第32話 練習2

「雀兄さん……誰ですか?その人」

幼馴染の家のドアを開けると鉢巻を持った、幼馴染の妹が首を傾げた。不思議そうな顔をしていた。


「鈴華さんです。」

とりあえず、そう言ってみた。なんて言うのが正解なのだろうか?


鈴華さんは、こっちを見てため息をついた。それから、僕とほぼ妹の間に立ち

「春野 鈴華です。雀くんの彼女です。」

そう無表情でそう宣言した。


ほぼ妹は、目を見開いて驚き、しばらくフリーズしてから

「……えっ、そうなの雀兄さん。」


「……そうですけど。」

恥ずかしくね、これ。


「ロリコン……だって、中学2年生の私より……えっ」


ロリコンじゃない。僕は、ロリコンじゃないはずなんだ。

「いや、違うから。ぼ」


「雀くんはロリコンです。ふっ、残念だったわね」

僕より前に何故かドヤ顔で鈴華さんは、宣言していた。

何でだよ……


「……まあ、そうなんですね。それで雀兄さん、ハチマキで良いんでしょ。古いのだけど」

しばらく無言の間の後で、ほぼ妹が僕に鉢巻を手渡した。


「うん、ありがとう。」


「でも、返してよ。お姉ちゃんも使うって言ってたから。」


「ええ、あの人も出るの?」

絶対に二人三脚で使ってよい人材じゃない。運動神経がよいのだから適当に短距離走でも走ってろよ。


「うん、普通に短距離と二人三脚に出るって」

……なるほどな。


「それなら、練習終わったら、返しに来る。」


「でも、それも、大丈夫。私も練習ついて行くから。」

そう言うとほぼ妹は、帽子をかぶろうとしていた。


「「何で?」」

鈴華さんと完全に声が揃った。

意味不明である。


「ええ、良いじゃん。ちょっと気になるし、小姑ゴッコするから。」


「辞めて」

マジで、この姉妹面倒くさい。何なんだよ。本当に


「修羅場チャンスね。」

なんか鈴華さんは少し笑顔でそんな変なこと言ってるし。


「何で、鈴華さんは嬉しそうなんですか?」

とりあえずそう言ったが鈴華さんは、笑いながらこっちを見るだけだった。


「面白いね。うん、納得納得。まあ、これならしょうがないか。雀兄さん小姑はまた今度にします。」


「……一生しないで良いですから。」

とりあえず、後で幼馴染の方に告げ口しておこう。幼馴染は、僕にはこんなダルがらみをしてくるが、妹がそういうことをしてたら怒るのだ。理不尽な姉タイプだ。


「じゃあ、雀兄さん先に行ってて。私は、鈴華さんと連絡先交換するから。」


「何で?」


「うるさい、さっさと先にいくの雀兄さん」

ああ、もう絶対に幼馴染に言おう、もはや事実より盛ってチクっておこう。



僕は、ハチマキを持ってゆっくりと公園に向かって歩き出した。

僕がそれなりの距離になっても、鈴華さんはまだ戻ってこなかった。

何か、連絡先を交換した後で喋ってることは分かる。でも、声は聞こえなかった。

ただ、何か鈴華さんが、少し動揺している気がする?いや、表情は見えないけど、雰囲気が?


しばらくして、会話が終わったのか、鈴華さんが走って僕の歩いていた場所までやってきた。

「ねえ、雀。」

鈴華さんは、無表情だったが声が少し声が上ずっていた。

呼び捨て?何を言われた?何がある?


「……どうしたんですか?怖いんですけど。」

嬉しさよりも恐怖が勝った。だって、可笑しいのだ、急に呼び捨てとか。何かがある。ほぼ妹のあいつに何かを吹き込まれたに違いない。


「何でもないわ。雀君。早く練習しに行きましょう。何してるの行くわよ。」

鈴華さんは、少し不機嫌そうな表情でこっちを睨んだ。……ああ、これ単純に呼び捨てしてみただけなのね。それを怖いって言ったな僕。ここは、もう言うしかない。


「行きましょう。鈴華」

ハズイ、ハズイああ、本当にこう言うの苦手。


「遅いわよ。天野君」


「………牛乳奢るから許してください。」


「……うるさいわ」

そう言って、鈴華さんは、こっちを睨んでから、少し笑い。どんどんと歩き始めたので、僕はその後を追いかけた。

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