第24話 翼で、空を飛びたい!
「おおっ! さすがシャマシュちゃん! すごいね──」
「まあ、令嬢としては一流よね。誰かさんと違って」
アルルはそう言って、ちらりとミシェウを見る。ミシェウは、顔をぷくっと膨らませてぼそっと言った。
「うるさい……」
「とりあえず、立ち話もなんだから中に入って。ハーブティーでも飲みながら、話をしましょう」
ハーブティー。初めて聞いた。何だろう──。確かに、色々話すなら落ち着いたところの方がいいわね。
「わかったわ」
「ついてきて」
私達は、一人で住むには不相応な宮殿の中に入る。
大きな両開きの扉が開いてから、中の赤じゅうたんの道を歩いて、階段を上り大広間へ。
「すごい──」
「王室にだって、負けてないですよねこれ」
静かで落ち着いた大広間に入ると、緑色の大理石が到る所に敷き詰められ、そして天井には高く蒼々とした色が。広い空間には、豪華な宝石が刻まれたテーブルと、カーペットが敷き詰められたため、空間全体が凄い華やかさを感じる。
豪華そうな家具に、シャンデリア。金銀や宝石でできた飾り物が飾られていた。なんて言うか、私たちが住んでいる宮殿とは全く違う異質さがあるのよね。遠い地方の、まったく文化が違う場所にいるみたいな感覚。
そして、そこから手狭な部屋に移動。さっきとは打って変わって、白を基調にした応接室のような場所。中央にあるソファーに座る。
「どうぞ座って」
「はーい」
どんな羽毛を使っているのだろうか、すっごいふかふかだ。ミシェウは、嬉しそうにソファーの上で体をはねさせていた。
改めてソファーに3人が座ると、私はじっとアルルを見る。
「それでは、改めまして、シャマシュです。よろしくお願いします」
「私アルル。よろしくね──」
「まあ固い挨拶はここまでにして、色々話しましょ!」
「そうね。お菓子とお茶用意するわ」
アルルは、一度この場を離れて、銀色の大きな板にお茶やお菓子を持ってきた。
銀色のきれいな模様のお皿には、透き通った茶色のお茶。甘くて爽やかな香りが、こっちまで漂ってくる。
そして、白い皿には茶色い、板のような食べ物? これ、見たことないわ。
「でもとってもいい香り、これ何??」
「お茶はハーブティー、南方で採れたハーブを使ったお茶。甘いお菓子に似合うように、甘さを抑えているわ」
お菓子も、とっても美味しい。確か──聞いたことがある。
「チョコ──確か、カカオを使ったお菓子ですね」
「チョコレート。ええ。カカオを加工して、砂糖を入れて固形にした食べ物よ。そのままだと苦いから、ミルクなんかを加えているわ」
美味しそう……カカオは、話には聞いたけど王国には結局は言ってこなかった。1枚とって、かじってみる。
砂糖の甘さとミルクのほのかな香り──それとカカオの苦さが良く調和していて素晴らしい味ね。
ハーブティーと相性がぴったり。とってもおいしい!
思わず、手が進んでいく。
ミシェウに至っては、パクパクと口に放り込んでいると、アルルがこっちをジト目で見てきて、大きくため息を吐いた。
「はぁ~~」
「な、何さ……」
「あんた、本当に王女様?」
「し、失礼な! だっておいしかったんだもん。つい──」
口を尖らせて、言葉を返す。確かに「頭がおかしい」とか言われてるんだけどさ──。
「まあ、ミシェウですから──」
「何を~~~~」
楽しい雰囲気でまるでお茶会をしているみたい。話も、王宮での人間関係や貴族とのやり取りとか。
アルルは王宮内のことについては何も知らなかったので、この機会にいろいろと聞きたいと言っていた。
私とミシェウでハーブティーをのみながらいろいろと話す。自然と雰囲気が和んで、和気あいあいとした空気になった。そんな所で、こっちが話したかった話題に変わっていく。
ミシェウ視点。
「占星術。もっと強くなりたい!!」
雰囲気が良くなったところで、間髪入れずに私は言った。アルルは板チョコを1枚かじる。
そして、遠目に山々の景色を見ながら言葉を返した。
「それはわかってる。私が聞きたいのはあなたが進みたいと思ってる道のこと。どうなりたいの」
そして、私は今まで怠ことを話す。戦いが近い、みんなを守るために占星術を極めたいと思ったこと。アルルは、ソファーに体重を預けてハーブティーを飲み干した後ミシェウをじっと見て言った。
「もう少し具体的な答えが欲しいわね。あなたどんなふうになりたいいの? 一丸に占星術を究めるといっても、強くなりたいといっても内容は多種多様にある。力そのものを究めたいのか、それとも精度を上げたいのか──あなたがどんな方向に向かいたいかで、私が出す答えが変わるわ」
その言葉に、腕を組んでジーっと考え込む。
何度か首をひねって、しばし時間がたって答えを出した。
「空を飛びたい!」
「え……」
「翼を生やしてさ、この空を取りみたいに優雅に飛んでみたい」
色々考えて。私があこがれていたこと。そして私が出来て──それがみんなのためになること。空、飛べたらかっこいいし素敵だし。戦いだって上空から見ることができれば大きく変えることができるはず。
そう考えて、答えを出した。その瞬間脳裏にパンクしそうなくらいの情報が一気に入ってくる。
「あ──あっ、あああああああああああっっっっ!!!」
突然のショックに、思わず叫んでしまう。廃墟となった王宮、数えきれないくらいの死体──。
頭を強く抑えて、叫びながらこの場にうずくまった。
数十秒ほどして、脳裏に光景が入り込むのが終わって顔を上げる。
「大丈夫??」
私の顔を心配そうに見つめるアルルの姿、そして──。
「大丈夫ですか???」
シャマシュが、とても心配そうな、悲しそうな表情で肩をつかんだ。唇が触れそうなくらい顔が近い。
「あははは、ちょっとめまいがしちゃっただけ。突然のことにびっくりしちゃって、もう大丈夫。ははは」
苦笑いして言葉を返すと、この場に雰囲気が落ち着いていくのを感じた。
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