第5話 探偵?1
「天野くん、図書室で探偵をしましょう。」
放課後、そう言う春野さんに連れられて図書室にやって来た。
彼女は、図書室に入ると、流れるように、利用時間外の小さな看板を持ってきて図書室の前に出した。
「図書室って勝手に閉めて良いんですか?」
「良くないわよ。でも、私図書委員なので、それに、どうせ対して人は来ないわ。」
「職権乱用ですね。」
「権力は乱用するためにあるのよ。」
彼女は小さく笑っていた。
「絶対に政治家だけにはならないでください。」
「ならないわよ。私がなるのは王様よ。」
「もっと上狙うのやめてください。」
「まあ、冗談はおいておいて私は、考えたのよ。」
「ああ、成志さんとの接点ですか?」
「いえ、どうやったら王様になれるか。」
彼女は小さく笑っていた。以外にも春野さんは、冗談が多い。
「……話進みませんよ。」
「そうね、天野くんのせいで話が進まないわ。」
「僕のせいですか?」
酷い濡れ衣を見た。
「ふふ、まあ、考えたのよ、接点を。無いのよ。急に喋りかけられるようになった。」
「読書中にですか?」
「そうなの。あの人は読書が暇だからしていると思っているのかしら。暇でしょとか言うのよ。許せないわ。」
読書ガチ勢には許せないのだろう。まだ、話しかけられるのは良いが、恐らく、読書が暇つぶしカウントになっているのが許せないのだろう。分からないけど。
「本当に何も無いんですか?最近、なんかありませんでしたか?」
「無い……いや、私には何も無いわ」
「私には?」
ひっかった。
「ええ、いや、姉と妹は、トラブルに巻き込まれたって言ってたわ。」
姉と妹?うん?えっ姉妹いるの?えっ?絶対に一人っ子ってタイプでしょ。
「一人っ子じゃないんですか?」
だって、この少し自分の世界が強い感じ100%一人っ子でしょ。嘘だろ。
「違うわよ。3姉妹の真ん中よ。それと今、君は、全一人っ子を敵に回したわ。」
「……脱線しましたね。」
話を急いで戻そう。
「ええ。妹が遭遇したのは?迷子だと思われて男の人に交番に連れて行かれたらしいいの。なんかその人が話を聞かない人だったらしいの。大丈夫って言ったらしいのに。」
「妹さん、何歳ですか?」
「中3よ。背は私より低いわ。まあ、これは、良くあることなのよ。」
良くあることなのかよ。
「良くあるんですね。」
「まあ、姉の方も、私と同じぐらいの背なの。それで、20歳なのだけど。大学の先輩と夜歩いていて、少し姉が離れていて、戻ってきたら。なんか、口論になってて、大学の先輩が全く知らない男の人に殴られたらしいの。」
多分、その男の人は、いろいろ勘違いしたのだろう。いや、まあ絵ずらはアウトな気もするしな。でも、それを差し引いてもシンプルに暴力はやばいでしょ。
待って、時系列は分からないけどさ。もし、その助けた人が…良いことをしたって思ってたら。
「……なるほど。いや、まさかな。」
「何か分かりましたか?ホームズ君」
唐突に春野さんは探偵感を出してきた。
「……その出て来た男の人は、成志さんなんじゃないですか?」
「いや、だったら意味分からないわ。天野君。」
「多分、ですよ。多分、春野さん的には、姉妹の話だし、それに別に困っていたわけでもないし、むしろ迷惑な行為だからって思ってるかも知れないですけど。でも、相手がどう考えてるかは分からないじゃないですか。」
シンプルに出来事をどう捉えるかは人によるだろう。
「ああ、あの人は良いことをしたって思ってるんですか?」
「まあ、可能性ですよ。それで君が感謝してると思ったから、めっちゃ馴れ馴れしく来てるんじゃない?」
「ああ、なるほど、それで、とりあえず可愛い彼女が欲しいから告白してきたってあたりの可能性ですね。」
春野さんは理解力が高かった。
「まあ、そういう可能性ありそうじゃないですか?」
「あるかも知れないわ。」
「それと、自分で可愛いって言うんですね。」
彼女が流れるように自画自賛するのを聞き逃していなかった。
僕の言葉を聞くと彼女は、無表情でこちらを見ながら
「でも、可愛いでしょ。」
そんな風に圧をかけてきた。
「……うん、まあ」
「ロリコン」
彼女は、笑いながらそう言っていた。罠だったらしい。
「何このトラップ。」
「ロリコントラップ。さて、どうしましょうか。」
「とりあえず、本でも読めば良いんじゃないですか?」
まあ、なんかいろいろ考えるの面倒になった。
「そうね。そうするわ。君はどうするの?」
「僕も本を読みますよ。」
「そう。」
彼女は、小さく笑うと本を出して無言で読み始めた。
僕も、その少し近くで、読書を始めた。
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