三章 山での攻防 後編 9

 だが、その時に、ボアが動く気配がした。

 俺は振り向いて、視線を送ってみる。

 すると、ちょうどボアも再び立ち上がってきていた。まだまだ動けるようで、より怒りを露にしており、臨戦態勢を取ってくる。

 (っち。…やっぱり、あの程度じゃ。…痛くも痒くもないか。)

 と俺は心の中で悪態をつき、思わず舌打ちしている。しかし、すぐさま自分なりに構えだした。右腕を前に伸ばして手の掌を返すと、人差し指だけを繰り返し動かしながら、

 「来いよ、…この猪風情が。……」

 と煽りちらした。同時に不適な笑みも浮かべてみる。是等は、いつも坑道の監視達に、「…奴隷風情が。」と馬鹿にして言われたものだった。もしかしたら、もっと怒るかもしれない、と考え、実行する。

 すると案の定、ボアは咆哮を挙げてきている。

 俺は思考を巡らせ、自分のするべき事を模索した。

 そして相手が動き出した。

 それと同時に、此方も踵を返して、後ろにいる二人の方に向き直ると、行動に移る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る