第8話 騒がしい仲間

 「新しい部隊…ですか?」

「いや、海外に行っていた奴等が帰還するんだ」

「てことはルチナちゃんが帰って来るんダネ」

目をキラキラさせながら桜瀬さんを見るノイさんはウキウキしていた。

 ルチナさん…あっ!あの不老不死の人か。あの人もノイさんと同類だからな、運命感じてるのかな。

「ルチナさんが帰って来るって事は西園寺も…」

 葵さんが嫌がる人はただ一人。西園寺金子さいおんじかなこさんだけだ。金子さんは西園寺グループのお嬢様だ。

葵さんも社長令嬢な為か金子さんは葵さんにグイグイ行くため面倒臭い人として認識されている。大手な為か無理に否定すれば何があるか分からないが金子さんは悪いお嬢様では無く常識のあるきちんとしたお嬢様だ…葵さんに対してはノーカウントだが。

 「小明シャオメイも来るからな戦力は一気に回復するぞ」

小明は中国の人で戦闘狂だ。彼女の持ち武器はアサルトライフルだが、他の武器を持たせても手馴れているように扱う。話しやすいから帰ってきてくれるのは嬉しいな。

詩音しおんさん…も帰って来るって事、ですか…?」

花瀬ちゃんが嫌そうな顔で言う。まあ気持ちは分からんでも無いがそんな顔しなくても…

『そんなに嫌なの?』

「えーっとね、詩音さんって言う人は少し…いや結構な幼女趣味ロリコンと言うか学生が好きな女性でね」

私はシャーロットの疑問に答えると少し背中がゾワッとした。苦手と言うほどではないんだが、あの人の学生好きが高校生である私も入っているのが困るんだよな。学生なのは認めるけど私は幼女では無いような…少女趣味と言うのか?

「まあまあ歌のお姉さんだと思えばいいヨ。詩音ちゃんもそう言ってたし…自称だけどネ」

最後の余計だろ、合ってるけど。歌のお姉さんって言う例え方何なんだよほんと。

 私達は部隊が一つ戻ってくることから忙しくなり準備に手間取っていた。学生である私や花瀬ちゃんは学業をなるべく優先してその他は帰還を祝う準備をすることにした。

 皆張り切ってたし大きなパーティーになるかもな。


 そして部隊が帰還する当日。私達はクラッカーを持って扉の前で待っていた。シャーロットは初対面だし緊張するかなと思っていたが準備も楽しかったのか嬉しそうにしていた。

 扉が開いた時、私達はクラッカーを一斉に発射し帰還を祝った。

「何アルか!?」

わたくしの帰還を祝って下さいますわ〜!」

「久しぶりの学生ちゃん…ハアハア」

「何じゃ何じゃ?こういうのは柄じゃなかったはずじゃろう!?」

びっくりする小明と金髪ロールをなびかせながら歩く金子さん、気持ち悪い手の動きをしながら歩く詩音さん、白く長い髪が映えるルチナさんがいた。

 私達は自由に帰還した仲間たちと話し合うことにした。

「小明、久しぶりだね」

「紫柏!久しぶりアルね。ておや?その子は誰アルか?」

私の後ろに隠れるシャーロットを小明は覗く。

「ハーゼル博士の研究室で見つけた子だよ。保護してるの」

「またやらかしたアルかあの博士は…」

やれやれと言うように頭を抱える小明は呆れたように吹っ切れた顔をした。

「シャーロット…といったアルか?你好ニーハオ(こんにちは)、私は小明アル。紫柏の親友アルよ」

『こんにちは、私はシャーロット。お会いできて光栄です』

シャーロットは研究室で始めて会った時の様に令嬢らしく挨拶をする。

 小明は中国人だったからか日本語には慣れたけどやはり時々中国語が出るんだな。ここに入った当初も少し中国語を勉強していたしある程度は分かるから大丈夫だけどシャーロットはどうなんだろう。

