第2話 閃きと疑い

 「手榴弾持ってきたよ」

「一体何に使うのよ?」

「大量デスネー!」

私達は兄に言われた通り、手榴弾を出来るだけ持って来た。

 手榴弾を抱えて持ってくるのは他の隊員達に変な目で見られた為もう二度としたくないと思った。

 「よーし、こんぐらいあれば十分だな」

兄は袖を捲りながら手榴弾を大量に抱えた。

「ちょっと、待ちなさいよ!」

「何だ?あおい

「何に使うの?って聞いてるじゃない」

「いや、だからあのロボを蹴散らす為に使うんだよ」

「意味が分からないわよ」

「…私も意味が分からないけどお兄ちゃんには策があるんでしょ?まずはやってみようよ」

「流石、我が妹。分かってるな」

 そう言い放った兄はロボの方へと走って行った。

「あいつ…行きやがったわ」

「Wow!流石特攻隊ですね!」

「ジョンさん、私達は特攻隊では無いですよ」

「うおらぁ!」

兄はロボの口に手榴弾を入れ耳を塞いだ。手榴弾が爆発したその瞬間ロボはビリビリと電気の音を鳴らしながら崩れていった。

「…倒せた?」

「Oh!素晴らしいデス!」

「嘘でしょ?あんなやり方で良いの!?」

 私達が驚いている中、兄は私達の元へと戻って来てグッと親指を立てていた。

はあ、ホント無茶をする人だ。

「どうだ?これなら倒せるぞ」

「そうかもだけど、それ出来るのはお兄ちゃんかジョンさんだけだよ?」

「私は絶対にやりたく無いですわ!」

「楽しそうナノデやりたいデスネ!」

 絶対にやりたくないと断固拒否しているあおいさんの隣で目を光らせているジョンさんはそそくさと手榴弾を持っていた。

決断が早いよ…………

「てか、どうして紫柏しはくはやらないのよ?」

「…いやーそれは」

 私は目を逸らしながら移動しようとすると、兄に肩を捕まれた。

「あー此奴こいつは手榴弾投げれないんだよ」

「え?」

紫柏しはくは球技全般出来なくてな、投げるとどっかに飛んでくんだよ」

「中に入れるなら問題は無いんじゃ?」

「後、紫柏しはくは別に足速くないしな」

やめて、もうやめて…私のライフはもうゼロよ。

「なら仕方無いデスネ、我々でいきまショウ!」

「頼みました………」

「大丈夫?紫柏しはく

「ハイ………」

私がげっそりしていたからかあおいさんは心配をしてくれていた。



 「ヨイショ!」

「宅配でーす!」

「楽しそうねー」

「ホントに思ってます?」

「思ってる思ってる、うんホントよ?」

あおいさんは兄とジョンさんがロボに手榴弾をぶち込んでいる姿を見ながらスナイパーライフルの手入れをしていた。

「やあやあ!楽しそうな事しているネ?」

ノイさんは私達の顔を覗きに来ていた。

「あぁ、すみません」

「いやいや、謝らなくて良いヨ、良い発想だネ」

「にしても、ノイさん貴方はどうしてここに来たのかしら」

「ああ!そうだった、報告があってネ」

「何でしょうか」

「月ちゃんと姐さんが戻って来たからそれを言いに来たんだ」

「なるほど」

「あ、終わったみたいよ」

ノイさんと話している間に兄とジョンさんが雑談をしながら戻ってきていた。

 早くない?ざっと三十体はいた気がするのだけど…

「何話してんだ?」

花瀬はなせちゃんと紅知こうちさんが戻って来たらしいよ」

「おお!マジか!」

「任務は終わったんだし早く本部に戻るわよー!」

「はーい」

「了解デス!」

「うい」

 私達は車に乗り本部に戻ることにした。




 「お!キタキタ」

「久しぶりだね」

「……お久しぶりです」

「久しぶりだなあ!」

 本部に戻ると、ノイさん、紅知こうちさん、花瀬はなせちゃん、かいさんが待っていた。

