第5話 ティータイム
そう言って、ララーナは立ち上がると壁にあるタンスからティーカップを取り出す。
私は、いくら頭がおかしいとか言われたってこれでも王位継承権を持っている王族。
急な来客対応を迫られておもてなしをすることだって当然想定している。
そんな時でも失礼が無いように、すぐに紅茶とお茶菓子を出すくらいのおもてなし用の一式が用意されていたのだ。
「私にお任せを」
手際よくララーナが紅茶を入れた。こういうことには慣れているから、手際よく紅茶が出来上がる。
シャマシュは、出された紅茶に角砂糖を5.6個ほど入れる。そう言えば、甘党なんだっけ。
そして、落ち着いた様子で紅茶を飲みながら質問に答える。まずはララーナ。
「流石はキ──、今まで見たことない、個性的な性格をした人だと思います」
「なんか、ただならぬことを言おうとしてなかった?」
顔を膨らませる私に、ララーナは冷静に言葉を返した。
「それくらい、お嬢様は変わり者ってことですよ。自覚してください」
「……はい」
すると、隣にいたシャマシュが腕をくっつけてきた。こっちを見て、ふっと笑みをこぼす。
キレイ──なんていうか、瞳は透き通っているみたいで吸い込まれそう。
髪はきれいで、一生撫でていても飽きないんじゃないかって思う。
「でも、それはミシェウ様の性格だけでなく、占星術のイメージもついて回っているからだとは思います。私から見れば神秘的で、見ている分にはとても素晴らしいと思うのですが」
ああ。確かに周囲から見れば、変なことをやっているような感じにも映っちゃうわね。
「あはは、私もそれは思う。ありがとね」
「ふぅ──お嬢様はいつもそうです。周囲の目というものを考えたほうがよろしいかと」
ララーナは、呆れた表情でため息をついて答える。
確かに、ここには家族や貴族たちに見せられないようなものがいっぱいある。占星術もそうだし、
「でも、役に立ってる時だってあるじゃん。ララーナだって、いつも私に尽くしてくれて、友達でいてくれたさ──だから少しでも役に立ちたかったんだよ。こんな私と一緒にいてくれて──ララーナ大好き」
「婚約したというのに、もう浮気ですか?」
その言葉に、あわあわと手を振る。
「そっちの好きじゃないってLOVEじゃなくってLIKE」
全くもう。私だって、いきなり同性に好きとか言われたって困っちゃうよ。確かに、シャマシュはお嬢様みたいにとってもかわいいし、きれいな容姿をしている。
でも、流石に恋愛感情を持てって言われたら無条件でうなづくなんてできない。そういうことって、少しずつ作り上げていくものじゃない?
両手で頭を押さえて髪をわしゃわしゃする。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
やり場のない大きな感情を、どうすることもできずに大きく奇声を上げた。
「もう──初めてのことが起こって、頭がパンクしてるのがまるわかりです。
「当たり前じゃない!!」
ララーナがやれやれとため息をつく。いつもしっかりしていて、こうして私のことを見てくれているのだ。
「で、お嬢様はシャマシュ様の愛を受け入れるのですか?」
「う~~ん、悪い子じゃないなら敵対する理由はないし、でも私だって考える時間が欲しいし……
あと、シャマシュ──ちょっと大人っぽくなったよね。ちょっと前あった時と雰囲気が変わったというか。
昔はもっと子供っぽくて、優秀なんだけど──ムキになるときは感情を出したりしたんだけど。今は、そんなことすらしそうにない。
それと瞳の奥に強い覚悟とか、想いを秘めている感じがする。
たまに遠い場所を見たり、考え込んだり。
シャマシュ、何かあったのかな?
「そうですね、わたしも軽率だったかもしれません。一歩一歩、距離を縮めていきましょう」
そう言って、顔を近づけてくる。いい匂い……じゃなかった。でもいい匂いだし、かわいい……。
う~~ん、やっぱり意識しちゃう~~。どぎまぎ……。
二の腕は、ぷにぷにで柔らかいし。髪からは香水かな? さわやか系のいい匂い。後おっぱい、大きいな……見つめると強調してくるけど、わし掴みできるでしょ。
シャマシュ、結構いいかも。ゴホン!! 落ち着け私。
まあ、魅力的な女の子だということはよくわかったわ。いきなり交際なんて言うことは厳しいけど、少しずつ距離を縮めていこうかと思う。
小柄だけど、とってもスタイルがよくって──ミステリアス。
でも強い気持ちを秘めているのが、あの瞳からわかる。
私の占星術の貴重な協力者として、大切に生きたいな。
ふぅ……。ミシェウの部屋から戻って、疲れからかベッドに身を投げ……うたた寝してしまった。
本当に疲れた。やり直していきなり、嵐のような一日が終わった。
いきなりいろいろあったな。
日が暮れて、すっかり夜となっている。
一晩泊まって、お楽しみになっても個人的にはいいけど、今のミシェウと一線を越えるのはまだ早いかな??
それにしても、素敵な部屋だったわ。
占星術──は今は置いておきましょう。明日、父上への報告があるから。
今は、それに神経を集中させないと
ミシェウの全部を、一刻も早く私のものにしたい。
あの笑顔が似合う世界にして、絶対に2人で幸せな道を歩む。
そんな世界にするため──私は戦い続けるんだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます