第5話

 わずかな月明かりを頼りにクーとシュティは源初たちを日中に来た場所に案内する。


「ここだよ~」


「なるほど…これは」


 月の光も降り注がないような暗闇が源初たちの前に佇む。



 早速ルインは火炎の結晶を撃ちだすが、闇に触れた瞬間に瓦解される。



「やはりだめか」


「まかせて」


 そういうとシュティが闇に向かって進みだす。


 闇に手をかざすと、周囲の闇が少しずつシュティの手のほうに集まりだす。


 源初たちの前の闇は暗黒魔力の塊だったのだ。


 今のシュティは暗黒魔力をまだ完璧にコントロールすることができていないが、やればやるほどうまくなっていくだろう。


 実際のところ、圧倒的な才能によって終盤になるにつれ目の前の暗闇がシュティに集まるスピードがどんどん速くなっていく。


「シュティすごいー!」


「やる~」


 みんなに褒められてシュティーは少し頬を赤らめる。


 ルインの結晶が瓦解されたことを見ると、シュティがいなければ残りの源初だけで目の前の暗闇を何とかすることは困難だったのだろう。



 闇が晴れた森の中心部の中を源初たちが進む。


 程なくすると森をくくりぬけ、かなり広いギャップが目の前に広がる。


 月明かりが降り注ぐ中、その中心には虹色に輝く結晶が宙に浮かんでいる。


 その光景を目にした源初たちはその結晶に近づく。


「何かしら」


「すごい魔力を感じるな」


「キラキラしてるー!」


「とりあえず触ってみる~?」


「うん」


「われからやるとしよう」


 ルインが結晶に近づき、手をかざす。


 すると手が結晶と触れる瞬間、まばゆい光があたりを包む。



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《破滅》《源念》を獲得しました。

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 「世界」の声がルインの頭の中に響く。




 少しすると光が収まる。


「…ルイン…だいじょうぶ…?」


「ああ」


「何が起きたんだ?」


 ルインが起きたことをほかの源初にも伝える。


「すごいー! 面白そう!」


「危ないものではなさそうね」


「とりあえず僕たちもやってみようよ~」


「そうだな」



 ルインの後に続いてほかの源初も相次いで結晶に手をかざす。


 ルインと同様に結晶に触れるとあたりは光に包み込まれた。


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《破滅》《源念》を獲得しました。

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《輪廻》《源念》を獲得しました。

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《輪廻》《源念》を獲得しました。

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《創世》《源念》を獲得しました。

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《創世》《源念》を獲得しました。

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《沈黙》《源念》を獲得しました。

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《沈黙》《源念》を獲得しました。

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「なんだろうね~」


 クーが頭をかしげながら問いかける。


「われらの名を冠するあたりおそらくわれらの権能に関係があるのだろう」


「そうね。使えるのかしら」


 そういうとゼーレンは目の前の樹に向かって心のなかで意識すると目の前の樹はみるみる成長し、あっという間に数百万年はあろうかというくらいの大木になる。


 その光景に源初たちは驚きをあらわにする。


 そしてゼーレン本人が一番わかっている、これは間違いなく自分の権能の力であると。


「力はまだまだ弱いが本質的にはわたしの権能だわ」


「となればおそらくわれらも同様に己の権能を駆使できるということだろう」


「試してみよ~と」


 クーがそういった瞬間、世界が色褪せる。


 ただでさえ静かな深夜の森が時を止めたかのように葉の音、風の声、あたりすべてのものが沈黙する。


「ここまでだな~」


「何をしてたかしら」


 クーが時を止めている中、普通はすべてのものが動けなくなるはずだが、源初たちは自分たちの力を使いそれに対抗しているためこうして普通に話せている。


「それがね~ どこまで僕の力が及ぶのかな~って思って試してみたんだが思ったより小さいみたい」


 クーが時を止めれた範囲は源初たちがいる場所を覆いつくすほどでそれほど大きくはない。それに気づいたこととして強力な生物を停止するのにかなりの力を消耗することだ。


 力の総量は一定のため強力な生物を止めれば止めるほどその分範囲が小さくなる。


「うん」


 シュティもクーに続いて試してみたが変わらなかった。


「冷静に考えると力というものは使えば使うほど強くなるもの。もしかして使っていくうちにできることも増えていくかもしれない」


「トヴァの言う通りだな。とりあえず他に何もなさそうだし、さっさとこの森から出ようぜ」


 あれこれやっているうちに日が昇り始める。


「さんせー! はやくいこうよ!」


 森の外に出ると聞いてクレアのテンションが上がる。


「そうね」


「これ」


 シュティが結晶を指さしながら言う。


 結晶は特に変わった様子もなく宙に浮かび続けている。


「念のため持っておこう」


 ルインが結晶を手に取る。


 結晶の大きさはそれほど大きくはないが、手に持っておくにはかなり邪魔な大きさである。


「何かしら入れ物がないかしら」


「ふっふん、まかせなさーい!」


 クレアの前の宙に突如指輪が現れる。


 クレアが指輪を結晶に近づけると結晶は吸い込まれるように指輪の中に入っていく。


「これね、クレアが作った収納できる指輪だよー これがあればどんな荷物も簡単に収納できるのよ! すごいでしょ!」


「すごい」


「…すご…い」


「ほめて遣わす」


「えらいぞ」


「すごい~」


「さすがだな」


「すごいわね」


「ふっふん、それほどでもあるわよ!」


 調子に乗ったクレアは指輪をさらに作り、源初一人一人に持たせる。


「これであとは森を出るだけだな」


「しゅっぱつ!」


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