四十七 大幣

むかし、男、ねむごろに、いかでと思ふ女ありけり。されどこの男を、あだなりと聞きて、つれなさのみまさりつついへる。

大幣の引く手あまたになりぬれば思へどえこそ頼まざりけれ

返し、男、

大幣と名にこそ立てれ流れてもつひによる瀬はありといふものを



「ねぇ、ちょっと聞いてよ。あの男さ、また別の女のところ行ったんだって。ちょっとないよね〜」

「うっそ。またぁ?ないない。ちょっとひどくない〜?」

「ほんと、どこがいいんだろうね〜。」

「そうね〜。ちょっと、歌がうまくて、顔が良くて、身分が高くて、誰からも好かれるような人だからってねぇ。」

「ちょっと、あんた、それってほめすぎじゃない?あ〜もしかして、あんたもあの男、好きなんじゃないのぉ?」

「ば、ばっかじゃないの?!そんなわけないじゃん!」

「あ、ねぇ、それなに?その机の上に書きかけの手紙!ちょっと見せなさいよ!」

「だ、だめだめだめだめだめだって!あ、ちょっとやめて!!」

「あ・・・」

「あ・・・」

「大幣の引く手あまたになりぬれば思へどえこそ頼まざりけれ」

「な、ちょっと詠まないでよ!」

「へ〜、これ、あの男に送るわけ?」

「別に、いいじゃん?」

「『タクサンノヒトにオモテになっているのね。そんな人を頼りとすることはできないわね。』だって。」

「そうよ?あんな人、さいってーよ。」

「じゃあなんで「手紙」出すの?」

「え?」

「なんで手紙出すのって聞いてるの!ほっときゃいいじゃん。」

「だって、ひとこといってやりたいじゃん?」

「手紙なんか出したらあなたのこと気にしてますって思われちゃうじゃない?しかも、女側から和歌を送るなんて、おっかしいやつと思われちゃうよ?」

「そ、そうよね。わざわざいうことなんてないよね。わかった、手紙。返して。」

「はい。」

「ありがと。」




「・・・手紙?誰からだろう?私からは今は誰にも出していないような・・・。あ・・・」



「大幣と名にこそ立てれ流れてもつひによる瀬はありといふものを」


「❤・・・って、いいわけあるかぁ!!!!!!!」



最後って言やぁなんでもゆるされるってわけではない

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