第2話妹「兄さんがカブトムシに当たって倒れた!」

Side ミーシャ。


「ステータスオープン」


名前:ミーシャ

レベル:1

攻撃力:3

防御力:3

体力:30


難易度:イージー


私は人生イージーモードを授かってウキウキしてた。

でも、兄さんのことを考えると素直に喜べなかった。


兄さんはずっと落ち込んでる。


「兄さん、大丈夫?」

「なんとかね」


そう言ってるけどいつもよりあきらかに元気がなかった。


私と兄さんが歩いてるとやがて草原に出てきた。

そして、視界の先にはスライムがいた。


「倒そ、兄さん」

「う、うん」


歯切れが悪い。


私は杖を手に取って、兄さんは腰に下げてた短刀を抜いた。


(私が先に出ないと!)


私は先に進んだ。

そして


ポコッ!

ポコッ!


「えいっ!」


スライムを殴った。


6ダメージ!

スライムは倒れた。


そして、経験値を貰った。


【レベルが上がりました。レベル1→3】


「兄さん、レベルあがったよ!私!」


これで兄さんの進む道を示せればいい、って思った。


「う、うん」


兄さんは頷いてスライムを斬った。


ザン!ザン!


「どう?レベルあがった?」


首を横に振った兄さん。


「無理だよ。上がんない」

「諦めないで兄さん!」


私はそう言ってスライムを殴りつける。


ポコッ!

一回で攻撃をやめて


「兄さん!キルボーナスあげるから斬って!」

「あ、ありがとうミーシャ。ミーシャはなんて優しいんだグスグス」


泣きながら私が体力を減らしたスライムを斬った。


私は協力ボーナスを貰った。


【レベルが上がりました。レベル3→4】


「すごい!イージーモードってこんなに簡単にレベルが上がるんだ!」


こんなに簡単にレベルが上がることが嬉しくてつい兄さんを見た。


「上がらないよ俺は」


そう言ってる兄さんだけど私は諦めずにその後も10匹くらい兄さんにキルボーナスを取ってもらった。


それで私のレベルは10に上がった!

すごいスピードでレベルが上がったけど。


「兄さんは?」

「やっと、レベル2に上がった」


そう言ってVサインを作ってくれた兄さん。


「ちゃんとレベル上がるね!このままレベル上げてお父さんたちを驚かせようよ!」

「うんっ!」


兄さんはやっと元気を出してくれたようだった。


しかし、その時


ブブブブブブブブブブ。


羽音が聞こえた。


音の方を見ると


「カブトムシ?」


ブブブブブブブブブブ。


そのままカブトムシは兄さんに接触した。


「オットゴメンヨ。アタッチャッタ」


カブトムシはそうやって謝ってたけど。


兄さんは倒れた。


【エースが力つきました。拠点への転移を開始します】


兄さんが光に包まれて消えていく。


「兄さん?!にいさぁあぁぁぁぁぁぁぁん!!!!兄さんがカブトムシと接触して死んじゃった!」



家に帰ると兄さんは転移していた。


そして



名前:エース

レベル:1



レベルは下がっていた。

せっかくあげたレベルが下がってた。


それを見て私も膝を着いた。

力が入らなくて崩れ落ちた。


兄さんを囲う両親は涙を流していた。


「これが、マストダイの難易度なのか……くそ!」

「お父さん。まだまだ始まったばかりよ。マストダイは。まだどうなるかは分からないわよ」

「見たか?敗因がカブトムシに接触した、なんだぞ?そんなものを見てしまえばこれからどうなるかはわかるだろう!どこの世界にカブトムシに突進されて倒れる奴がいる?!」


両親は泣きながら部屋を出ていった。


私も思っていた。


「兄さん、ごめんなさい。私がレベルあげようなんて言い出さなかったら、こんなことならなかったのに。グスグス」


兄さんの胸に顔を埋めて泣いた。


「ひぐ……ごめんなさい兄さん」


そのとき頭を触られた。


顔を上げると兄さんが私の頭を撫でていたのだった。


「気にしないでよミーシャ。俺は君の優しさが嬉しかったからさ」


そう言って起きてきた。


「だ、大丈夫なの?起きて」

「大丈夫だよ」


兄さんはそのまま立ち上がって言った。


「俺は別でレベリングをするよ。だからミーシャも俺の事そんなに気にかけなくていいからね。ミーシャまで俺に付き合う必要なんてないんだからさ」


そう言って兄さんは歩いていった。


私はその背中を見送ることしか出来なかった。


兄さんはあんなにつらいのに、私はなんて無力なんだろう。


「ごめんなさい兄さん。カブトムシと接触して負けるなんて思わなかったんだよ……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る