第35話 体育祭1
体育祭本番の日がやって来た。
日曜日出勤だったが、その代わりに月曜日が休みだった。
あれから、特に何もなかった。
先輩が、二人三脚の攻略法を教えてくるぐらいだ。
それ以外は、まったりとした時間が流れた。
手紙の件も何も無かった。
そして、練習も……
「何もしませんでしたね。鈴華さん」
「ええ、練習もしなかったし、特に何もなく平和だったわね。」
結局練習するために集まって、遊んでいた。ジャージとかで公園に集まり、ただ無駄話をして帰るだけだった。
そして、二人三脚しか出場しない僕たちは、基本的に暇だった。
「暇ですね、鈴華さん。応援でもしますか?」
自分たちのチームテントの後ろの方で、ボーっとしていた。
「でも、幼馴染さんは違う、チームよ。雀君」
クラスごとにチーム分けされているので、幼馴染とも友人とも違うクラスだった。正確に言えば、8クラスを4つのチームに分けているので、同じチームになる可能性もあるが、まあ、今年は、違った。
「確かに、でも良いんじゃない。」
今から、幼馴染の短距離走が始まりそうだった。正直、まあチームの勝利とかどうでも良かったし、別のチームを応援しても良いでしょ。
「確かに、そうね。応援しましょう。」
鈴華さんも、無表情で同意して、ファイティングポーズをした。
「ダメとは、言わないけど。二人も自分たちのチームも応援してくださいね。」
通りすがりに、委員長にそんなことを言われた。委員長はテントの外を出て何処かに向かっていた。
「……応援しますか。」
「ええ、そうね。」
鈴華さんは、無表情でのびをしていた。猫みたいだった。
「そう言えば、本は持ってきてないんですか?鈴華さん」
いつも大体持っている本を鈴華さんは持っていなかった。朝も持ってなかった気がする。
「……持ってくれば良かったわ。でも止められたのよ。今日、家を出る前に、家族に」
「なるほど」
まあ、止められるか。
「……そうね。応援って三三七拍子すれば良いのかしら?」
鈴華さんは、そう言って小さく笑っていた。
「しても良いと思いますけど。目立ちますよ。」
「ふっ、確かにそうね。雀君、頑張って。私は他人のフリするわ。それにこっちの方が、妹は見つけやすいわ。」
鈴華さんはこっちを見上げて、一瞬渾身の笑顔を浮かべて、それから、いつも通りの無表情になった。
「僕がするんですか?妹来てるんですね。」
「ええ、妹だけ来てるわ。暇なのかしら。雀くんは?」
「真紀ちゃんが、ああ幼馴染の妹が来るって言ってたのを幼馴染から聞いた。」
いや、家族ではないけど。まあ、家族のようなものだろう。
「家族カウントなのね。とりあえず、そろそろ、始まりそうだし、応援しましょう。雀君。」
鈴華さんがそう言って僕の手を引いたときに、
「ちょっと、良いかな?天野君。先生が、担任の先生が呼んでる。」
戻ってきた委員長にそう言われていた。息を切らせていたので、なんかまあまあな事態なのか?
「ええ、行ってくる。」
「分かったわ。ここで座って待っとくわ。」
鈴華さんは、最初いたテントの後ろの方に戻った。
「応援は?」
僕がそう聞くと鈴華さんは無表情でこっちを見て目をパチパチさせた。
それから、数秒ジッとこっちを見て
「頑張って、雀」
そう言った。
うん?
「……いや、そうじゃなくて」
僕の応援をするってことじゃなくて、応援しないの?
「何が?早く戻って来てよ、暇だから雀君。」
鈴華さんは、不思議そうにこっちを見た。
あれ?天然。そもそも、一人で応援しに行く気はないのか。
「まあ、すぐ戻ってきますよ。幼馴染の応援は?」
「………ここからするわ」
少し、鈴華さんの顔が赤くなっているのを見逃さなかった。
「そうですか。顔赤いですよ。鈴華さん」
「うるさいわ。さっさと行きなさい。雀くん」
鈴華さんはムスッとした表情で少し顔を赤くして、そう言っていた。
僕は、その言葉に送られながら、僕は担任の所に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます