第17話 カオス2
「美味しかったわね。ラーメン」
気がつけばラーメンを食べ終えていた。
それで何となくいつもの公園に向かっていた。
「……なんか時間飛んで無い?」
そんな気がした。
「気のせいよ。ラーメン食べたでしょ。私がプレゼントした本も持ってるでしょ。」
春野さんは無表情でクビを傾げていた。
「食べたけど、持ってるけど。」
ラーメンは食べたお腹はいっぱいだったし、彼女からのプレゼントの本も持っていた。気のせいか。
「そう言えば、私の中学の同級生を追い返した件だけど」
彼女はそう言って話題を変えた。
「ガチ逆恨みさんの事ですね。名前って何て言うんですか?」
名前があった方が呼びやすいし、名前が分かればバカップルのどちらかに聞けばどんな人か分かるだろう。
「知りませんよ。告白して来た彼氏の方も逆恨みして来た彼女も違うクラスだった。中学時代。接点が無かったのよ」
うん?シンプルに怖かった。
「えっ?怖い話してますか?」
本当にあった怖い話である。恐怖だ。
「してないわよ。」
彼女は小さく笑ったんだ
春野さんって何かモテるな。まあもちろん顔は整ってるし、性格は、まあ人によってはマイナスかもだけど。でもここまでモテるのか?変な人が集まるぐらいに。
「……それにしてもロリコンってたくさんいるんですね。」
世の中のロリコン人口は多いらしい。
「そうね。ロリコン君」
彼女は小さく笑った。
「僕は違いますよ。」
「世間から見たらそうよ。」
「まあ、確かに。」
「話を戻しましょう。不思議なのよね。」
春野さんは、そう言いながらビシッと僕を指を差した。謎の動きだった。
「何がですか?」
「思い出したのだけど。一度謝罪されたのよ。だから終わったものかと思ってたの。」
「あの人に?」
つまり、終わったと思ったら終わって無かったと。意味が分からない。何で謝罪したのに、また絡んで来たんだ?
「ええ、『私の逆恨みだった』って言ってたわ」
「じゃあ、何で?」
「だから、不思議なのよ。」
彼女は他人事のように笑っていた。
「まあ、可能性は二つありますかね。1つは、誰かに誘導されたか。もう一つは、君が付き合ったって事で怒りが再燃したか。」
「まあ、本人に聞くわ」
「何が?」
「後ろにいるわよ。」
彼女はそう言って立ち止まると後ろを振り返った。それにつられて後ろを見ると、逆恨みさんがいた。
「……聞きますか。」
言いたい事があるから来てるのだろう。
「「何の用事ですか?」」
僕と春野さんの声が重なった。
「そうよ。逆恨みよ。はぁ。私も馬鹿よね。結局許して、また捨てられて……」
「「自分語りとか大丈夫なので」」
僕と春野さんの声が重なった。長い話を聞く気は無かった。
「……そうね。分かってるのよ。でも春野さんからの手紙を貰って。」
手紙?
春野さんを見ると
「私、手紙なんて書いてないわよ。」
そう言ってクビを傾げていた。
「……知ってたの、本当は…」
逆恨みさんは下を向いていた。まあ感情って言うのは複雑なのだろう。だからってこっちが迷惑を受けるのはごめんだが。それに、まあ相手をする必要もない。
「その質問良いですか?」
聞きたい事があった。
「何ですか?」
「何で僕は巻き込まれたんですか?」
これは重要である。目的が彼女で無い可能性も上がって来た。
「手紙を読めば分かりますよ。これは……差し上げます。」
僕の問いに逆恨みさんは一枚の手紙を出して渡して来た。
そこには彼女の恐らく名前の「風花 萌」と「春野 鈴華」と書かれていた。
名前覚えた無いならやはり偽物だろうな。
ああ、何でこんなややこしい事になってるんだよ。まあ、とりあえず一旦、何処かに行ってから中身を確認しよう。
「どうもありがとうございます。では、さようなら。」
そう言って僕は、公園に向かって歩き始めた。
「えっ、その。」
なんか、逆恨みさんが驚いていた。何か言いたげだが、自分語りとか言い訳とか謝罪とか要らないし、もう面倒だから関わらないで欲しい。
「一つ君にアドバイスをあげるわ。人を見る目を養う事ね。あと金輪際関わらないでちょうだい」
その後に春野さんが無表情でそう言い残して、僕の隣まで小走りでやって来た。
とりあえず、公園に向かおう。話はそれからだ。
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