「シャーロットは中国語分かるの?」

『お父さんが私を造った時に有名な言語は学ばせてくれたから大丈夫だよ』

「ほんとアルか!?なら中国語で話しても問題ないアルね」

『でも、紫柏お姉ちゃんが困るなら紫柏お姉ちゃんが居ない時なら良いよ』

「なんで、私の心配を…自由にしていいんだよ。実際貴方を出したのもそれが目的だし」

『大事!これは大事なこと!』

シャーロットがムスッとしながら此方を見る。

うーむ、まあ良いか。そうしたいならそうさせよう。

 そういえば、さっきから後ろが騒がしいような。 

私は振り返るとそこには葵さんと金子さんがいた。お嬢様組か…金子さんが何か言い出したのかな。

 私はシャーロットの手を取り少し近づいてみることにした。小明は巻き込まれたくないと言い部下達と話しに行った。

 「ですから、このパーティーは自由な服装で参加する事が許されているんですわ!」

「ドレスコードが無いとパーティーとは言えませんわ!特に葵様!?貴方様は社長令嬢でしてよ!このくらいのマナーは学んでいるはずでしてよ」

また言い争ってるな…お嬢様の喧嘩には入らない方が良いって私は知っているんだ。

『紫柏お姉ちゃん…ドレスコードって何?』

「ドレスコードって言うのは時間帯や場所、場面などにふさわしいとされる服装のことだよ。言い換えると服装規定やTPOとかかな」

ドレスコードを知らないとなると、シャーロットの挨拶の仕方は博士の趣味か?それともシャーロットが本などを見て学んだものなのかも知らないが、研究室に合ったシャーロット専用の棚は令嬢が着そうな服ばかりだった…やはり趣味か。

 「本当にいつもお元気そうですわね…」

「そっくりそのままお返ししますわ!葵様にはその言葉、ピッタリだと思いましてよ?」

お嬢様の言う『いつもお元気そうで』ってうるさい人って意味だと聞いたことがあるな。お嬢様の口喧嘩は怖いな。

「またやってるのかよお嬢様サマー達は」

「お嬢様summer?何故夏ナンデスカ…ハッ!これがニホンの嗜みデスカ!?」

ジョンさんが変なことを学びそうだったので気しなくて良いよと言ったが何か気になる様子で兄に聞いていた。どうせ返ってくるのは適当な言葉なんだろうな。

 「ルチナちゃんイタリアはどうだった?」

「うむ!素晴らしい技術が沢山あったのじゃ」

「ほほう?どんなのが…」

研究欲にかられているノイさんとルチナさん、紅知さんが居た。

 どうやらルチナさん達の遠征場所はイタリアらしい、初耳だ。イタリアと言えば世界遺産が一番ある国として有名だったな。

 知識のあるあの3人にはイタリアなんて宝の倉庫なのかもしれない。

 「てあれ?シャーロットが居ない…」

私は考えている間にシャーロットが居なくなってる事に気付く。何処に…ん?なんだこのリボン…てこれシャーロットのリボンだ!しかもなんか書いてある。

「『つかまった』…いや、何に!?もしや」

私は悪寒がしたため感任せで動くと微かに声が聞こえた。

 こっちか、あれ?ここって詩音さんの…。目の前にあるのは詩音さんの部屋の扉。うわあ捕まったってそういうことか。

 「失礼しまーす」

私は恐る恐る扉を開けるとそこには着せ替えをさせられそうなシャーロットとハアハアと吐息を漏らしている詩音さんが居た。

 私はシャーロットに手を伸ばし近くに引き寄せる。シャーロットは怖かったのか私の服の裾を掴んだ。

「詩音さん…何をしているんですか?」

「女の子を助ける女の子…ふむ、良い!」

「何がですか!シャーロットに手を出すのはやめてください」

「なら紫柏ちゃんが付き合ってよ。私お手製のお洋服、紫柏ちゃんなら着こなせると思うの!その後は…ハアハア写真を…グヘヘ」

怖い…本当に命が危ない。何をされるか分かったもんじゃない。

『紫柏お姉ちゃんは私の…貴方にはあげない』

「お姉ちゃん…グハッ!姉妹…なるほどねウフフ良いわ二人揃ってお着替えして…」

ジリジリと近寄る手に私とシャーロットは震えながらお互いを抱きしめる。無理無理!逃げたいけど足が動かないんですけど。

 怯えていると私達の上が暗くなり詩音さんの手が私達に触れかけるとゴン!と大きな音がなり詩音さんが倒れる。

「ん?」

「大丈夫だったか?」

「…海さん!?どうしてここに」

助けに来たのは海さんだった。予測していたのか?海さんは気配りができる人だし…有り得そうだな。

「詩音がやらかしている予感がしてな」

「やだ、海ったら!私の事ばかり考えているのね…変態!」

「んな訳無えだろいい加減にしろ!てか変態はお前じゃい!」

詩音さんが起き上がりそんな事を言うと海さんは怒った表情で言う。ド正論だな。

「はあ…こいつは任せとけ。シャーロットちゃんや紫柏ちゃんは離れたほうが良い」

「ありがとうございます」

『…ありがとう』

私とシャーロットはお礼を言いそそくさと部屋から離れる。詩音さんがあの後どうなったかは知らないが…海さんの事だしきちんと対処したのだろう。

 このパーティーは無事終わり帰還した仲間達も楽しそうに感想を言っていた。

 戻りつつある仲間達を見ていると他の遠征に行っている者達が早く帰ってきてくれないかと思うようになった。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る