二章 ギルドとスキルと勝負 19
「ふむ。…私の運営するギルドへ行かないと、調べられないな。」
とリキッドは呟くと、話を締めくくる。
ダフネも机の上を片付け始めていた。もう食事の雰囲気でもなくなっている。
俺も流れに身を任せ、椅子に座り直す。ついでに頭に過った事を質問しだした。
「しかし都合よく、鑑定の道具を持っていたな。…スキルが見つかるのは稀なんだろう?」
するとリキッドは手を止め、顎に手を当てながら、「私は常に持っているよ。」と答えていた。
「…何で?」
「…スキルを鑑定して、内容を纏めて置くのも私の仕事だから。…情報を整理しないとギルドの運営を纏めるのも、大変だからね。」
「そうですね。…旦那様はギルドの統括管理者の内の一人ですし、…」
その途中で、ダフネも独り言を呟いている。
「…統括管理者?」
と俺は再び聞き返した。聞き捨てならない単語を聞いた気がする。
「…ギルドには運営する上で最高決定権を持った四人の人間がいて、…彼らを統括管理者と呼びます。」
とダフネによって、再び解説が成される。
「…つまり?」
「旦那様って、凄く偉いんですよ。」
「嘘だろ!!」
俺は驚いて、思わず声をだす。ついでにリキッドの方を見た。
彼は締まりのない顔で、照れているようだ。
※※※
そうして、夜が更けていた。
俺達は、部屋を後にする。
リキッドは廊下に出ると、先導しながら進んでいく。
俺とダフネも、後を追いかけて行くと、一番奥の部屋の前に辿り着いた。
すかさずダフネが扉を開けていた。
さらにリキッドも、「此処が君の部屋だよ。」と中に入る様に促す。
ゆっくりと俺は入室していく。部屋の中を見回すと、感嘆の声を漏らした。
この部屋も、簡素だが豪華な造りだ。
窓際に大きなベッド、小さな机、タンス、が置いてある。
坑道の牢屋よりも、贅沢だ。
そのまま俺は、ベッドに腰かけると寝転ぶ。
ふかふかの布団だ。まるで吸い込まれる様な錯覚に陥りそうになる。
「…お休みね。ヒルフェ君。」
とリキッドは廊下から声をかけると、扉を閉めた。
その直後に、彼等の足音が遠ざかる。
部屋の中も、静まりかえる。
(……まったく。…驚いてばかりの日だったな。)
俺は寝転んだ状態で、天井を見ながら考え事をする。
今日の出来事が脳裏に焼き付いている。あまりの目まぐるしさに理解が追い付かない。さらには、ーー
(…明日は、さっきのギルドに行くけど、大丈夫か?)
と、心の中で嫌な予感や不安が渦巻りだす。なんとか払拭しようと目を閉じて眠ようとした。
だが寝やすい様に姿勢を変え、寝返りをしても、全く眠くもならない。
次第にカーテンの隙間から、日の光が射し込んでくる。
もう外は朝になっていたのだった。
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