第4話 私の部屋へ

 ふぅ──なんとかパーティーに戻って、正気を保つ。いまだに、夢なんかじゃないかなって思う。さっきのやり取り。ちなみにシャマシュは私にくっついてきたり、周囲に人たちと話をしていたり。


 固い服装が嫌いな私、いろいろな人と談笑をしながら会場の隅にいたら、いきなりのカイセド君の婚約破棄。本当にまさかだった。


 からのわたしへの婚約宣言。


 反撃したシャマシュに突然の魔獣襲来。シャマシュだけじゃ厳しいなとは思っていたら私に力を貸してほしいだって。


 あの時のシャマシュ、ちょっと頼もしく見えたなあ……まるで、ずっと死闘を経験してきた歴戦の戦士みたい。彼女、そんな戦いの経験なんてないのに。



 そして、シャマシュの頑張りを無駄にしないための、私の占星術の出番! 

 私の大活躍のおかげで、街は守られた。さすがは私!



 本当にいろいろあった。さすがに疲れちゃった。もうクタクタ。


 そして、記憶に焼け付いてしまう。あの唇の柔らかさ。一瞬シャマシュのほうを見て、思い出す。唇の柔らかさ。


 思い出して、ドギマギしてしまう。動揺が止まらない。隣にいる人とのやり取りで。


 えっ……えっ……あっ──。これ、夢じゃないよね、現実だよね。


 あ……えっっ? マジ??


 えっ──。私、何も聞いてないし。こういうのってパーティーの前にあらかじめ家を巻き込んで話し合いを繰り返していて、ここで行こなわれているのは答え合わせのようなもの。


 だから、聞いてもいないことをいまさら宣言されても返す言葉に困ってしまう。頭パニックで、すごいフリーズ。


 それに、婚約破棄だってそう。聞いてないし、こんな人々の目の前で。

 何があったのかな? 今度聞いてみよ。




 そのあとパーティーが終わると、私の部屋に戻るまで一緒に手をつないだ。私の部屋に、招待することになったのだ。だって、あんな終わり方じゃ絶対夜も眠れないし。


「ミシェウ、手がとても柔らかいですわ。一生握っていたいくらいですの」


 シャマシュと手をつなぎ部屋まで戻っていった。

 ちなみに、指と指を絡め合ってつなぐ、通称恋人つなぎというやつ。


 シャマシュの指、冷たくてなめらかで柔らかくて、ずっとつないでいたくなるくらいだ。ちなみに、シャマシュは時折腕をくっつけてくる。柔らかい。


 いきなり恋人つなぎはちょっと驚いたけど、シャマシュは私の手を求めているかのように何度も指をくっつけてくる。



 そのたびに、どきどきが止まらない。


「ということです。こちらこそ、2人の愛をどうぞよろしくお願いいたします」


 自信をもって宣言して、周囲に視線を配ったあの時。


 大半ははったりかもしれないけど、ここでオドオドしたりしたら周囲になめられる。こっちが主導権を渡さない。


 そう周りに印象付けるのが大事なのだ。


 さらに、カイセドと話をしたいがそう言ってはいられない。明日にでも、話を聞いてみよう。

 そんなことを考えながら部屋に戻る。


「ただいま~~」


「お嬢様お帰りなさい。シャマシュ様もですね、もうお楽しみにするつもりですか?」


「いいんですか? さっきのキス、はじめてなのに息ぴったりだったですし、今夜も楽し……」


「誤解を生むようなこと言わないで! 」


 シャマシュの言葉を強引に遮ってから来客用のソファーに座らせ、山積みになっていた資料がのっている政務用の机に強引に片付ける。


「ごめん、調べ物が長引いてごっちゃごちゃでさ──」


「お気になさらず。構いませんわ。別に来客というわけでもありませんもの」


「すぐに、紅茶を入れます」


 お辞儀をしてきたのは侍女のララーナ。

 青白いセミロングの髪。小柄な体つき。私より一回り年上で、幼い顔つきの人。落ち着いた性格で、私のことをよくわかってくれる人。


「聞きましたよ、パーティーでの出来事。ミシェウ様──相変わらずですね」


 あきれ顔で、ため息をつくララーナ。もうそこまで情報が行ってたんだ……。



「しかし、いきなり 同性同士の婚約。お嬢様が奇想天外だというのは理解しておりましたが、まさかこんなことになるとは」


「私だって、ほんとに意外だったんだよ!」



 手を大きく降って弁解する。そうしないと、賛同してるって思われちゃうから。


「いいじゃないですか、変わり者同士。いいコンビだと思いますよ」


「誉め言葉、ありがとうございます」


 私が変わり者ってことは、否定しないんだ……。自覚はあったから、私も否定しないけど。シャマシュは、うれしそうに微笑むも表情を崩さない。

 表情に自分の感情を出しすぎない。そういうところ、令嬢として一流よね。


「とりあえず、立ち話もなんだしなんか飲みながら話でもしない?」


「そうですね」


 ララーナは特に驚いた様子もなく私の方をじっと見た。ララーナもまた、冷静さを持っている。

 それに、私が子供のころから隣にいてくれた人。

 だから、私の性格や癖──行動パターンはすべてわかっている。だから、かける言葉もかなり踏み込んだものになっているのだ。


「まあ、私は貴族たちの間で疎まれていましたから、体のいい厄介払いってことで反応も悪くないでしょう」



 同志ってやつ? 偶然だね──。

 いらない余ったやつがくっつく分には構わないってこと? 体のいい厄介払いだよね?


「まあ、周囲から見ればそうでしょうね」




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