第11話 貴公子

姉さんといっしょにギルドにやってきた。


そんな俺はギルドの受付嬢に話しかけていた。


「あの」

「はい、なんでしょう」


俺を見て笑顔になってくれた受付嬢に言った。


「こんなもの拾ったんだけど」


闇ギルドのカードを提出した。


「こ、これは!」


目を見開いた受付嬢。

それから周りの受付嬢と一緒にざわざわと騒いでからこう言った。


「謝礼を払います」


【5000万ガロン】


「こ、こんなに?」

「はい。有名な賞金首でしたからね」


原作では見かけなかったメンバーだけどどうやらそれだけ凄かったメンバーらしい。


俺は金を受け取った。


それから姉さんに目を向けた。


「今日はもうやめにする?」


ここまで来るのにかなり時間がかかったし、なによりこれから何をするかとかも考えたいし。


「そうだな」


俺は姉さんを連れてギルドを後にした。


そういえばだけど王都にくるのは初めてだ。

俺はあの辺境の村を出たことがないから。


そうして歩いてると酒場が見えてきた。


「お腹すいたな」


俺は呟いた。


姉さんはどうだろう?

骸骨って腹減るのかな?


「私は減らんが食べたいなら付き合うぞ」


麻痺無効と言い腹減らないといいスケルトンって実は人間の上位種じゃないのかってちょっと思い始めてきた。


中に入って適当にご飯を食べることにする。


そのときだった。


「あ、あの、落としましたよ?これ」


女の子が姉さんに声をかけていた。


女の子が姉さんに渡したのは骨だった。


「あばらか。私はいらんから君にやろう」

「え、いりませんけど」


ドン引きしてた。


まぁそりゃそうだよなって思いながら姉さんは要らなさそうなので俺が受け取ることにする。


後で食べてみるか。

なにか特別な効果でもあるかもしれないし。


骨を受け取ったけど女の子は去る様子が無かった。


「なにかまだ用事が?」

「あ、あの。旅の方ですか?」


そう聞いてきた。


俺は頷いた


「うん」

「何をしにここへ?」


そう聞かれて俺は答えた。


「この国の頂点に立ちに来た」

「この国の頂点ですか」


それならって続けてくる女の子。


「いい話がありますよ」

「いい話?」


俺が聞くとこう答えてきた。


「今現在この国のトップは【貴公子のレイン】と呼ばれています」


そいつなら知っている。

原作でも出てきたキャラだからだ。


たしかに強かったし、強敵だったな。


だが対処法は分かっている。


「レインは今対戦相手を募集していますよ」

「よし、戦いにいこう」


彼女は首を横に振った。


「無理ですよ今すぐは」


そう言われて思い出した。


レインと戦うには条件があったはずだ。


「ウッドレス防衛作戦だっけ?」

「はい」


力強く頷いた彼女。


原作でもあったな。こういう流れ。


ウッドレス防衛作戦に参加して優秀な成績を残した場合はレインと戦闘できるチャンスを与えられる。


そのときは報酬がなかったから俺はやらなかったけど。

ゲームのおまけ要素だった。


だが、そんなおまけ要素でも最強になるためには必要な要素だ。


「参加するしかないようだな」


そう言った時彼女は続けた。


「参加人数は最低3人からです。ウッドレス防衛作戦はチームでの参加になりますから」


そこで俺は女の子に目をやった。


言いたいことは理解したよ。


「私と組みませんか?お二方」


俺は聞いた。


「君は何ができるの?」

「回復魔法が得意です。2人の回復を担当したいのですが」


そう言った時姉さんは言った。


「よし。入団試験をしてやろう」

「入団試験?」


彼女が聞くと姉さんは答えた。


「私に肉をつけてみろ」

「肉?」


察しが悪そう(というより姉さんはどこからどう見ても人間だから仕方ない)と思ったのか姉さんは一部投影を解除した。


左手の人差し指が骨になった。


「私はスケルトンだ。肉をつけてくれ。回復魔法ならできるんじゃないのか?」

「蘇生魔法ではないのですよ?回復魔法は」

「勝手に殺すな。私は生きている」

「肉をつけるだけでいい」


チラッ。

女の子は俺を見てきた。


でも、一応試すだけは試そうとしていた。


「ひ、ヒール」


力を入れると少しだけ肉がつきはじめてたけど直ぐにバテた。


「無理ですよ。骨から回復しろなんて」


さすがに俺も同情する。


と思っていたが姉さんは言った。


「私は仲間にしてもいいと思うけどエースはどうだ?」


今の結果でそんなことを言うとは思っていなかった。


「俺もいいと思うけど。くる?」


そう聞いてみると少女は頷いた。


「は、はい。よろしくお願いします。私はシオンです」

「よろしくねシオン」


俺たちはこうして新たな仲間を手に入れた。


明日からはこの子を連れて活動することになる。


シオンと別れて俺は姐さんと宿屋に向かうことにした。

その時だった。


ピタッ。

俺は止まった。


【気配察知】


「どうした?エース」


姉さんの言葉に答える。


「2時方向屋根の上狙撃手、10時方向に同じく」

「狙われてる?」

「分からない。狙いは俺たちじゃやいかもしれない。ただ注意はしておこう」


俺の【気配察知】もそこまで万能なものではない。


敵意や殺意を感じ取ると反応が強くなって気づけるけど、それが誰に向けられたものなのかまでは意外と分からない。


だからここで目立つようなことは避けたい。


シオンに目を向けたが、こんな人畜無害な子が狙われるとも思えない。


それにこの通りにはたくさんの人が溢れてる。

俺たちが狙われてると考えるのは流石に自意識過剰ってやつだな。


それから俺は考えた。


「誰かを狙ってるのかもね」

「誰かって?」


そう聞かれて思い出した。


原作ではこの街にきたらイベントが起きていた。


そのイベント内容は貴族の令嬢の射殺だった。


犯人は分からないが、そういうイベントがあったな。


「今から登って叩き潰せれば早いんだけど、まぁそういうわけにもいかないからな」


まだこの街の情勢も決まった訳では無いし。

下手に手を出してなにか面倒に巻き込まれるわけにもいかない。


「なるべく目立たないように、それを方針にしよう」


俺がそう言うと姉さんは頷いた。


そのときだった。


「君たち、なかなかいいものを持っているようだね」


後ろから女の声が聞こえた。

振り向いてみるとそこに立っていたのは【貴公子のレイン】だった。


「すまないが、話は聞かせてもらったよ。耳がよくてね」


そう言ってレインは口を開いた。


「とある令嬢の護衛を頼みたいのだが協力してもらえないだろうか?報酬は言い値でいいよ」


まさか、こんなにも早くレインに会うとは思ってもみなかったことだ。


それにしても聞かれていたか。


原作通りの耳の良さらしい。


ちなみに貴公子とは言われているが、普段は男装をしているだけの女である。

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