第18話 手紙

「雀くん、手紙を読みましょう。」

そんな風に公園で春野さんに言われたので読む事にした。


『風花 萌様へ

 お久しぶりです。以前はいろいろお世話になりました。君の彼氏、いや元彼氏?結局ヨリを戻して別れたから何て言うべきか分からないですね。とりあえずお久しぶりです。


まず、以前に謝罪した件ですが謝罪は必要ではありませんでした。

私が』


思わず握り潰してしまった。何でだ?身体が勝手に動いていた。

「雀くん、まだ途中よ。」

春野さんは無表情でこっちを見た。


「ごめんなさい」


「良いわよ。私が読むから渡しなさい。」

手紙は彼女の手に渡った。


『まず、以前に謝罪した件ですが謝罪は必要ではありませんでした。

私が君の彼氏を誘惑しました。理由は特にありません。アホそうな奴がいて、暇つぶしです。君の彼氏はチョロかったです。もしかしたら、君に魅力が無かっただけかも知れないですけどね笑笑。フッたときの表情とか最高でした。


まあこれはどうでも良いんですよ。

最近私彼氏が出来たんですよ。

でも、他の人から告白されたから』


春野さんは、手紙を握り潰した。

「…途中ですよ。」


「少し握力の加減をミスったわ。それにフライングだったわ。」


「では、次は僕が読みますよ。」

僕は彼女から手紙を取った。


『まあこれはどうでも良いんですよ。

最近私彼氏が出来たんですよ。

でも、他の人から告白されたから乗り換えるのもありかなって思ってるの。今の彼氏は、あっちが必死に告白して来て泣きついて来たから。でも、なんかパッとしないのよね。それでさ、聞きたいんだけど。捨てられるってどんな気分なの?笑笑。


冗談です。今の彼氏は気にいってるのよ。だからまた勘違い男をフったの。それでさ、勘違い男好きな君に紹介してあげようかなって、私幸せだからさ、その幸せを分けたいなって。笑笑。

春野 鈴華より』



「悪女っていうかヤバい奴ですね。鈴華さん」

手紙の内容の人物がいたら、かなりヤバい人だ。それに流石に違うでしょ。いや、まあこれを読んだから逆恨みちゃんが妨害して来るのは分かる。けど流石に可笑しいなって思いそうだけどな。


「そうね。でも私の性格の悪さはこう言うタイプでは無いわ。」

確かに、春野さんの性格の悪さは、何と言うか。


「まあ、鈴華さんはストレートな性格の悪さですもんね。」

真っ直ぐ、直球の辛辣さと無関心な気がする。


「ひどいわ、傷ついた、責任取りなさい」

春野さんは無表情で笑っていた。


「棒読み」

なんか楽しかった。


「うわー、悲しいわ。」

彼女の感情はどこかに行ってしまったらしい。

彼女は無表情で笑っていた。


「はあ、ごめんなさい。」


「ふふふ、冗談よ。とりあえず、この差出人を探しましょう。」

彼女はそう言うと何かいろいろあってぐしゃぐしゃになった手紙を丁寧に伸ばした。それから、片手を挙げて『エイエイオー』のポーズを決めていた。謎の動きだった。


「心あたりは?鈴華さん」


「無いわ。君は?雀くん」

彼女は無表情でクビを傾げていた。


「無いです。でも犯人は絞れますよ。」

僕をここまでして貶めたい人には心当たりがない。でも怪しいの人は分かってる。


「それは、何?名探偵 雀くんなの?」


「いや、別にそこまでじゃないけど。君の中学の同級生かつ、成志さんの知り合いかつ、中学時代の君の出来事を知っている人を探せば良いんでしょ。」


「迷探偵ね。雀くん。たくさんいるわ。そんな人」

彼女はそう言って笑っていた。


「マジで」


「はい。とりあえず、今日は帰ります。送ってくれますか?」

彼女は右手を差し出したので、僕は、


「はい」

そう言いながら無意識に左手を差し出した。


「本当に緊張してるのね。雀くん」

彼女は僕の左手を取りそう笑った。最悪だよ。本当に最悪だ。左手を出してしまったよ。手汗が、緊張がバレる。


「私の勝ちね」

ご機嫌に春野さんは笑っていた。

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