三章 山での攻防 後編 8
※※※
ふと、俺は意識を取り戻した。呆けた頭が元に戻り、思考がハッキリしてくると、
「あぁ、そうか。…だがら、試験の前にノイマンの言葉に突っかかったり、自分らしくない事をしていたのか。…リキッドを、…いや、じいさんを、…。」
と囁く声で呟く。同時に、今までの不可解な行動を納得していた。全身の毛穴が開き、感情が高ぶって身震いしだし、力で手の震えが押さえられなかった。
「…あの?」
突然のことに、抱きついていた少年が見上げてきた。
すぐに俺は目が合わせると、柄にもなく微笑みながら、
「行ってくる。…お前は此処に居ろ。」
とだけ言い残し、彼の手を振り払うように、前を向いて駆け出した。躊躇せずに真っ直ぐに突き進み、だんだん足に力を入れていく。
その視線の先では、ボアが突進しており、再びテッドの方へ向かっていた。
「逃げろ!」とノイマンが叫んでいた。
同時に俺は地面を蹴って飛び出し、勢いのまま拳を振りかざして、ボアの目に突きだす。見事に命中し、手応えを感じた。
「ブフォァ!?!」
するとボアが悲鳴をあげており、進行方向がズレていく。そのままテッドやノイマンの真横を通過してしまい、最終的に近場の樹木にぶつかって、痛みに身悶えながら地面をのたうち回っていた。
その様子にテッドとノイマンは、両目を見開いて驚いていた。やがて此方の方にも振り返ってくる。
二人の目の前に、俺は着地し、
「おぉ、体重かけて思いっきり行ったら、軌道がズレたな。」
と呟きながら、利き手の右腕を前後に動かし、拳を開いては閉じてみる。素手でも、急所を狙えばある程度は戦えそうだと、確信してほくそ笑んでいる。
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