「おお、かい!」

功次こうじじゃないか!」

 尾越海おこせかい、金髪で根元が染め忘れているのか黒くなっていて見た目はヤンキーのようだが中身は優男だ。CTB組織の兄貴とも呼ばれいる。

「相変わらずの仲だねえ君達は」

微笑ましそうに見ながら机の煎餅に手を伸ばしているのは紅知こうちさんだった。

「お疲れ様、皆」

かえでさん!」

比島楓ひじまかえで桜瀬おうせさんの奥さんだ。銀髪ロングのかえでさんは見た目と性格のせいでCTB組織内では聖女とも呼ばれていた。

「そう言えば、桜瀬おうせさんは何処にいるんですの?」

桜瀬おうせさんなら、今は別件で不在よ。直ぐに帰ってくると思うのだけど…それまでお茶でも飲んでて」

不在なのか……あ、このお茶美味しいな。

「そう言えば、他の部隊は何処に行ったんデスカ?」

「確かに、まだ帰ってきてないのかしら」

 CTB組織には他の部隊がある。私や功次こうじあおいさんやジョンさんはSCC隊という部隊に所属している。SCC隊は簡単に言えば、突然の依頼などに派遣される部隊だ。位置的には特殊部隊だ。

 ノイさんや紅知こうちさん、かいさんや花瀬はなせちゃんはMTCC隊に所属しており、初期に作られた部隊だ。MTCC隊は報酬金も高い。無論私達の部隊も特殊部隊というのもあって高いが。

「他の部隊はまだかナ。海外行ってる所もあるし正直まだ帰って来てなくてもおかしくはないヨ」

ノイさんは煎餅を食べながらそう言った。

煎餅無くなりそうだな……って私まだ食べてないんですが

 「待たせたな!」

聞き覚えのある声に振り向くと其処には厳つい人が居た。それは比島桜瀬ひじまおうせだった。

おうっちじゃないカア」

「ノイじゃないか、やらかしてないだろうな?」

「酷いなあそんな事するわけ無いジャマイカ」

軽く挨拶をするノイさんに桜瀬おうせさんはからかいながら私達の任務完了書を受け取った。

「あ、そうだ。桜瀬おうせ、報告が別であってね」

「なんだ紅知こうち

「ロボの増援について探してたんだけど犯人が見つからなかったんだ」

「てことは、ロボットが自主的にって事ですか?」

「でも、向こうでこんなのも見つけた……」

花瀬はなせちゃんは画面が割れているタブレットを机の上に置いた。割れすぎでしょこのタブレット。

画面を見ると今回のロボットの機体や詳細、そして組織らしき名前があった。

「…F15、これが今回のロボットの機体名ね」

「聞いたこと無いので新しい組織が作ったんですかね?」

「有り得なくは無いねえ。でも、それにしてはロボの生産が早い気がするね。この組織の名前は私達が前回殲滅した刃線工場はせんこうじょうって所の名前だ」

刃線工場はせんこうじょうとは、ロボを生産する悪徳業者達が大量に集まる組織だ。

「殲滅したのに、まだ生き残りが………」

「完全に潰さないとイケないんでしょうカ?」

「面倒くさいわね、それにあそこ臭いから行きたくないのよ。排気ガスって言うのかしら異臭しかしないわ」

「良い所のお嬢サマーは違うな」

功次こうじ、喧嘩売ってるのかしら?」

「まあまあ、二人共落ち着いて」

かいさんは黙って頂戴、私そろそろ堪忍袋の緒が切れそうなのよ」

止めに入ったかいさんが少し困った顔をしながら、兄に頑張れーと後押しをしていた。



 あの後、兄はあおいさんに連れてかれたが何があったかは私は知らない。かえでさん曰く凄い音が鳴っていたそうだ。


 そして、私達は桜瀬おうせさんから刃線工場はせんこうじょうの殲滅をもう一度頼まれ再びロボと戦う羽目になった。







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