第12話 令嬢の護衛
「先に危険がないか見回りを頼まれていてね。で、君たちが屋根上について話しているのを聞いたってわけさ」
俺はレインについていきながらことの顛末を聞いていた。
「ま、いいよ。それでその令嬢とやらはどこに?」
「向こうの馬車だよ」
道をしばらく進むと馬車が見えた。
「ちなみに何で令嬢は狙われてるの?」
「彼女。ウッドレス防衛作戦に大きく関わっていてね。作戦が成功すればとうぜん評価はされる。で、その評価をさせたくない人間というのがどうしてもいるもんなんだ」
貴族の闇というやつだそうだ。
評価される人間が入れば他のものの評価は相対的に下がる、そういうものなのかもしれない。
そんなことを思いながら呟いた。
「そうだな。おかしいと思ってた。本来ウッドレス防衛作戦はもっと被害を抑えられるはずだったからな」
ゲーム内の話だ。
初めはもっと簡単な作戦だって聞いてたのにフタを開けてみればめちゃくちゃ難しかった。
コンビニでも行こうぜ?くらいのノリで持ちかけられた作戦だったのに、ドラゴン倒しに行くくらいの中身だったのだ。
それだけにこの作戦はプレイヤーにトラウマを与えたのだが、その背景にはこういうことがあったのか。
(作戦に関わった人物が死んでしまい、そして難易度が上がったということか)
実に分かりやすいな。
ならばウッドレス防衛作戦を簡単にするためにもここは令嬢の護衛をするべきだな。
決意を固めて俺は【鑑定】スキルを使った。
俺の鑑定スキルはいろいろと使い道が多いがこういう機能も存在する。
【令嬢護衛作戦を完遂すると、ウッドレス防衛作戦の作戦成功率が89%上がる見通しです】
こういう風に自分の行動が起こす変化を計算してくれる機能もあるわけだ。
(護衛の方もやっておいた方がいいだろうな。この調子じゃ)
そう思い俺はレインに交渉することにした。
「報酬は9000万ガロン」
「いいよ」
速攻頷くレイン。
俺はそれを見てから内心頭を抱えた。
(もっと吹っかけておけばよかったぁぁぁぁぁあ!!!!!)
だがもう時は遅い。
「ここからどこまで護衛すればいい?」
「王城まで。暗殺者が狙ってくるのもそこまでの道中のはずさ」
「で、俺はどうしたらいい?自慢じゃないけど戦闘能力はそこまで高くない」
俺がそう言うとレインはこう言った。
「馬車の外から中身を攻撃する方向は左右のどちらかからだ。私は右を守るとしてあとは左を守ってくれたらいい」
そう言った時姉さんは俺の肩に手をポンと置いてサムズアップしてた。
「私のボーンガードに任せろ。骨を甘く見るなよ」
キラッ。
歯を見せて笑ってた。
それを見てレインも言った。
「ボーンガードというのはよく分からんが、これでいいんじゃないか?」
「まぁいいかも」
俺はそう言ってレインに連れていかれてそのまま馬車に乗り込むことにした。
馬車の中は向かい合うように椅子が置いてあった。
そして、後ろの方の椅子に令嬢がいて俺たちは軽く自己紹介をした。
それから姉さんは左、レインは右の警戒をすることにした。
俺は令嬢と向かい合うように座ってた。
「大丈夫そうでしたか?レイン」
「はい。特に問題はなかったようですよ」
「そうですか」
どうやら令嬢を安心させるために嘘をついたらしい。
優しい嘘というやつだ。
そして、馬車は動き出す。
(原作だとこれで死ぬんだな)
俺は令嬢を見てた。
すると令嬢は恥ずかしそうに顔を下に向けた。
(見すぎたか)
そう思った時だった。
パン!!!!!
発砲音。
「ほねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
姉さんが骨の盾を使って窓に向かってかざしてた。
コン。
弾かなにかが骨の盾に当たって馬車の外の道に落ちた。
その後俺は呟いた。
「レインの方向から3人」
この時になって令嬢は下にうずくまってブルブルしてた。
「な、なんなんですか?!これは!」
俺たちは何も答えずに黙々と狙撃手の方へ対処していく。
そうしながレインは御者に言った。
「速度を上げろ!狙われている!」
馬車の速度が上がった。
明らかにさっきより中が動くようになっていた。
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
俺はそのままふたりに指示を出し続けた。
「姉さん3人、レイン、5人」
これだけで伝わるようでどんどん対処していってくれていた。
馬車の速度が上がったせいで狙いにくくなったのだろう。
それからピンチになることはなかった。
そして【鑑定】スキルが起動した。
【交戦終了。お疲れ様でした】
ふたりに告げた。
「もう終わりらしい」
そう言うとレインは言った。
「ほんとうにいい目を持っているようだね。すばらしい指示だったよ。おかげで誰の人死も出なかった」
そう言って手を差し出してきたので握った。
本当はウッドレスで関係を作ろうと思っていたが、早い段階でできてしまったな。
「報酬を払おう。王城まで来てくれるか?」
そう言ってレインは馬車を降りていった。
俺達も降りてみるとそこは王城の庭だった。
レインは令嬢を連れて歩いていこうとしていたが俺は口を開いた。
「待って」
「どうした?まだなにかあるのか?」
「王城の中に敵性反応がある。これは殺意」
令嬢とレインは目を合わせてレインが言ってきた。
「お、王城にまでなにかいるというのか?」
「うん」
そう答えるとレインは言った。
「私が話を通す。王城まで来て貰えることはできるか?」
「あぁ」
俺はそう言って王城の方にも行くことにした。
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