第4話 異生物出現!!出撃のミニステール!!


 ここは、架空県よりさらに北にある東北地方の某県某山脈。

 冬も近くなり、紅葉もそろそろ終わりというこの山では現在、山狩りの最中だった。

 人里に現れた熊を駆除するため朝から続いた捜索は、結局熊自体が見つからなかったため成果が上がることなく終えようとしていた。

 明日は雨の予報だが、続きをやるべきかどうかを地元の猟師たちと地主の代理が話していた時……


 突如、山肌に黄色の亀裂が入った。


 その亀裂はみるみる大きくなり、やがて煙を上げ始める。

 気づいた猟師たちが指をさし、その亀裂にただならぬものを感じ始めた。

 そうこうしているうちに亀裂はやがて何かの姿をかたどり始め、そして一つの形をとった。

 

 中心にあるのは青い、楕円の花のつぼみのような構造物。その周りを8本の黄色い触手がうごめき、そのうち4つには大きな紫色の単眼がついていた。


 超巨大異生物____

 その特徴と合致することに気づいた人間は、一刻も早くこの場から逃げることを大声で指示した。

 ここは携帯の電波も届きづらい。国防軍に知らせるにも、一刻も早く電波の届く山の麓まで降りることが必要。その判断はある種理にかなっていた。

 だが、その考えは最悪な形で不要になった。


 突如、超巨大異生物はどこかから咆哮を上げたかと思うと……

 目のついていない4本の太い触手を、足に見立てて地面に伸ばし、そのまま中心部分をブリッジの要領で持ち上げた。そして今まで隠れていたつぼみの下には、何か袋のようなものを吊り下げていた。その部分が急に膨張するや強い風を出し始めたではないか!

 そのままその超巨大異生物は、木をなぎ倒しながら山を下り始めた。まるで山肌を滑るスキーヤーのように……


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「やっぱりここのハンバーガー美味しー!!」


「ハハハ、そう言ってくれると嬉しいよ!」 


 時刻は17時過ぎ。わたしと蓮は、放課後の買い食い(*1)に勤しんでいた。


 「今日の日替わりのチーズソースって、何を使ってるの?」


 「オウ、それは秘密さ!!もっとも明日もこの味とは限らないがね!」


 現在いるのは高校近くの空き地にやってきたキッチンカー。この辺りの再開発を目あてに先週出店したらしく、なかなかの繁盛店になっている。


 「このパテ!!牛と豚が仲良く協定を結んだ合いびき肉!!それにパン粉と卵を主張しないレベルで混ぜ!塩と胡椒、それとナツメグ?を混ぜることで醸し出されるこのハーモニー!」


 「ワオ、そこまで気づくとは!!お客さんやるね!」


 蓮はこの陽気な外国人の店を気に入っていた。日替わりで変わるメインのハンバーガーに、4種類から選べるドリンクのセットで600円は破格だろう(*2)。


 「…蓮、多分これリコッタにお酒混ぜたやつにキノコの何かを加えてる。」


 かくいうわたしもこのこの店に来るのは3回目だ。仕送りがあるとはいえ、布にかなりの金額をかけているわたし達にはありがたい存在だ。

 日が徐々に落ちていく中、カロリーの背徳感を内心気にしながら和んでいた。そんなとき……


 ブゥー!!ブゥー!!


 キッチンカーの中から異音がした。


 「ムウ!?緊急速報!?」


 店内に置いてあったムード用らしいラジオからだった。


 『緊急警報!!緊急警報!!東北地方で超大型生物が出現しました!特例警報を発令!付近の皆様は、直ちに避難してください!』


 「ワオゥ、これで4匹目ですね」


 ラジオから流れる警報を聞くと、周りに歩いていた人たちも近寄ってきた。一刻も早く情報が欲しかったのだろう。店長もそれに気づいてか、音を大きくしてくれた。


 『防衛軍が出動します!!周りの皆さんは、一刻も早く非難してください!ほかの地域の方も、安全のため付近の避難所に行く準備をして屋内で待機を…』


 「ちょっとまずいね、学校に戻ろうか」

 「う、うん」


 警報レベルが上がる前に付近の建物に逃げるのは、この4年でみんな染みついたのだろう。足早に立ち去る人が増える中で、店長も看板を『CLOSED』に変え、待っていたお客さんへ返金(*3)している。

