第2話 マルグレーテ二世(デンマーク王国:在位1971.1.4~2024.1.14)

 さて始まりました古今東西女性君主列伝。

 最初に取り上げるのは、連合ユナイテッド 王国・キングダムのエリザベス二世陛下(1926~2022)亡き後、世界で唯一の女王となられた、デンマーク王国のマルグレーテ二世陛下です。

 ご存命の方なので、敬語を用いてます。ご了承ください。


 まずは、デンマークってどこだっけ? と仰る方もおられるかと思いますので、その解説から。ドイツの北、ユトランド半島とその周辺の島々、さらには自治領であるグリーンランドおよびフェロー諸島から構成される、北欧諸国の一つです。

 北欧の国というと、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドのスカンジナビア三国を思い浮かべがちですが、デンマークもお忘れなく。

 首都はコペンハーゲン。ユトランド半島ではなく、シェラン島という島に位置しています。

 ちなみに、大陸に領土を持っていながら島嶼とうしょに首都を置いている国家は、このデンマークと赤道ギニアの二ヶ国だけです。豆知識。

 デンマークを代表する有名人と言えば、やはり童話作家のハンス=クリスチャン=アンデルセン(1805~1875)がその筆頭でしょう。

 ついでに、2023年7月時点のFIFA世界ランキングでは19位。日本の一つ上ですね。


 ということで、1972年から実に半世紀以上、このデンマーク王国の王位についておられるのが、マルグレーテ二世陛下です。


 現在のデンマークの王家は、グリュックスブルク家、デンマーク語ではリュクスボー家という家系です。現ノルウェーの王家もこの一族で、ギリシャ国王も輩出しています。

 そして、現在の英国王チャールズ三世陛下(1948~)も、グリュックスブルク家の血を引いておられます。お父上であるエディンバラ公(エリザベス二世の王配おうはい)の祖父君そふぎみが同家出身のギリシャ国王なのです。


 いやほんと、ヨーロッパの王室って、あちこち複雑に絡み合っていてややこしいことこの上ないですよね。お詳しい方はマジで尊敬に値します。


 それはさておき、マルグレーテ二世陛下がお生まれになったのは、1940年4月16日。

 そのわずか1週間前の4月9日には、ナチスドイツがデンマークに侵攻、6時間足らずの交戦の後、降伏させています。つまり、ナチスドイツ占領下という状況での誕生だったわけです。

 父親はフレゼリク王太子、のちのフレゼリク九世(1899~1972)。母親はスウェーデン王女イングリッド(1910~2000)。

 お生まれになった当初は、女性に王位継承権は無かったのですが、後に法律が改正され、王位継承権が認められるようになります。

 この法改正の背景としては、フレゼリク九世に男児が生まれず、王位継承者は弟のクヌーズ(1900~1976)という人だったのですが、ナチス占領下で親ナチスと見られたことから人気がなく、王女への継承が望まれたから、ということがあったようです。

 そして、1972年1月14日、父王の崩御に伴い国王に即位なさいます。


 即位にいたる経緯からもわかるように、必ずしも積極的に王位を望まれたわけではなかったようですが、女王としての重責を果たされつつ、様々な分野での才能も発揮してこられました。

 デンマーク語以外に、英語、フランス語、ドイツ語スウェーデン語も堪能。柔道もたしなまれているのだそうです。


 そんな中でも特筆すべきエピソードは、やはりこれ。イラストレータとしての才もお持ちで、「インガヒルド=グラスマー」というペンネームで、かのトールキン(1892~1973)の『指輪物語』デンマーク語版の挿絵さしえも描いておられます。

 以下のサイトに詳細が書かれていますが(ttps://bagend.me/news/release-info/new_danish_lotr_2021/)、元々、王女時代にトールキン教授に宛ててイラスト付きのファンレターを送られ、それがトールキンの琴線に触れたのだとか。


 もちろん、国民からも広く愛され続けている女王様です。

 というか、物語に登場する「才能豊かで国民から愛される女王陛下」像を絵に描いたような方、といっていいでしょう。これぐらいやっても盛り過ぎじゃない、ということです(笑)。


 ちなみに、配偶者はヘンリック(1934~2018)という方で、元々はフランスの貴族出身で外交官でした。「ヘンリック」という名は、フランス風の「アンリ」をデンマーク風に改めたものです。

 お二人の間にはフレデリック(1968~)とヨアキム(1969~)という二人の王子が生まれ、孫も八人いらっしゃるのですが、王族として歳費を受け取ることに対して国内の批判が高まってきたため、2016年には、フレデリック王太子の長男クリスチャン王子(2005~)のみが王位継承権者として歳費を受け取るものと定められ、さらには2023年からはヨアキム王子の四人の子からは王子・王女の地位を喪失するものと定められました。

 やはり今の時代、どこの国も王室の維持というのは中々に大変なようですね。


 残念ながら、来日なさったのは王女時代も含めて4回きりで、あまり日本人には馴染みのない方かと思われますが、現在世界でただ一人の女王陛下のことを、心に留めておいていただけましたら幸いです。


 次回は中国・武周ぶしゅう武則天ぶそくてん。いきなりラスボス級の登場です(笑)。乞うご期待!



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次話から隔日更新予定。明後日9/21(木)の17時に更新します。ヨロー。


2024年1月14日、マルグレーテ二世陛下は生前退位され、その52年に渡る治世に終止符を打たれました。


陛下のご長寿をお祈り申し上げます。

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