?ああ、何で?この前会ってたな。


「幼馴染?中学生?ああもしかして同じ学校なんですか?」


「あの後で後輩って分かったんですけど。その」

後輩なのか。なるほど。それで、何かがあるのか?


「その?」

僕が首を傾げたときに、鈴木 真紀が目に入った。噂をすればなんとかってやつか。


「あっ、雀兄さんに、それに先輩」


彼女は、こっちに気が付くと大きく手を振った。それから、こちらに走ってきて、鈴華さんの妹に抱きついた。この前は知らなった感じなのになんか仲良くなっていた。


「……暑苦しい、撫でるな。あっちに行ってください。」

いや、違うは、一方的に妹が……


「照れないでくださいよ。先輩」

妹は、鈴華さんの後輩を抱きかかえながら頭をわしゃわしゃ撫でていた。


「……無理かな?力にはなれないかな。」

唐突に百合が咲いた気がするが、まあ妹は、気に入った人にはこんなものだ。妹が鈴華さんに来ないだけ良いし。ごめんね。君は犠牲だ。ありがとう。


「……雀兄さん、何ですか。その目は。」

ほぼ妹は、そう言いながら、鈴華さんの妹を撫でていた。いや、先輩撫でるなよ。


「…今からテント戻るけど着いてきますか?」

帰ろう、テントに。遅くなると鈴華さんが、不機嫌になるかもだし。


「私は、ちょっと用事が……このまま行くと姉さんに何言われるか分からないし。」


「先輩逃げないでくださいよ。ほら行きましょうよ。」


後ろを、たぶん仲良しな二人がついて来た。なんでこの二人は、こんなに距離が近づいているのだろうか?まあ、気にしないで、テントへ向かって歩き始めた。

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