第4話 沼、沼、沼.....?

☆遠野伸晃サイド☆


何だかよく分からないが.....月ちゃんが変態になっている。

いや。よく分からないとは言ったけど分かる。

何が起こっているかといえば理解したくないだけだろうけど。

俺が好きだという事だから。

だからまあこういう事になっているんだとは思うけど.....。


「?」


思いながら放課後、太陽とデートの様な形になったので待ち合わせ場所に向かう.....と何故か月ちゃんが居た。

そして、おにーさん、と笑顔になりながら手を振ってくる月ちゃん。

俺は驚愕しながら、ど、どうしたの?太陽は.....、と聞くと。

はい。嘘を吐きました。お姉ちゃんの待ち合わせ場所はここから遥か遠くに設定しています、とニコニコしてくる月ちゃん。

え.....。


「い、いや。それは良くないんじゃないか?」

「おにーさん。お姉ちゃんは仮にも浮気しています。.....こういうのも最低ではないと思いますし私達がこういう事をしても良いと思います」

「.....い、いや。そうかもしれないが.....」

「今日はデートしてくれるんですよね?」

「で、デート.....って」


俺は汗をかきながら反応する。

すると月ちゃんはニヤァッとしてから俺の腕に自らの腕を絡ませた。

それから歩き出す。

この時を待っていました、と言わんばかりに。


「まあとは言っても知り合いが居るかもですからほどほどにいきますけどね。だけどおにーさんは私のものです」

「つ.....月子ちゃん.....」

「さて。そうなると先ずはどこに行きますか?」

「本当に良いの?太陽は.....」

「はい」


全て話しています。

全て嘘ですけどね、と笑顔になる月ちゃん。

それから歩き出す俺達。


そして行き着いた先は.....ショップが立ち並ぶ場所だった。

アパレルショップとか。

ここは原宿に似た場所なのだが.....。


「な、何をするの?」

「はい。タピオカティー飲みましょう」

「あ、そ、そうか。なるほどね」

「その後に下着屋さんに行きましょう」

「.....は!?」


私、おにーさんの性欲を知りたいって言いました。

だからこそ性欲にブッ刺さる様な下着が欲しいです、とニコッとする月ちゃん。

俺は苦笑いを浮かべながら月ちゃんを見る。

すると月ちゃんは、えへへ。この日をどれだけ待っていたか、とタピオカ屋に向かう月ちゃん。

その姿を追う様にしながら俺は、なあ。もしバレたらどうするの?、と聞いてみる。

その言葉に月ちゃんは、偶然会った、という事にしておきましょう、と笑顔で答えてくる。


「これもお姉ちゃんへの罰ですよ。.....あの人は.....」

「.....?」

「私の大切な人を裏切りましたから」

「確かにね」

「おにーさんを裏切ったのが心底悔しいです。何故こんな良い人を」

「なあ。月ちゃん」

「?.....なんでしょう?」

「何故俺を好きになったんだ?」


俺は話題を逸らす様にしながら聞いてみる。

するとその言葉に注文しながら、そうですね。私がおにーさんを好きになったのは.....当ててみて下さい、とニコッとする月ちゃん。

ここでもゲームかい?、という感じで苦笑いになる俺。


「そうですよ。人生はゲームですから」

「.....そうか」

「おにーさんは何を飲みます?お金を出させて下さい」

「ああ.....俺は.....ってかちょっと待って。お金は俺が出すよ」

「気にしないで下さい。今日は付き合ってもらってますから」

「.....」


じゃあこの分以外は出すよ、と俺は告げる。

月ちゃんは、お構いなく、と返事をした。

そしてタピオカティーを飲む。

あくまで本当にストレートタピオカティーであるが。

美味しいではないか。


「おにーさん。私が今日は全額出しますよ。その費用は.....将来、私達が付き合いだすまで取っておいてくれれば、と思います」

「いや。付き合う前提なの!?」

「前提じゃなくて確定ですね。.....私とおにーさんは結ばれる運命です」

「確定って.....いやいや。あのな.....」


私はあくまでおにーさんが好きです。

一途で好きですよ、と目からハイライトが消える月ちゃん。

それから俺をジッと見てくる。

俺はその顔を見ながら何かゾクッとする。

タピオカティーも冷たいが.....。


「おにーさん。私はあくまでおにーさんが好きなんです。.....だからこういう危ない関係も良いですよね」

「.....俺はそんな気分じゃないよ」

「おにーさんがその気じゃないなら私がその気にさせます」

「.....」


俺は汗を吹き出しながら月ちゃんを見る。

月ちゃんはニコッとしながら俺を見てくる。

その顔は何かを企んでいる様な。

小悪魔の様な顔に見えるし。

悪魔の様にも見える。


「私はあくまでお姉ちゃんではないと思っています。貴方の隣に居るのは」

「.....」

「私は必ず手に入れますよ。おにーさんを。どんな手段を使ってもね」

「月ちゃん.....」

「あ。そうだ」


そう言いながら月ちゃんはヘアピンを1本取った。

それから俺に向いてから、これを常に持って。私を想って下さい、とまたニコッとした月ちゃん。

手に握らされたのは特徴的なヘアピンだ。

そこら辺には売ってない様な洒落ている感じの、ってオイ。


「.....いや。いいよ。ありがとう。くれるのは良いけど.....」


そこまで言ってから返そうとしたのだが。

月ちゃんはそれより先に耳打ちした。

イケナイ事をこれで是非して下さい。これで。私が認めます.....、と息がかかる。

俺は、!!!!!、と思いながらゾクッとしつつ慌てる。


「.....えへへ.....おにーさんのえっち.....」

「全てお前さんがやっているけどな.....」

「良いじゃないですか。あはは」


沼に嵌ろうとしている。

俺達は後戻りの出来なさそうな沼に。

何というか.....うん。

そう思いながら俺はヘアピンを見た。

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