三章 山での攻防 後編  5

 「いいから、……黙って歩くんだ。」

 「おかしい、だろう。…」

 「うるさいなぁ、…頼むから歩いてくれ!」

 それでも、未だに彼は歩き続け、ノイマンの身体を引きずりながらも連れていこうとしており、決して足を止める事も置いていく事もしないみたいだ。

 しかし、遂にボアが突進してきて、衝突してしまう。

 そうして二人は衝撃で宙を舞い、前の方の地面に落ちた。それぞれが身体の痛みにうめき声を漏らす。

 さすがのノイマンも、動けないようだ。

 対して、いち早くテッドは上半身を起こそうとしているが、無理に身体を動かして吐血してしまう。

 ふと視界の端では、通り過ぎていったボアが、また戻ってこようと身体を翻しているようだった。

 再び俺は二人の方に視線を向けた。

 「…馬鹿なの、か!?…このままじゃ、本当に死んでしまうぞ。」

 と、ノイマン叫んでいる声が聞こえる。

 「死ぬつもりはないよ。…。」

 「お前、おかしいんじゃないか。…なんで、…そこまでやるんだ?」

 「ははは、かもね。…」

 それを聞いても、テッドは微笑みながら立ち上がった。さらにはノイマンの方へ向かって、またゆっくりと歩き出すと、やけくそ気味に大きな声で喋りだした。

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