第6話 少女の願い

 『これ…よ…SC…隊……柏は……討…へと……る!て…はシ………ットひと…!』

無線機からの紫柏の声が聞こえ工場内で彼女の声が響く。

「紫柏か!無事なのか!」

「この感じ無事じゃない気がしますわ」

「どうするんでスカ?助けに行く事も出来マスけど」

「私達はここで待機ダヨ」

「ノイ!それは正気かい!?」

「姐さんそんな怒らないノ。それに紫柏ちゃんが望んだ事だからネ」

紅知はノイの胸ぐらを掴みながら言う。ノイは微笑みながら紅知の言葉に返した。

「言っちゃ何だが紫柏は臆病者だ。自分から行動するのは彼奴の性に合わない…今回の紫柏はいつもと違う気がした」

功次は紫柏の兄である為、紫柏の性格がどんなものなのかを知っている。そして今回、紫柏は自分で進むようになった。自分で判断しそれは彼女の中では大きな成長だった。


 「ちょいちょい、さっきからこのリボン邪魔すぎ!」

シャーロットの攻撃を交わしながらも銃を撃つがタイミング良く邪魔をするリボンに苛立ってくる。

『紫伯お姉ちゃんは邪魔をしないよね?』

「邪魔しないって何度も言ってるじゃない!」

笑いながら言うシャーロットに私は少し怒鳴ってしまった。

『なら、私を一人にさせてよ』

シャーロットは少し下を向きながら言う。

 そんな事言われても任務は任務だ。博士の確保が終わっても博士から話を聞けないなら話を聞けるように彼女を博士の下に連れて行かなくてはならない。

『一人は怖いし嫌だ、でもね痛いのはもっと嫌だ。叩かれるのは怖いから撃たれるのも全部嫌だ』

泣きそうな顔で言うシャーロットに私は罪悪感を覚えながらも怯ませるために銃を撃ち続ける。でも攻撃は通らない。

 このままだと弾薬が無くなる…説得するか?いいや遅いな攻撃をしたんだ説得をした所で意味がない。

 「…分かった私は攻撃はしないだから少しでも話を聞いて欲しい」

私は銃を地面に落とし両手を上げながら敵意がないことを見せて彼女の側に近寄る。

『…ほんと?』

シャーロットはクマのぬいぐるみをグッと強く抱きしめた。戦っても私の弾薬が無くなって終わるだけだ。なら遅くても説得するしか無いかな。

「私と一緒にここを出よう」

『貴方の『家族』は私の事攻撃しない?』

「うん、だから私と外に行こう。貴方が望む世界にそして貴方が好きなように生きればいい。縛られずに自由に…」

私は彼女に手を差し伸べる、この手を握るのなら私は彼女に自由を与えたい。閉じ込められるのは苦しと思う。

 実験によって生まれた子は上手く行けば外に、上手く行かなければ閉じ込められる。それなのに無駄な実験をする、それは人間のエゴによって生まれたものであり彼女達が望んで生まれた訳ではない。

『…なら、私は外に行きたいここは狭くて暗くて私にとっては牢屋みたいなところでも、ここは私が生まれた場所でもある』

シャーロットは私の手を取り私の顔を見る。

 「行こっか。外に…」

私はシャーロットの手を握り研究室から出ようとする。話をきちんと聞いてくれる分、戦うより話したほうが早かったな。すると、シャーロットは立ち止まった。

「どうしたの?」

シャーロットは私の手を離して私の髪の毛を結び始めた。一体何をするんだ?

『出来た』

彼女は嬉しそうに笑う。私は髪の毛を見ると結んでなかった髪の毛がリボンで結ばれていた。

 このリボンはシャーロットの攻撃で見たやつと一緒だ。

『長くて邪魔そうだったから』

「ありがとう、大事にするよ」

 私はもう一度彼女の手を取り実験室を出た。


 「お帰り紫柏ちゃん、おや?その子は…」

「戻りましたノイさん。彼女はシャーロット、博士の娘さんです」

ノイさんは目を凝らしてシャーロットを見る。ノイさんはキラキラした目で見ているせいかシャーロットは少し引き気味に私の後ろに隠れた。

「こら、そんなに見たらシャーロットちゃんがびっくりするだろう?」

「ぐえっ」

紅知さんがノイさんの首を掴む。猫じゃないんだから掴まなくても…

 「シャーロット!我が娘よ…無事だったんだな!」

博士がシャーロットに抱き着こうとすると、シャーロットは避けた。

あれ?お父さんだよね、避けるの…?

その場に居たSCC隊とMTCC隊の皆はえ?と言う表情をしながら哀れな目で博士を見る。

「嫌いなの…?」

『違う。ただ、私を助けに来なかった。私を外に出してくれなかったから少し…』

それは、嫌いって意味なんじゃないのか。博士が気の毒に思える。

 しかし実際、彼女の願いを叶えなかったんだ仕方ないと言えば仕方ないのか?

「どうして避けるんだシャーロット!」

『別に』

 この場面を見ると本当の親子だな。お父さんと洗濯一緒にしないでと言う時期と同じか…私は無かったな。お金が勿体ないしそんな事言う勇気もない。

「ま、まあこれで博士から情報を聞けるネ」

ノイさんは必死に話を逸らそうとする。

「早く本部に戻りましょ、紫柏の怪我を治さないとだし」

葵さんは車を手配して乗り込むよう指示した。


 「こんな大怪我、一体どんなロボがいたの?」

楓さんが私の足に包帯を巻きながら言う。

いやはや、申し訳ない。少々無茶をし過ぎた様だ。

「娘は無事に保護されるんだよな!?大丈夫なんだよな!?」

「ああ、此方が丁重に彼女の世話をさせてもらう。自由も保証しよう」

桜瀬さんのズボンを掴む博士は桜瀬さんにシャーロットの今後を託すようだった。桜瀬さんの困ってる顔は久々に見る。

 その後、博士はノイさんと兄に連れて行かれて拷問部屋の中に入っていった。あの二人はかなりの拷問好きだ、無事だと良いんだが。

「しっかし、俺達には花瀬がいるからな。シャーロットを養子に迎えるにはな…」

「私はもう一人養子が増えても別に構わないですよ?」

楓さんは笑いながら桜瀬さんに言った。桜瀬さんは楓さんの発言に少し困ったような表情を浮かべた。

「シャーロットは紫柏に懐いてるんだから紫柏の側においておけばいいんじゃない?」

「え、私ですか」

突然の言葉に私は驚きの声をだす。

「でも紫柏さんは、学生だし養子にするには…無理、でしょ」

「花瀬ちゃんの言う通りかも知れないけど養子にしなくても側に置けばいいのよ」

「でも…」

『……取られたくないの?』

シャーロットが花瀬ちゃんの顔を覗き込むように動く。

取られるって…何が?

「は?いや、ちが。そうじゃないし」

花瀬ちゃんは焦りながらシャーロットを離そうとし後ろに下がった。焦り過ぎだよ…

『ふ~ん、なら私は紫柏お姉ちゃんと一緒に行動する』

「…シャーロットが大丈夫なら私もいいや」

私はシャーロットの笑顔に押されて肯定する。少女の笑顔に弱いんだよ私は。

「ならシャーロットちゃんは紫柏ちゃんに任せたわ」

楓さんの方がいいような気がするんですが…まあ決まってしまったものは仕方無いな。

 さっきから花瀬ちゃんの視線が痛いが気にないでおこう。ジト目で此方を見る花瀬ちゃんにシャーロットはドヤ顔で返すのを見るとお互いに目の敵にしている感じがした。

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