第31話 練習1

放課後、一度家に帰って荷物を置いてから、再び公園に集合した。

なんかこういう事で頑張るのは、久しぶりな気がする。

「練習をしましょう。雀君。」

ぶかぶかのジャージに身を包んだ鈴華さんがそう言ってファイティングポーズをしていた。無表情だったが、可愛かった。


「やる気ですね。」


「ええ、目指すは一番よ。それに」


「それに?」

鈴華さんは、ポケットから、紙を出した。紙……


「それに、こんな物が届いたわ。」

どっからどう見ても、手紙だ。ああ、えっ、ここで手紙増えるの?マジで。嘘だろ。


「手紙……不穏ですね。」


「不穏よ。」


そう言って鈴華さんは、手紙を開けてこちらに見せた。

手紙は、ワープロで書かれていた。なるほど、まったく手掛かりはなしと

『お前らは、体育祭で恥をかくだろう

体育祭で、恥をかくのは確定してるからそれは、どうでも良いけど。何が目的だろうか。分からない。

「それ、どうしたんですか?」


「下駄箱に入ってたわ。」

……怖いな。てか、なんで鈴華さんは、今言うの?絶対にもっと言うタイミングあっただろ。いや、別に良いけどさ。


「怖いな。大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。」

鈴華さんは、無表情で首を傾げていた。


「マジで、誰なんですかね。手紙。」


「分からないわ。謎よね。とりあえず練習しましょ。それと、手紙は先生には伝えておいたわ。だから、とりあえず雀くん心配は要らないわ。」


「大丈夫ですかね。」


「まあ、言わないよりは、言ったほうがいいと思うわ。」


「まあ、確かに。」

手紙は気になるが、全く分からないのでとりあえず放置が安定だろう。それに、まあ鈴華さんと一緒にいれば問題ないだろう。


「それじゃあ、練習を始めましょう。それで、足を結ぶ紐持ってる?雀くん」


「持ってないですよ。」

二人三脚には、足を結ぶ紐的なものが必要だった。


「持っておきなさいよ。二人三脚用の紐の用意をしときなさいよ。」

鈴華さんは、そう言って、わざとらしく睨みながら笑っていた。


「ええ。取りに戻りますか?」


「そうね。それでどっちの家に取りに戻る?雀くん」

確かに、ここからだと、どっちの家も同じぐらいの距離だ。


「……そもそも家に、ハチマキありますか?」


「知らないわよ。ちょっと聞いてみるわ。」


「僕も…いや、今家に人いない。ああ、大丈夫です。」

家には、誰もいないが、幼馴染の家には多分、真紀がいる。もしかしたら、幼馴染が、いやあの人運動神経良いから二人三脚はしないか。


「ふふ、何一人で喋ってるの?雀君。」

鈴華さんは、ご機嫌に笑っていた。


「大丈夫です。ちょっと、電話してみます。」


「そう、私も電話するわ」


とりあえず電話をして確認することにした。二人とも無駄な動きはしたくないという確固たる意志があった。


「無かったわ。雀くんは?」

無表情で、一定の声のトーンでそう言った。


「僕の家には、人がいないので分からなかったですけど。幼馴染の家にはあるらしいです。運動会とかで使うハチマキが。」


「そう、じゃあ取りに行きましょう。」


「一緒に行くんですか?」

僕一人で取りに行こうと思っていたから、普通に驚いた。

てっきり、本を読んで待っているのかと思っていた。

なんか嬉しかった。いや、嬉しいのは可笑しいのか?


「ええ、運動すると思って本は家にあるわ。ここにいても暇じゃない。それに、気になることがあるわ。」

鈴華さんは、そう言ってノビをしていた。


「そう、じゃあ行きましょうか。鈴華さん」

そう言ってとりあえず右手を出してみた。

なんか良く分からないけど、何となく手を差し出した。


「ええ、そう言えば雀くん。」


「何ですか?」


「今のところ練習してないわ。」


鈴華さんは、そう言って笑っていた。確かに、今のところ、放課後ジャージに着替えて集まっただけだ。新手のジャージ同好会である。


「確かに、まあこの後で、鉢巻きをゲットしたら出来るでしょ。」

鈴華さんの左手を取り、家に向かって歩き出した。

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