第14話 何の為に見に来たのか?
コンビニで冷たい飲み物を買い、それから学校に行くとグランドでは試合が始まっていた。しばらく、試合を見ていたが、問題があった。
「ねえ、サッカーってよく分からないわ。分かる?雀くん」
彼女は、片手で日傘を持ちながら、こっちを見上げた。
「分からないです。細かいルールとか。だから、今調べてます。」
サッカーのルールは雰囲気しっていた。でも、あくまで雰囲気だ。細かいルールなど知らない。
「ふっ、そうよね。一つ言っても良いかしら。」
彼女は、安心したのか小さく笑った。
「流石に読書はまずいかもですよ。」
暇だから読書したいとかだろう?
「流石に読書はしないわ。日傘を持っているのよ」
「ああ、なるほど。」
片手で持てても、ページはめくれないのか。
「言いたいことわ。暇ね、つまらないわ」
彼女は、小さく欠伸をしながらそう言っていた。眠そう。
「……流石に言ったらまずいのでは」
言ってはいけないのだ。思っているにとどめる必要がある。
「正直者なのよ。」
「物は言いようですね。そもそも、どっちが、どっちのチームか分かってないですもんね。」
問題はルールが分からない他に、どっちがどっちのチームか分からないのだ。ユニフォームなど知らないし。それに、普通に顔を知らないのだ。
「可笑しいわね。何でどっちもあの人の顔をちゃんと覚えてないのかしら。」
顔を覚えているはずの成志さんの顔も分からなかった。
「いやだって。それっぽい人が何人かいるから分からないですよね。他に分かる知り合いがいれば。」
そう僕が言うと、彼女は無表情でグランドを見た。
似てる顔の人が両方のチームに数人づついるのだ。それだけで、余裕で分からない。
「他に知り合いがいればね……居たわ。」
しばらくグランドを観察していた彼女がそう、今日一番の大きな声を出した。
「……誰ですか?」
気になるのは、まあ仕方ないでしょ。
「私の中学校の同級生よ。マネージャしてるっぽいわ。」
「へぇ。じゃあ、チーム分かりますね。」
やっと、チームが分かった。
「まあ、だからなんだって感じね。やっぱりルールがよく分からないわ」
チームが分かり、しばらく試合を見ていた彼女が、こっちを見て小さく笑った。
「いや、手を使ったらダメとかは分かりますよね。それに本で、ルールを読んだりしたことないんですね。以外。」
「私、読書でもスポーツとは関わらないようにしているのよ」
彼女は、小さく笑っていた。
ああ、なるほど。
「運動神経悪いんですね。」
彼女は、ジッとこっちをしばらく見て、僕の左足を踏みつけて、その後で、小さく笑い。
「……うるさい。なんか面白い話しろ。」
そんな無茶ぶりをしてきた。
面白い話?
「でも、サッカーって凄い傲慢だと思うんですよ。だって蹴球ですよ。」
「……ああ、なるほど、他に球技で蹴るものがあるのにって事ね。」
相変わらずの察しの良さだった。春野さんの理解力の高さには感心した。
「ええ、ボールを蹴る競技を集めて協議が必要だと思うんですよ。」
「では、協議しましょう。それで、他にボールを蹴る競技って何がありますか?」
あっ……知らない。スポーツをそもそも全然知らない。
「えっ?セパタクロー……」
「……私も知らないわ。私たちには無理難題ね。」
彼女は小首を傾げて小さく笑っていた。
「…まあもう、面白い話思いつかないので、本でも読んでて下さい。日傘は僕が持ちますよ。」
無理だ。面白い話とか。彼女の日傘を持ちながら片手で携帯でもして時間を潰そう。
「流石に、いや……読書している状態、今も対して変わらないわね。どうせ、試合見てませんね。」
「僕もそう思います。」
僕は彼女から日傘を受け取った。まあ、試合が終わるまでだ。
「ありがとう。感謝してあげるわ」
彼女は、こっちを見上げてニッコリ笑っていた。まあ、傘ぐらい3時間持ってやろう。
「何で偉そうなんですか?」
「冗談よ。ありがとう。味玉あげるわ」
そう言って彼女は本を読み始めた。ラーメンに味玉が入ってなかったら、チャーシューでもくれるのだろうか?
まあ、結局普段の休み時間のようなスタイルに落ち着いた。
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