第25話 遭遇1

放課後、大体いつも一緒に帰っていた春野さんに、今日は用事があるからと断られた。何か少し悲しかった。それで、友人と一緒に帰っていた。今日は部活がないらしい。こうやって二人きりで友人と帰るのは、中学時代に友人になる前に、幼馴染のことをどう思ってるんだって逆ギレされた時以来である。


「なあ、雀。俺。浮気されてるかも知れない。」


「……それはない」

寝言を言っていた。幼馴染が浮気って、何を言っているのだろうかこのバカップルの片割れ。あり得ないだろ。


「でも、今日俺、一緒に帰ろうって言ったら断れたんだぞ。」

いや、そんなことあるだろ。


「たまたまでしょ。」

めんどくさいバカップルだよ。本当に。


「それでコソコソ何処かに行こうとしてるんだよ。」


「はぁあ。大丈夫だと思いますよ」

なんかサプライズの準備をしようとしてるんじゃないかな?知らんけど。


「それでな、探しに行くぞ」


「僕も?」

何で、そんな面倒な事に付き合わないといけないんだよ。


「当たり前だろ。」


「……怠い、嫌だ、面倒くさい」

今日は、帰って、寝るのだ。そう決めたのだ。だから、そんな面倒ごとは拒否をしたい。


「いや、お前、服装選びと人調べしただろ。」

…そうなんだよな。貸しがあるんだよな。


…もしかしたら、

「……うん、ああ。分かったちょっと待ってくれますか。」


もしかしたら、雀さんと一緒にいるのかも知れない。ふと、そう思って、連絡してみた。

『ねえ、幼馴染と一緒にいますか?』


数秒して返信が返ってきた。

『……良くわかったわね。ストーカー君、間違えた雀君』

思わず、メッセージに小さく笑った。


『いや、今隣で幼馴染の浮気を疑ってるやつがいて』

そう送るとすぐに返信が返ってきた。


『うん、ああ。ただの女子会ですよ。ホラ』

そんなメッセージと無表情の春野さんと笑顔の幼馴染のツーショットの写真が送られてきた。


『了解です』

そう返して

「鈴華さんと一緒にいるって」

そう言いながら送られてきた写真を見せた。


「うん、ああなるほど。じゃあ、俺らは男子会するか。」


「……帰りたい。」

男子会とかやらなくても良い。


「行くぞ。」


「何処に?」


「お前家」

なんで、僕の家に来るんだよ。めんどうくさい。


「……嫌だよ。帰れ」

ちょうど、別れ道だったので、そう言うと


「しょうがないな。また、明日。」

小さく笑いながら友人は帰っていった。


「さようなら。」


そう言って友人と別れて、一人で帰り道を歩き始めた。

一人で帰っていたときは、対して気が付かなかったが、まあまあ寂しいものだ。

人間強度下がったなこれ。


「こんにちわ。天野さん」

しばらく歩いていたら声をかけられた。その声は知っていた。


「ああ……こんにちわ。えっと、家こっちでしたっけ?愛甲さん」

容疑者候補にあがった委員長の愛甲さんだった。僕の家の方向から学校に向かって歩いていた。思わず挙動不審になって警戒してしまった。


「いえ、出かける途中なんですよ。本屋に」

愛甲さんはそう言って小さく笑った。


「ああ、なるほど。」

普通にたまたまか。そう言う事もあるか。


「天野君は、帰宅中ですか?鈴華さんは?」


「えっ、今日は、別々です。」


「まあ、いろいろ大変でしたけど。私は二人を応援してますから。成志君が戻ってきても、何かしてこないように私がちゃんと目を光らせておくからね。」

愛甲さんはそう言って小さく笑っていた。やっぱりいい人なのか。まあ動機ないしな。


「ありがとうございます。では、さようなら」

僕は、丁寧に頭を下げて歩き始めた。


「さよなら、天野君、気をつけてくださいね。」

やっぱり、この人は違うな。帰ろう。

とりあえず、手掛かりがない手紙の犯人は迷宮入りしそうだった。


えっ、待って。何で春野さんは、幼馴染と女子会って最初から言わなかったのだろうか?いや、僕が気にすることではないか。……帰ろう。

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