第6話
外に出ると既に塀の上に戦闘員が登っていた。
そこからその様子を伺っている。
「おい。人喰い狼はどこだ?!」
「あそこだ!」
話を聞く感じどうやら既に目視できる距離にいるらしい。
俺も塀に飛び乗って目を凝らした。
【暗視】
暗闇の中でも目をこらすと見えやすくなるためのスキル。
「なるほどな。アレが狼で、そして手前を走っているのが例の少女か」
確かに狼が少女を追っていたようだ。
彼らの間には距離があった。
だから少女の方の滑り込みは余裕を持って終わったが。
タッタッタッタッ。
「ガルルゥ!ガルゥ!」
狼の方はにおいを辿っているのかピンポイントでこっちに向かってきている。
「目標。もうそろそろ接敵するかと思われます!」
兵士の叫び声。
「矢を構えよ!魔法を使えるものは【
リーダーらしき人間がそう話していた。
俺も氷矢を構える。
魔法の練習は一通り行っているので基礎的なものは問題なく使える。
そして、アイスアローは基礎的なもの。
ヒュォォォォォォォ……。
キンキンに冷えた氷の弓矢を俺は魔力で作った。
「うおっ、何だこの冷気は」
「くそさみぃ」
俺たちに目を向けてくる周りの兵士たち。
それから口を開いた。
「こ、こんな子供まで来ているのか?!」
そうやって同様している兵士たちに答えるように俺は矢を放った。
【アイスアロー】
ビュン!
飛んでいく氷の矢。
しかしそれは簡単に避けられた。
「距離があるからだめだな」
俺がそう呟いた時。
リーダーが口を開いた。
「少年に続け!避けるスペースもないほどに矢と魔法を放て!」
「「「おうっ!」」」
兵士たちが一斉に放っていく。
魔法と矢を。
ふたつの雨が降っていくが、それでも今日にウルフは避けていく。
「なんてすばしっこい!」
「くそっ!もうすぐそこまで来てるってのに!」
その声で俺はこれ以上遠距離はやっても無駄だろうなと判断した。
「俺が出よう。もし負けたら誰かフォローを」
そう言って俺はウルフがいる平原側に飛び降りて、剣を構えた。
ウルフの相手の仕方は知っている。
ウルフを相手にする時はとりあえず攻撃を避けるとこから始める。
攻撃を避けて相手が隙を晒したとこを叩く。
それがセオリーだ。
「ガルゥ!!!」
突っ込んでくるウルフの噛みつき攻撃を避けた。
攻撃力が高くても当たらなければ意味が無い。
そして生じた隙に攻撃を行う。
「【スラッシュ】」
剣を振るう。
ズバッ!
ウルフの口から剣が入っていく。
そしてザン!
俺はウルフの口を口裂け女のように引き裂いた。
「グォォォオォォオォォォォ!!!!!!!」
苦しんでいるウルフに更に追撃を行う!
「【スラッシュ】」
そのときだった。
ガブッ!
俺の体を強引にウルフが噛んでくる。
でもこんなことしたら次の攻撃が確実に避けられない。
(そんなことしたらお前、倒れるのが確実だぞ?なるほど、決死の一撃ってわけか)
【スキルが発動しました。HP1で耐えます】
「ガルっ?!」
俺が倒れないことを疑問に思ってるようだが。
「しまいだ」
ザン!
今度こそ俺はウルフを倒した。
「……」
グラッ。
ウルフは身を横たえた。
そして、ウルフの体は淡い光に包まれた。
これはモンスターが消滅する時の演出である。
【人喰い狼の宝玉を手に入れました】
【レベルが上がりました。レベル1→レベル4】
そのとき歓声があがる。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!あの少年すげぇぇぞ!!!!」
「人喰い狼を倒しちまった!ソロ討伐じゃないか!!!」
歓声があがる。
俺はそんな歓声を受けながら敷地内に戻る。
「さすが私の婚約者様ですね。人喰い狼を倒してしまうなんて」
アンリに返事をする。
「なに、大したことないよこんなの」
そういえば、だけどあのモンスターとは原作で戦ったこともあるしね。
「謙遜なさるなんてそういうところも素敵でございます。では、雨も降っておりますのでそろそろ家に入りましょうか」
そう言ってくるアンリ。
俺はそのまま家の中に向かうことにした。
◇
ユグドラシルの当主からは大量の謝礼をいただいてしまった。
「子供の俺にこんなにくれるなんてな」
帰りの馬車の中で父上に言った。
すると父上はこう答えた。
「そうだね。エースはまだ子供だが、それだけ贈る価値があった、っていうことなんだろうね。これはね、光栄な事だから覚えておくといいよ」
「へー」
俺は謝礼と共に貰ったジュースを飲みながら呟いた。
「それより、俺婚約しちゃったんだな」
結局アンリとはらもう婚約を確約してしまった。
このままいけば結婚なのだが。
「アンリちゃんはなかなか可愛くなかったか?エース」
と言われて俺は答えた。
「そうだね。なかなか俺好みだったよ」
って言うとミーシャが俺に話しかけてくる。
「あ、あの兄さん?ちなみに兄さんから見て私はどのような感じなの?」
「え、えっと、それってどういう意味?」
俺が聞き返すと父さんが笑っていた。
「モテモテだな。エースは。まさかミーシャまでその気にさせてしまうなんて」
そう言われてまだ気付かないほど鈍くない。
俺はミーシャに聞いてみた。
「え、えーっと。それはつまり異性としてどうかってことなの?」
「うん」
「あ、いや。そのミーシャはかわいいと思うけど」
「ほんと?!」
「って何言ってるんだろ俺は」
妹に何を言ってるんだろうな。
って思ったけどミーシャは嬉しそうな顔をしてた。
だから、まぁいっか。
かわいいもんはかわいいしね!
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