第12話 訪問1

休みの日に、5時に目が覚めたのは久しぶりだった。

「……これ、無意識で緊張してるし、ワクワクしてるじゃん。うわぁ。ダサいな」

そんな風な独り言を言いながら出かける準備をした。

集合時間は、朝、10時で、いろいろ言われたので僕が彼女の家に迎えに行くことにしていた。彼女の家は昨日、教えて貰ったのだが、まあ、迷うかもしれないので、8時30分に家を出た。


8時45分に着いた。

「……」

1回帰ろうかな?


そう思い、家に一度帰ろうと歩き始めようとしたときに、小学校低学年に見える少女と目があった。見た目が、春野さんと似ていた。

「……」


「なるほど、」

その人物は僕をマジマジと見てそう小さく呟いた。


「……」


「初めまして、春野 風香です。妹です。」


「初めまして」

丁寧に頭を下げるその人物に僕は、頭を下げ返した。


「呼んできます。」

やはり、妹らしい。というかどうして分かるのだろうか?妹は、僕の顔なんて知らないだろう。



……気まずいな。

しばらくすると、彼女の家から人が出て来た。

「早かったね。雀君。」

そう、降りてきた人物は、笑顔で僕に話しかけてきた。


……背は、春野さんと同じぐらいだし、顔も一緒だし、見た目も声も一緒に見えるが、なんか、雰囲気が違うのだ。いや、服装も、何というか、彼女の好きそうな落ち着いたカッコイイ系の服装だが。なんか違う気がする。


「誰ですか?」

気が付けば、そう言っていた。


「……つまらないな。初めまして、姉です。」

退屈そうな表情にその人はなっていた。


「……初めまして」

うわぁあ、似てるな。


「妹は、もうすぐしたら来るよ。それにしても、随分早く着いたじゃないか。」

春野姉は、ニヤニヤしながら、そう言った。ああ、いや、似てないわ。


「そうですか。」


「つまらないな。君。あの子の彼氏とか聞いてたから、心配してたけど。うん、なるほど。それで、妹の鈴華の何処が好きなんだい?」

ニヤニヤしながら、そう尋ねて来た。

全然似てないわ。性格が全然似てない。本当に姉妹かよ。

答えないとめんどそうだし。

適当に答えても、バレたらあれだし。

彼女の良いところを言えばいいでしょ。


「……性格。」


「ええ、どういうセンスしてるの?あの子性格悪いよ。」

酷い姉だな。


「いや、えっ?話してて面白いですけど。」


「……変わってるわね。君。まあ、うん人それぞれよね。じゃあ、妹呼んでくるから。」

なんか、急に態度が変わった。ドン引きされたのか?なんか、変なこと言ったか?

まあ、春野さんと話すのは楽しい。話すのが楽しくなければ、もっと雑に手っ取り早く無理やり終わらせている。適当に教室で、成志さんに、『お前と付き合うのが嫌で、嘘を付いているんだよ』的なことを言っていると思う。



それから、しばらくすると春野さんが2階から降りてきた。

春野さんは、彼女が好きそうな落ち着いた。カッコいい服装に身を包んでいた。凄い似合っていた。可愛いしかっこよかった。


「遅くなって悪かったわ」

彼女は無表情でそう言った。


「いや、僕が早く着すぎたせいなので」


「それはそうですけど。でも、準備は出来ていたのよ。私、君が来てから着替えなおしたのよ。」


「ええ、嫌がらせですか?」

いや、早く来すぎた僕がなんか言える事では無いけど。


「違うわ。アホな姉と妹が選んだ服が、嫌だったから、変えたのよ。あの2人に絡まれた君には申し訳ない事をしたわ。」


「……」

姉妹、仲が良いのかな?


「では、行きましょうか。雀くん」

彼女の荷物が少なかった。というか


「荷物少ないですね。本は?」

彼女が本を持っていなかった。


「没収されたわ。」


「……別に持ってきても良いと思うけど」


「…神様なの。」

いや、ええ。そこまで言う?


「人類です」


「取りに行ってくるわ。」

彼女は、上機嫌に笑顔であった。


「では、もう少し待ってます。」

彼女は、二階に上がるために動き始めたが、急に止まり振り返った。


「……ああ、そうだ。雀くん」


「はい?」


彼女は、優しい笑みを浮かべた。

「今日の服装、なかなか似合っててカッコイイわ。」


えっ?うん?えっ

「……ふぇ」

変な声がでしまった。ハズい。顔が熱くなってきた。待って、……


「ふっ、顔が赤いわよ。勝ったわ」

春野さんが勝ち誇った笑顔を浮かべていた。謎の不意打ちを食らった。

何が目的だよ。これは、言い返す必要が


「……鈴華さんも……」

ああ、無理無理、恥ずかしいから言えないし。無理無理。


「ふっ、完全勝利ね。君の弱点は、情報提供者、SとYから聞いているのよ。」


「……あいつら」

あいつらは、敵だったか?いつ?ああ、あの説得しに行ったときか?


「じゃあ、少し待ってください、雀くん」

勝ち誇ったような春野さんは上機嫌に本を取りに行った。



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