第7話 学生の気持ち
「花瀬ちゃん!おはよう!」
「おはよう」
中学に入って私は周りと馴染めるようになっていった。小学生の頃は私が孤児だったことから皆は親から関わらないよう言われていた。でも今は違う、私には親が居る。
血が繋がってなくとも私を大事に育ててくれる人がいる。
「花瀬ちゃんのお父さんってかっこいいよね」
「分かるわそれ!イケオジって言うの?惹かれるんだよねー」
クラスの皆が私の父言わば養父の話をする。
私は周りの皆が私のことではなく父や母の話をしているのを聞くと私に興味が無いんじゃないかって思う。その度に孤独を感じるのは何故だろう。
馴染むために前髪を切り、髪の毛を結び、流行りのものを付け勉強をし私は周りに合わせるだけそうすると自然と話せるようになった。仮面を付ける様に。
「ねえねえ花瀬ちゃん、今度花瀬ちゃんの家に行っても良い?」
「え?」
「私も行きたーい!」
「俺も俺も!」
一人の言葉から広がる賛成の言葉に私は驚きを隠せなかった。
私の家は私が所属しているCTB組織の本部だ。半分は組織ので上が我が家だった。皆を連れて行ったら組織の皆に迷惑かけちゃうから断らなきゃ。そう思っていても断れなかった。また小学生の時みたいに一人になるんじゃないかって恐れ私は肯定してしまった。
「でっけえ」
「すっご!タワーマンションじゃん!」
「…お父さんが経営している会社と、合体しているのだからでかいだけで」
嘘はついていないこれは事実だ。
私は組織の皆と会いたくなかった。父や母には許可をもらったが組織の皆と話そうとクラスメイトが駆け寄るんじゃないかって不安だった。
そんな事を思っていると一番会いたくなかった人と出会ってしまった。
「あれ?花瀬ちゃんだ!」
此方に駆け寄る女性は紫柏さんだった。なんでこんなタイミングで…しかもシャーロットも居るし。最悪だ。
私は紫柏さんの事は嫌いではない。関わりたいし仲良くなりたいも思う。ただ少し避けてしまう。彼女は高校生で私と同じ悩みだって抱える年齢で親近感だって湧くはずだ。でも何故か関わりづらい印象があった。彼女は我を貫き通す人で私は周りに合わせるタイプだ、彼女と私は正反対だった。
「知り合いなの?」
「お父さんの部下って言うか何と言うか」
クラスメイトの疑問に私は何と答えればいいのか分からなかった。
「花瀬ちゃんが友達を連れてくるなんて珍しいね。私は花瀬ちゃんのお父さんの部下だよ」
「へえー、そうなんだ。じゃあ隣の人は?」
「この子はシャーロットって言って私の妹みたいな子だよ」
『どうも…』
紫柏さんはクラスメイトとすぐに打ち解けた。コミュ力が優れているんだな。
数分後、シャーロットは紫柏さんの服を掴み喋りだした。
『お使い頼まれてるから急がないと…』
「そうじゃん!じゃあね花瀬ちゃん!」
紫柏さんとシャーロットはそう言い捨て走り出した。
その後は何事もなく遊び1日が終わった。
「ねえ、シャーロット。私は花瀬ちゃんに嫌われているのかな」
『そんな事無い…花瀬は自分の気持ちを上手く伝えれないだけだよ』
私は本部にある自分の部屋でくつろぎながら質問をする。うーん、冷たいんだよなあ。他の人には普通に話せているのに私の時だけ妙に冷たいって言うか何と言うか。
『べつに、部隊は別だから気にしなくてもいいんじゃないの?』
「SCC隊は花瀬ちゃんがいるMTCC隊とよく一緒に出撃させられるから仲良くなってないと気不味いというか」
私の考えすぎなのかな。それとも、うざがられてる感じか?お酒に酔っている紅知さんと同じでウザ絡みだと思われたら…どうしよう。学生同士仲良くしたいんだけどな。
『なら花瀬に単刀直入に聞いてみたら?遠回しで無理ならそれしかない』
シャーロットは頑張れと後押しするように手をグッと握る。
