第14話 ストレス解消
スノウドレイクという大型の魔物が目の前にいた。
確かダンジョンでは30階層辺りにいるような魔物だ。
地上に出てくることはないはずだが、どうやらイレギュラーな事態に遭遇したらしい。
並の騎士では歯が立たないらしく、次々と倒されている。
そんな中、アイザーさんは持ち前の剣技で渡り合っていた。
彼はお抱え騎士となったことで一人前として扱われている。
だから今回の討伐でも前線に配置されていた。
そして、スノウドレイクと戦っていたわけだ。
先輩の騎士が次々と倒されていく中、彼だけが対等に戦えていた。
どうやら、アイザーさんは騎士団の中でもトップクラスの実力であるらしい。
クリスもそれなりの技量を持っているが、彼はその上をいく、ガストン先輩よりも高い技術を持っている。
もちろん私はそれよりも遥か高みにいるが、どうやら地味らしい。
あまり、周囲は私の技量について触れてこないし、そこまで強者であると思われているとは思えない。
もちろん特別アピールすることはないし、どちらかと言えばアピールは苦手だ。
そんなこともあってアイザーさんには負けてしまった。
そう、私はアピールが下手らしい。
アピールすることはむしろ避けて来たことも原因となっているのかもしれない。
少し練習をする必要がある。
仕方ないから、スノウドレイクをあっさり倒してしまった。
剣の一振りだけで。
そう、仕方なかったのだ。
私はたまたまストレスが溜まっていたし、たまたまアピールの練習も必要だった。
それに、たまたま、57階層まで余裕で行けるだけの実力もある。
その偶然は周囲からすればすごいことだったらしく、全員が呆然としている。
呆れて声が出ないようだった。
それもそうか。
毎日鍛錬を重ねている騎士団の面々が束になっても敵わない魔物を単騎で瞬殺したわけだから。
かなり間を外して歓声が上がってきた。
どうやら気づいたらしい。
私の凄さに。
この前からストレスフルな生活だったせいか、少し落ち着いた気がした。
こんな単純なことでストレスが解消するならもっと早くやっておくべきだった。
でも、どうも、性格的には向いてないようで、すぐに恥ずかしくなってきた。
「お前、すごいな! あの、スノウドレイクを一撃で倒すなんて見たことがないよ」
「本当だ! すごいものを見せられたよ」
「ダンジョン攻略もすぐにできるんじゃない?」
騎士団もメンバーが次々に声をかけてくる。
もちろん、アイザーやクリスも驚いている。
団長の目にも留まったらしく、団長からもお呼びがかかった。
「名前はなんという?」
「アステリアです」
「ほう、剣はどこで鍛えた?」
「ダンジョンです」
「元冒険者か。なるほどな。どこの階層まで行ったことがある?」
「57回想です」
「あはは! お前、面白いヤツだな!」
「本当ですよ?」
「おいおい、しつこい冗談は嫌われるぞ?」
「ええ、はあ」
「ん? 本当なのか? 先程の腕なら行けるというのか? 他のパーティメンバーは?」
「単独です」
「ん?」
「単独です」
「聞こえているが、内容が理解できん」
「ですから、単独で57階層まで行きました」
「それはいくらなんでも……」
私は変わらず真顔でいると、どうやら団長はそれが真実であることを飲み込めたらしい。
いや、まだ疑ってはいるだろうが、それに近しい実力があることまでは理解できたのだろう。
「お前の実力は私がこの目で見たからそれは間違いない。それを加味して国の上層部には報告しておこう」
「ありがとうございます」
これが認められたら、騎士爵がもらえるかな?
それは甘いか。
しかし、王の耳には入るかもしれない。
これを積み重ねて爵位を得るのは可能かもしれない。
少し活路が見えた気がした。
昨日までのイライラが全て吹き飛んで行った。
ストレス解消ついでにアイザーさんとも模擬戦をした。
私が大物を瞬殺したので、他の魔物の討伐も含めてかなり時間に余裕があったらしい。
団長の提案で模擬戦を行うことになったのだ。
アイザーさんは相変わらず派手な立ち回りだったが、木剣の一撃の元に沈めると、周囲はまたもや静まり返った。
やはり、一撃はやりすぎたのだろうか?
それとも、アイザーさんがくの字になって、吹き飛んでいく姿が衝撃的だったのだろうか?
どちらにしてもやりすぎた。
昨日の八つ当たりをしてしまったようだ。
アイザーさんには申し訳ないことをしてしまった。
すぐに回復魔法でケガを治療すると、そこでも周囲は驚いていた。
どうやら、剣士は魔法が使えないことが多いらしく、中でも回復魔法を使える人材はかなり重宝されるらしい。
地上の細かい情報を持っていない元女神としては初耳の情報だった。
団長と団長補佐が何やらコソコソ話しているが、気にしないでおこう。
私の初恋は下界のクズモブでした〜最強すぎるので影ならがら推すことにします〜 ahootaa @ahootaaa
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