第8話 ギフテッド

「ふむ」


そんな事を言いながら考え込む梨子。

俺はその姿を見ながら、何か食うか、と言うと。

焼肉、と言い出した梨子。

お前はアホなのか、と突っ込んだ。


「第一まずお前にそんなもの出したら無限大で無くなる。食費も足りない」

「ふむ。けち」

「ケチって言うな!?」

「まあ冗談は置いて。.....太陽は浮気したの」

「そうだな。それで今の状況に至っている」

「.....では私が仲介役を担おう」

「冗談だろ。お前に任せたら全て食い尽くされる」


そんなツッコミを入れながら梨子を見る。

梨子は、ふむ、とばかり言いながら。

焼けたクッキーをバリバリ食べる。

月が一生懸命に注ぎ込んでいる状況だ。

何枚食うんだコイツは。


「コラ。食い過ぎだぞ」

「私は幾ら食っても太らない体質。だから大丈夫」

「そっちは心配してない。食費の問題だ」

「私の心配もしておくれ」

「無いっての」


そんな感じで言い合いながら居ると月が、まあまあ。伸晃さん。良いじゃないですか、と笑顔になる。

俺はその顔を見ながら、甘いぞお前、とツッコミを入れる。

すると月は、私は構わないです。だって食べてくれますから、と言葉を発しながらクッキーを鼻歌混じりで焼いていく。


「.....お前な。月が大変な事になっているからな」

「月さんどうも」

「軽いわ!!!!!」

「ではどうすれば良いの。ノブ」

「重々噛み締めろ。全く」


話の論点がズレているからな。

俺は考えながら居ると。

50枚ぐらいクッキーを食べてからゲフッと言いつつ。

太陽にはどう接しているの、と言ってくる。

反省するまでは一人きりだな、と答えた。


「反省.....」

「そういうこった。だから今は家出中なんだ。月はな」

「そういう事。成程。じゃあ今はフリーって事」

「まあそうだな」

「じゃあ私の事好き?」

「だからお前はマスコットキャラと言ったろ。好きもクソもない」

「ノブ。ワタシハアナタガスキダヨ?」

「カタカナになっている気がする.....」


貴方はモテないよ、と口元にクッキーの破片をくっ付けながら話す梨子。

俺は額に手を添えながら。

ペシッと梨子の額を叩いた。

それから、あう、と言う梨子に向いてから。

金蔓で好きって事だろ、と苦笑する。


「まあそうとも言うし」

「あのな.....」

「梨子さん。金蔓って言わないで下さい。私の大切な人です」

「ふむ。.....月ちゃんはノブの事が好きなの」

「宇宙で一番好きです」

「.....ふむ。モテる嫁さんだ。.....クッキーが美味い」

「お前もう帰れ。何をしに来たんだ.....」


ふむ。正確に言えば。

何かノブが悩みを抱えている様だったから。

だからちょっと訪問した、と言ってくる。

いや.....カンが良すぎる。

女子ってのはみんなこんな感じなのか。


「まあそれは冗談」

「いや。オイ。冗談かよ」

「私が来たのには理由がある。ノブ。.....婚約して私のものにならない」


月が、え、と固まる。

俺はその言葉に肩を竦めながら返事をした。

冗談めいた顔で、断る、と言いながら。

そして梨子を見つめる。


「全くな。婚約は真剣に考えろ。落ちぶれた俺と婚約しても何も良い事はな.....」

「.....貴方には実力があるって話は忘れた」

「.....中学時代の話はやめろ」


俺は少しだけ複雑な顔をする。

すると梨子は溜息を吐いてから、そうだね、と返事をする。

中学時代っていうのは生徒会の会長だった時代ですね、と月が聞いてくる。

まさにその通り。


俺は生徒会を率いていた会長であり。

成績優秀で全国の模試で1位。

全ての成績で楽に通っていた様な人間だった。

そして小学校時代は.....クラス委員長で成績上位者。

だが。


「.....それが凡人と言い放つ理由は」

「色々訳ありだな。その事を話す気はない」

「貴方は相応しいと私がお父様に提言したんだけど」

「余計な真似をしたな。お前」

「優秀さがあれば何でも勝てるから」


そう言いながら俺を見てくる梨子。

俺は盛大に溜息を吐いてから立ち上がる。

それから、もう帰れ、と言う。

そして梨子を見る。


「分かった。帰る。.....月ちゃん。馳走になった」

「はい」

「.....」


俺は玄関まで梨子を見送り。

それからそのまま帰宅させた。

そして月が俺を見てくる。

俺はその事にメガネを拭く。

そうしてから自分を思い出す。


ギフテッドの.....IQが170あるとされる俺を。

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陽光と月光 〜逆襲の唄〜 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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