単刀直入に聞くのか…まあ一理あるけど、気が引けるな。
「ね、ねえ花瀬ちゃん」
「何?紫柏さん」
うぐ、目線が冷たい。
「その花瀬ちゃんって私の事嫌ってる?」
「え?」
「ご、ごめん!別に困らせるつもりは無くて…ただ何と言うか避けられている感じがしてさ」
必死に弁解したけどなんて返ってくるかな。これで嫌いって帰ってきたら私は当分休むかもしれない。
「嫌い…じゃない。ごめんなさい、紫柏さんの事はわざと避けてたわけじゃ無いの」
花瀬ちゃんは下を向きながら申し訳無さそうにいった。案外素直に返ってくるな…
そんな顔をさせるつもりは無かったんだけどな。
「私は、紫柏さんと正反対だと思って…自然と避けてたんだと思う」
「正反対?」
「うん、だって紫柏さんは我を貫き通す風でしょ?周りとは違う行動をしたりするから…」
「そんな事無いよ!私は学校でも周りに合わせるし自分から意見するなんてしないからさ、兄と違って臆病者だから」
花瀬ちゃんって私の事そんな風に思ってたんだな。傍から見たら私は我を貫き通す人なのか?そうじゃないと思うけどな。
「でも!組織の作戦では意見だって沢山出して高校の文化祭では周りとは別の服装してたし…」
「あれはノリに合わせられなかっただけだよ。我を貫き通している人は結構周りに馴染んでて浮いたりしないけど私は浮いてるからさ周りに合わせようと思っても合わせれないんだよ」
「友達だって沢山居そうだし…」
「全然!友達なんて片手で数えられるよ!」
言ってて悲しくなってきたな。自分が陰の者だということがわかって苦しくなってくるわこれ。
「そっか…紫柏さんも……私と同じなのか」
花瀬ちゃんは小声で言う。
「ごめんなさい、先入観で紫柏さんと距離を取ってて。きちんと話さないとわからないのに」
「そんな事無いよ、私もずっと話しかけてごめんね」
お互いに謝り花瀬ちゃんとは仲が良くなった。
学生同士だからか気が合うことも多く、お互いにゲームが好きなのもありゲームの話で盛り上がった。勉強の話や学校の話、趣味や好きなものの話など簡単な話で意気投合したりして正面から言うのも悪くはないと思った。
私が彼女と話してて分かったのは花瀬ちゃんは孤独を恐れているようだった。きちんと家族と呼べる者が居なかった小学生の頃のトラウマが未だに焼き付いている。幼い頃の嫌なこと程覚えていると言うものだ。
合わせなくてはいけない環境で生きてきた彼女にとって自分の意見を出して否定されるのが怖いのだろう。
どれだけ技術が進もうと時代が進もうとこの環境だけは変わらないのは我が国の悪い所なのかもしれない。
「って、もうこんな時間か…暗いし戻ろっか」
話している間に、暗くなり寒くなっていた。時間が過ぎるのはあっという間だな。それほど話が面白かったという事だ。
私と花瀬ちゃんはお互いの部屋に戻り仲良くなった余韻に浸かりながら私は布団に籠もる。
『仲良くなった?』
「うん、ありがとうシャーロット」
シャーロットが机に置いてあるお菓子を頬張りながら言う。美味しそうに食べるなあ。
そういや一時期、妹が欲しいって思った時もあったな…シャーロットが実質妹みたいなもんだし別にいいか…。
私はシャーロットの顔を見るとやはり口元が気になった。シャーロットの口が縫われているのをそのままにしているけど、痛くないのか?引き取った時に糸を切ろうとしたらシャーロットは嫌がったし、彼女の体の一部になっているのかもしれない。それに縫われていると言っても喋るときには口は開いているしどういう構造になっているのかイマイチ分からん、クマのぬいぐるみが喋ってると思ってたがそうではないみたいだし…良く分からん。
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