 わたしは蓮と手をつないで学校に戻ることにした。

 

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 「さて、状況はやばそうだね」


 現在裁縫部の部室。あの後無事に学校に着いた私たちは、似たような経緯でか学校に戻ってきている人の群れを窓から見ていた。

 

 「うん…流石に」


 やはり誰かが持っていた携帯端末の声を聴くと、防衛軍は手こずっているらしい。いや、むしろ初動が早くはなっているのだが、肝心のバリアを突破する火力が出せていないらしい。


 「またあんなふうになるのかな…」


 そうして思い出されるのは、あの日の光景___砕けたアスファルト、燃える車、悲鳴を上げる家々、嫌悪感がすごい匂い、そして泣きながら私をゆする蓮___

 

 もう、あんなのはコリゴリだ。


 「……蓮、わたし行ってくる」


 そう言ってわたしは簡易更衣室に向かう。ここなら誰にも見られる心配がない。


 「……みずき」


 そう言うと更衣室の外にいた蓮は、部室の窓のカーテンを閉めて、更衣室に入ってきた。


 「いってらっしゃい、帰ってきてね」


 蓮はそういってわたしに笑顔を向けた。

 そしてわたしはカバンの中から出したステッキを強く握りしめて一言

 

 「いってきます」


 そしてわたしは、光に包まれた。


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 無限に広がる青白い空間。そのただ中で制服を着たみずきは浮いていた。

 みずきが右手に持ったステッキを頭上へ高く掲げると、ステッキから白い光の布が伸びてきた。布は彼女を包むように大きく広がり、やがて大きな繭になった。そのまま繭はより強く光を発し、周囲を白く塗りつぶした。

 

 そして布の下の肉体が、変形していく。

 生物的丸さがあった足は、台形の平面に。

 出っ張っていた膝は、まるで何かをつけたかのように肥大し。

 そこそこの大きさだった腰も、太ももの付け根を隠す大きな装甲に。

 女性的なふくらみのあった胸も、大きな平面へ。

 肩がうごめいたかと思うと、立体的なふくらみを作り。

 背中から樹木のように生えたそれは、やがてノズルの形をとっていく。

 そして額の部分から角が伸びてきたところで、

 

 突如腹部のあたりから、燃えた。


 白かった光は紅蓮の赤へ。やがての火が全身に回ると、布が剥がれ落ちていき、今のみずきの姿を表に出す。


 金属の光沢を称えたその姿は、かつての戦装束のような威厳と畏怖を感じさせ。

 同時に何も灯っていない顔のスリットが、非生物的な不気味さを醸し出していた。

 そして光はやがて腹部に集まっていき、白いクリスタルへ収束していった。

 そして光が収まると、頭部のエックス字状のスリットに、オレンジ色の光が二つ灯った。


 そしてみずき___ミニステールは先ほどまで持っていたステッキを両手で持つと、腹部のクリスタルへ押し付ける。ステッキはまるでミニステールの体に入るように吸い込まれていき、やがて完全にその姿をなくした。

 

 そして周辺の空間が揺らぎ始める。青はやがて水色に変わり、水色の空間の中に白い穴が現れる。そしてその白い穴が、ミニステールを飲み込んでいった……

 

 _______________________________

(*1)なかなか変わらないみずきの体重が増えるかどうかの実験も兼ねている。

(*2)材料費の高騰により、チェーン店の削減が増えてる昨今ではなおさら。

(*3)細かいのを出している暇がないので、千円札とおまけのクーポンで出した。

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後書き

変身シーン難しい。


次回は第四号との戦闘。

 

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