第9話 汚染(1)
ここ最近、謎のウイルスが流行している。
仲間が帰還してから約二ヶ月たった。あんな楽しそうにしていたパーティーの雰囲気とは一点変わって皆、険しい顔をしていた。
何故なら動きたくても下手に動けば自分達がかかってしまうからだ。
私等がかかってしまえば政府は自衛隊又は警察に頼ることになるが、今まで担当してこなかったこともあり悪化してしまう可能性がある。
色んな医療関係者が動いているが、まだ判明していない。
症状としては、腹痛、吐き気、目眩など一見普通の病気に見えるが今までは無かったものとして見られているのは、体温が下がる症状が発見されたからだ。
こんなのが学校で流行れば対処が難しくなることから学校は休みになった。
そのため、私は本部で仕事をしていた。
「はあー書類の山が減らないよー」
私は机に引っ付きながら言う。何時になったら書類地獄から開放されるんだ。
『これも間違ってる…』
「えー」
シャーロットの言葉に絶望を感じながら書類に判子を押したり文字を修正する。この書類達は政府の人達に送るものらしく内容はこのウイルスの危険性や症状などを事細かに書いてある。
私や詩音さん、小明などで書類を確認して判子を押し次に兄の功次や葵さん、金子さん等に通してその後、ルチナさんやノイさん、海さん達に届け最終的に桜瀬さんや楓さん、紅知さんが確認をして政府に渡す。こんなに段階を踏まなければならないとなると相当大事な書類だ。破ることの無いよう丁寧に扱わなければ…
『少し休んだら?』
「ううむ、でも私が終わらないと皆を待たせることになるし」
『疲れた状態でやっても失敗する可能性が高くなるから休もうよ』
シャーロットに後押しされ私は紅茶を飲む。
花瀬ちゃんが皆にクッキーを焼いてくれた為おつまみとしてクッキーを頬張る。焼き加減が丁度いいな…
『花瀬にしては上出来』
「何それ」
未だに花瀬ちゃんとシャーロットは仲が悪い、いやもう仲が良いと言ってもいいような気がする。
休憩を終わらせるとまたコツコツやり始め遂に終わった。地獄の作業だった。
「書類をお兄ちゃんに渡してくるね」
『行ってらっしゃい』
扉を閉め書類を兄の部屋へと待っていく。
「お兄ちゃん、書類終わったよ」
「そこに置いといて」
「分かった…て、何やってるの?」
「ゲーム」
「仕事しろ」
兄の能天気さに呆れる。何がゲームよ、まあこれから書類地獄が待っているからな…おっと、悪い顔をしている気がするな。
私は部屋を出て少し気分転換をしたくなった。
そのため、私はある場所に歩く。
「楓さん、外出の許可を頂けませんか?」
私が向かったのは楓さんの居る執務室だ。
主に報告をする場所で、楓さんや桜瀬さんが居るためCTB組織内で最も重要な場所だ。
何かの許可をもらうには楓さんの了承がいる。
「ふふっ、良いわよ。ただし息をするときは気を付けてね…そうだ!この装置を持っていって」
楓さんは私の手にスマホのような装置を置く。何だこれは。何かを感知する装置っぽいが。
「これは紅知ちゃんが作ってくれたウイルス感知の装置よ」
「ずっと研究室に籠もってたので何かと思えばこれを作ってたんですね」
紅知さんとノイさん、ルチナさんが研究室に籠もりこれを作っていたと思うと研究熱心な人達だ。
許可も貰ったし、外出するか。
私は自室に戻り着替えて感染しないように肌は出ない物を着る。
マスクは…付けたほうが良いよな?黒いマスクを持って私は外に出ようとする。
シャーロットが部屋に居なかったから、何も言ってないけど…大丈夫だろ。
ずっと部屋の中に居ると外が恋しくなるな。ただ、ウイルスによるものなのか息がしづらいな。
このウイルスが安定したら、学校も始まるんだろうか。きっと教師たちは私がCTB組織の人だと分かっているはずだ…そしたら、どうなるんだろう。
ちょっとずつ、クラスの皆と慣れてきたはずなのにもし退学にでもなれば。独りぼっちになるのだろうか。
「気分転換に来たのに憂鬱になってどうするんだ」
でも、退学にならなければ銃も持っていきやすくなるしクラスメイトを守りやすくもなる…国民を守りやすく。願っておこう、退学にならないようにと。
ウイルスさえ分かればワクチンも出来るはずだ。そしてこのウイルスをばら撒いた敵も、見つかるはずだ。
「…折角だから菓子折りでも買っておくか」
私は近くの有名店へと行く。確かここのお菓子は高いから買ったことは無かったはずだ。お金はあるけど節約したい派の人達の集まりだからな。
お菓子好きなのは私含め六人、一人は煎餅専門だが。
「これを2個、後はこれと、これを一個ずつお願いします」
「分かりました!少々お待ち下さい」
受付の人がそう言い準備をしに行く。人気店な為か混んでいるな…ウイルスが広まっているとは言えどそこまで気にしていない人が多いのだろう。
「おまたせしました!お会計三万四千円です!」
高くね?仕方ないか、差し入れだしな。
お金を出し菓子を受け取って帰宅する。
「戻りました」
「お!お帰りっておやおや?それは、高級店のお菓子じゃないカイ?」
帰ってきたら早速、ノイさんに目をつけられる。
一番のお菓子好きはノイさんだからな。
「お菓子って本当なのか!」
ルチナさんがノイさんの言葉に反応しこちらに来る。私は机の上にお菓子を置き、椅子に座る。
「好きに食べてください。私はいいので」
「太っ腹アルね。絶対高いアル」
「あそこのお菓子はとても美味しいですわよ!」
「金子の金持ち自慢はどうでもいいですわ」
金子さんの台詞に葵さんは塩対応で返し菓子を食う。
皆が喜んでくれたのなら買ってきたかいがあった。
皆で菓子を食べ休憩を取っていたら楓さんも来て、私が払ったお金を楓さんが全額渡してきた。
楓さん曰く、『皆で食べるのだから経費よ』と言っていた。
その後皆が集まりお菓子を食い仕事効率が上がった。お菓子を好まない者は残念ながら死にそうな顔で書類を見ていた。
自室に戻ると、シャーロットがむすっとした顔をしながら座っていた。
これは、怒っているなあ。
『置いていった』
「すみません」
許しを経て後日お菓子を奢ることになった。
一日で財布が軽くなったり重くなったりで少し不思議な日にもなったきがする。
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