第7話 休み時間1

僕の二股疑惑は、とりあえず無視することにして、いつも通り、正確に言えば、昨日と同じように過ごすことにした。だから、休み時間は、春野さんの近くで読書をしていた。

「読書中すいません。雀くん」

休み時間、急に話しかけられた。


「どうかしましたか?本は読まなくて良いんですか?」


「私もずっと本を読んでいるわけじゃないのよ。」

彼女は、小さく笑っていた。


「でも、僕のイメージでは、本を読んでいるか。勉強しているかですよ。」


「まあ、そうよ。でも、それだけじゃないのよ。私も気になることがある時は読書をやめるわ。」

気になること?そう思って教室の周りをきょろきょろしたら、教室の外に見知った顔が二つあった。


「はぁあ?教室の外からこっちを見ているバカップルですか?」


「そう。ああ、なるほど、あれが噂の友人ね。美男美女じゃない。」

僕の友人二人は、美男美女だった。ただ、まあバカップルだった。


「まあ、見た目はそうですよね。」


春野さんは、教室の外にいる二人と僕を数度見て、それから

「……雀くんは、幼馴染初恋失恋してないの?」

そう小さく笑った。


「いやしてないですよ。幼馴染だから初恋になるとは限らないですよ。」

僕の幼馴染は見た目だけだった。性格はまあ、無理だ。全くあの自由奔放行動力ありすぎ人間を好きになるあいつの気持ちは僕には分からない。


春野さんは、ジッとこっちを見て

「なるほど、雀くんは、今。全日本幼馴染いない協会の人に命を狙われることになったわ」


そう、謎の宣告をした。

「何その過激派集団」


「幼馴染に憧れを持っている幼馴染がいない人が、幼馴染いるのにラブコメ展開にならない人を裁く組織よ。」


思想が強い団体だった。

「怖」


「ちなみに私は会長よ。結成時期はそうね、10秒前ぐらいよ。」

春野さんは、笑った。なんかご機嫌だった。

10秒前に変な団体創設しないでほしい。


「ふっ、まあ。一回そんな冗談は終わりにして、話を戻しましょう。」


「そうね。それで、何をしてるの?あの二人は。」


「多分、僕らの様子を確認してるんですよ。」


「過保護なのね。君の友人」


「多分、違いますよ。僕のことを心配しているんじゃなくて、君のことを心配しているだと思いますよ。」

あの二人は、友人だ。でも、僕を心配しているのでは、絶対にない。


「何で?私知らないわよ、あの二人。」


「あの二人は、僕の性格で人と付き合えるって思ってないんですよ。」


「確かに、でも正直鬱陶しいわね。」


「良く、僕の前で言えますね。まあ鬱陶しいですけど。」

一つの発言で僕に対して春野さんは、毒を吐いた。いや、まあどっちも事実だから、毒ではないか。


「人と付き合えないタイプの性格なのは、認めるのね。そうね、仕方ないわ。少し行ってくるわ。」

彼女は、そう言うと席を立った。どうやら、二人の所にいくらしい。


「いや、鬱陶しいなら、僕が行って来ますよ。」

でも、彼女が行く必要はない。彼女の読書の時間を奪う必要はない。僕が行けば良い。


「無理よ。それだと、疑いは晴れないわ。任せて。」

確かに、まあ僕が何を言っても、あの二人は、僕の性格を信用していない二人は、絶対に春野さんを心配し続けるだろう。


「……すいません。お願いします。」


「謝らなくていいわ。私の方が迷惑をかけてるのだから。君は、ここで本でも読んでおきなさい。」

そう行って春野さんは、二人の元に向かって言った。


休み時間が終わりそうになったので、自分の席に戻ろうとした時に、春野さんは自分の席に戻ってきた。


戻ってきた春野さんは、

「バカップルはしんどいわ。」

そう言って小さく笑った。


その後、クラスの外から観察する友人二人がいなくなったから上手く説得できたらしい。少し何を言われたのか気になって友人二人に聞いたが『春野さんを不幸にしたら、許さない』しか答えてくれなかった。マジで、春野さんは何を言ったんだよ。まあ、鬱陶しい二人がいなくなったのでとりあえず良しとしよう。



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