第21話 最悪3
議論は平行線だった。僕がどんなことを言ってもすべて否定し、都合の良い解釈を言われた。多分、嘘をついているとかではなく、成志さんにとっては事実なのだろう。まあ実際、嘘をついてるの僕だったりするしな。
クラスの空気は異様なものになっていた。
成志さんの異常さに少し引いている人もいた。
まあ、この時間は、朝練で彼の友人も少ないからだろうだけど。
まあともかく、マジで殴り合いになる数秒前だ。
「遅くなったわ。雀くん。連れて来たわよ。」
そんなギリギリで、春野さんが戻ってきた。
待っていたので一文字目を言い切るより前に、分かった。
まあ、僕が物理的な反撃に出なかった事で、これで僕が一方的に暴力を受けたという事実が残る。
「ありがとう。危なかったよ。後は、任せた。」
とりあえず、僕が何を言っても無駄なのは間違えなかった。とりあえず撤退だ。
僕が、春野さんの方向に歩き出すと、成志さんが、なんかめちゃくちゃ言ってきたが無視無視。
春野さんは、少し下を見ている逆恨みさんを無表情で見て
「後は、任せましたよ。ややこしくなった責任を取って下さい。風花さん」
そう言って背中を押していた。名前覚えたんだ。
「……本当に言ってますか?」
不安そうな表情だった。
「「うん」」
頑張って成志さんをどうにかして欲しい。
逆恨みさんは、深呼吸をしていた。
入れ替わるように、逆恨みさんは成志さんの前に立つと深呼吸をしてから
「その、私が、二股されてた人ってなってますけど。えっと、全部勘違いです…。勘違いしてます。」
「君が二股を掛けられてたのか?何か弱みを握られてるのか?」
「いや、本当に違いまして、むしろ私が加害者というか。今、その罰を受けているというか。」
逆恨みさんは、困っていた。
「何を言っている。大丈夫だ、正直に言えば、俺が」
春野さんが何言ってるんだこの人って目をしていた。
「本当に勘違いなんですよ。私が、都合よく思い込んで八つ当たりをしてしまっただけなので……こんなんだからダメなんですね。」
逆恨みさんは、そう言っていたが成志さんとの会話が不可能だった。
「勘違いな訳がない。アイツが二股をしていて、それで、君らが被害者で俺が助けて」
どうやら成志さんの中でのストーリーは決まったらしい。
「違うんです。本当に。私が全部勘違いしてただけなんですよ。だから、本当に、二人に関わるのはやめて頂きたいです。」
「大丈夫だ。そう言えって天野に脅されてるんだよな。」
ああ……無理だよな。何だよこの化け物。
クラスメイトも完全にドン引きしてるぞ。
明るいクラスの中心だったやつの中身がこれだったんだもんな。……怖いな。
逆恨みさんは、固まっていた。
その様子を見て春野さんは、無表情でこっちを見た。それから、
「もう、大丈夫です。風花さん。それと、この前は金輪際って言いましたけど、償いの為の行動なら歓迎ですよ。具体的には手紙の差出人を特定してくるとかですね。」
そう言うと成志さんの方向に向かって歩き始めた。
「……鈴華さん。」
気がつけば反射で止めていた。何か彼女を危険地帯に送る気になれなかったのだ。
「私が話すわ。簡単よ。君と私の愛を証明すれば良いのでしょ」
彼女はそう言って僕の顔を見て笑った。死ぬほど可愛かった。それにしても、何をする気なのだろうか?
「……えっと」
「任せてよ。雀くん」
彼女はそう言うと成志さんの方向に向かって進んだ。
「春野を助ける為に」
そう言う成志さんに対して
春野さんは無言で歩いて正面に立つと指で成志さんを指して
「私は、貴方の事が嫌いです。仮に雀くんと付き合ってなくても、貴方の告白は断ってますから。貴方に可能はゼロです。現実見てください。」
そう宣言をした。
いやだったら、あの時もっと冷たくそう言えば、まあでもそれだったら、彼女と喋る事が無かったから、これは無しだな。
「……」
「まあ、私が現実を教えてあげますよ。」
春野さんは、無表情でそう宣言した。
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