遠すぎる文化祭
その前の体育祭
第29話 朝食
「おはよう、母さん。ってもう仕事か。」
いつものように、とりあえず、いる可能性がある母親に朝の挨拶をしながら、リビングまでやって来た。急いで準備をして、公園に行かないとだな。
「おはようございます。雀くん」
リビングに鈴華さんがいて、本を読んでいた。
腕をつねった。痛かった。
「……何で?」
意味が分からなかった。
「私も予定外だわ。雀くん」
鈴華さんは、小さく笑っていた。
「何があったんですか?」
つまり、彼女がここで読書をしているのは、想定外なのか……いや、多分、母さんだな。眠い。
「話すわ。朝、せっかくだから公園じゃなくて家に迎えに行こうと思ったのよ。」
「ええ、なるほど。」
なんかちょっと嬉しかった。なんか付き合うっぽい。でも、時間には早い。ああこれは、この前の僕と同じかな?
「それで、はやく家を出たりしたんですね。」
「そう、迷わないように早く出たのよ。」
「それで早く着いたんですね。」
まあ、実際に迷うことはない。そこまで複雑な場所に家はないのだ。
「そう、それで、外で待ってたのよ。そしたら、」
「ああ、母さんが出て来たの。」
何で母さんは、鈴華さんが宣言したのか?それとも、幼馴染の方から情報が流れたのか?どっちか分からないけど。
「そう。話が早いわね。そして、中で待つように案内されたわ。」
「それで、今ここにいると」
「そう、正解よ。」
なるほど、なんて警戒心がない母親なのだろうか。いや、まあ大丈夫だけど。
パシャ、シャッター音が聞こえた。
鈴華さんが無表情で写真を撮っていた。
「なんで今写真撮ったんですか?」
「なんとなくよ。」
とりあえず、学校に行く準備をしよう。
「……ちょっと、ご飯食べたりするので、待っててくれますか?」
「良いわよ。本を読んでおくわ。」
そう言って、彼女は本を読み始めた。まあ、いつも通りな感じか。そっちのほうが気が楽だ。
とりあえず、先に着替えたり、学校に行く準備を始めた。
しばらくして、ほぼ全ての準備を終えて僕は朝食を食べ始めた。
「それで、なんで今日は、家に直接?ていうか言ったら僕が行きましたよ。」
気になったので尋ねてみた。準備の中で携帯を確認したら、連絡は来てたから、この前のドッキリみたいなことではないだろう。
「それだったら、もっと効率悪いじゃない。」
「効率?」
「ええ、学校からの距離を考えると、雀君の家、公園、私の家。」
「ですね。」
僕の家が一番近くて、その次に公園、そして鈴華さんの家だ。
「君、無駄に歩いてるなって気が付いたのよ。私の優しさだわ。」
まあ、確かに僕は毎朝普通に学校に行くより多く歩いている。ああ、なるほど、僕の歩く距離の話か。確かに、ここで待ち合わせの方が効率が良い。
「……ありがとうございます。」
なんか、ちょっとドヤ顔で、可愛かったから特に何も言わないけど、こう言う優しさは、なんかちょっと良く分からないけど違う気がする。
「話は変わるけど。雀くん。私は一つ反省したのよ」
「反省ですか?」
「告白ってもっとロマンティックにするものなのね」
「まあ、人によるんじゃないんですか?」
ロマンティックな告白とか普通に恥ずかしくて耐えれない。でも、宣言されてたら、もっと気の利いた返答が出来るか……いや、恥ずかしいからやっぱり良いわ。
「私、そのうちやり直しをするわ。」
「……嬉しいですけど、大丈夫ですよ。」
恥ずかしいし。本当に大丈夫だ。
「やるわ、ちょうど、そろそろ文化祭があるからちょうど良いと思わない?」
鈴華さんは、そう言って小さく笑っていた。
「……体育際は?」
文化祭の前に体育祭がある。
「そんな行事知らないわ。」
運動嫌いなんだ。まあ、僕も好きじゃないけど。
「……もうすぐですね。体育祭」
2週間後ぐらいだった気がする。
「そんなことより、早くしてください、彼ぴ君。遅刻は嫌よ。」
露骨にムスッとした顔になっていた。
「ふっ、普通に呼んでください。」
「そうして欲しいなら、早くして」
そう言って笑いながら再び読書を始める彼女に、僕も小さく笑い返して。
僕は、黙って朝食を食べ始めた。朝からびっくりしたよ。
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