第5話 太陽、空、月

☆飯場太陽サイド☆


何かがおかしいと思う。

一体何がおかしいかといえば.....待ち合わせ場所に何故か伸晃が居なかった。

私は困惑しながら待ったけど。

それでも20分経っても来なかった。

何がどうなっているの。


一体何故なのか分からないまま歩いていると。

目の前でスーパーの食材の安売りがあっていたのだ。

私は笑みを浮かべて、ラッキー、と言わんばかりに食材を買い集め.....って違う。

こんな事をしている場合じゃない。


「.....伸晃はどこに行ったの?」


食材を置きながらそう思う。

そう呟きながら私はスマホを観る。

まさかと思うが月が嵌めた?

でもそんな訳ないよね。

月がそんな真似.....。


「.....」


私はSNSを確認する。

正直.....こうして色々な男性に会ったけど。

満足はしなかったな、とおも.....まさか。

これがバレたとか?

そんな訳ないよね.....?


「.....じゃあどうして居ないの。伸晃」


そう思いながら歩いてから商店街を抜けてから。

そのまま河川敷を歩いて住宅街を歩いたりしていると。

目の前にとんでもない人物が。

それは伸晃と月だった。


「.....え?」


私は愕然としながらそのまま隠れてしまう。

それから様子を伺っていたが。

伸晃も月もなんだか嬉しそうな感じで歩いている。

いや。

正確には月が振り回している様に見えるけど。


「.....何で.....」


唖然としながらそのまま息を呑む。

それから私は意を決して唇を噛んでからそのまま2人の前に出る。

すると月は足を止めた。

そして私をジト目で見てくる。

伸晃は驚愕していた。


「何をしているの。2人で」

「.....お姉ちゃん。偶然会っただけだよ。おにーさんには」

「偶然って。あの待ち合わせ場所に案内したのは月じゃない。偶然もへったくれもないでしょ」

「待て。太陽。.....これには訳がある」

「待って。おにーさん」


タピオカティー持っていて、と月が言ってから。

そのまま何かスマホを弄る月。

それから何かを差し出してきた。

それは裏垢だ。

つまり私の.....裏垢だ。


「こんな事を平然としている貴方に言われたくない」

「.....待って.....それは.....」

「何?待たない。私。だから決めました」

「.....何を?」

「話し合ったんだけど。私は暫く家出します」


それから、私はおにーさんの家に泊まります、と宣言する月。

私は汗をかきながら、お父さんとお母さんが許す訳が、と言うが。

お姉ちゃん。今家に誰も居ないよね。私は貴方と共同生活なんかしたくないです、と言い出す月。

ガラガラと何かが崩れ落ちる気配がして青ざめた。


「.....太陽」

「.....はい」

「.....お前は裏垢をやっていてしかも.....何人も不純な恋をしたってのは事実か」

「そ、それは.....」

「俺はお前とは別れる」


私は愕然として涙を浮かべる。

そして、若気の至りだったから、と説明したが。

納得されなかった。

そして私は別れる事になり。

家から月が暫くの間、出て行く事になってしまう。


「.....行こう。おにーさん。お姉ちゃんだと認識したくない。反省して誠意を示すまでは」

「.....私が悪かったよ。.....だから」

「今反省して許すとでも?甘いよお姉ちゃん」

「.....」


そして伸晃と月は去って行く。

私は涙を浮かべて泣く事しかできなかった。

悲しみを癒やす為だったとはいえ。

何と愚かな事をしてしまったのだろうか。

今更ながらそれを思ってしまった。



それから私はマンションにトボトボと帰って来てから。

そのままソファに深く沈み込む。

私が浮気をした.....というか。

取っ替え引っ替えしたのは事実だ。

完全な.....大馬鹿野郎の行動だと思う。


「どうしたら良いのだろうか」


そんな事を呟きながら私は涙を流す。

それからそのまま時計の針の音が聞こえる真っ暗な室内で天井を見上げる。

そして目を閉じて考える。


三姉妹が.....分裂する感じがした。


「.....あはは.....空.....どうしたら良いのかな。私」


涙が止まらない。

私達は元は5人家族だった。

長女(太陽)。

次女(空)。

三女(月)。


その3人で.....三姉妹で。

幸せな家族だった。

今は2人姉妹で家族は分断したのだが。

家族が分断した理由。

それは.....空の事故死だった。


これはあくまで言い訳じゃないが。

私は空が亡くなってから。

孤独を抱えてしまってから。

そしてネットに依存した。

それから男を取っ替え引っ替えして.....寂しさを紛らわせていたのだ。


「それがこのザマだからまあ何も言えないね。言い訳にしか聞こえないし」


伸晃を裏切った。

そして月も裏切ったのだ。

何というかそれどころか家族も裏切ったと言える。


私には何も残されてはいないだろう。

そう考えると私は何をしているのだろうか。

そう思ってしまった。

ははは。

狂ってしまいたい。


「.....どうにかしないとね」


このままでは。

何と言うかこのままでは絶対にダメだ。

絶対に何とかしなくてはしないといけないけど。

だけど。


「何から手をつけて良いのか」


そう悩みながら私は天井を見上げていた。

馬鹿だ、と思う。

全てが暗闇の様に.....暗い。


明るくなる事なんて無いだろう。

この先も。

私が自ら招いた事だ。

だから。

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