第34話 みんなあげちゃう

食事が終わり買い物に来たんだけど…何事なの?


「なななな…何事?」


「セレス様にマリル様、これは幻のうっここ鳥の卵ですどうぞ」


「これは有機村のトマトですよどうぞ」


「最高級のルビーでございます…どうぞお持ちください」


皆が、私達に物を押し付けてくるのよ!


セレスは横でなんで笑っているのよ...


「かかかかか…買わないわよ!」


あわあわしながら答える私に皆が物を押し付けてきたわ。


押し売りなのかしら?


「「「「「いえいえ、お金を貰うなんて滅相もありません、これは貢物でございます」」」」」


「へっ…」


「どういうことですか?」


話を聞くとここに居るのは…というかこの街に住む多くの人は殆どが『女神教』の信徒らしいのよ。


何でも私やセレスに物を渡すのは『女神に供物を捧げるのに等しい』そういうことらしいわ。


だから、皆してこうやって物を押し付けてくるわけね。


いつの間に入れ替わったのかしら?


確かに言われてみれば…街はそのままだけど、人はかなり違うわ。


「いつから此処に住み始めたんですか?」


セレスが聞いてくれた。


「セレス様やマリル様のお話を聞いて引っ越してきました」


「相場の3倍位で話したら、即決で売ってくれたので家を買いました」


「教会がお金を貸してくれたのでおもいきって引っ越してきました」



駄目だ..これ...多分、この状態が毎日続くのね...


「セレス…もう持てないわ…助けて」


私は既に両腕一杯の荷物を押し付けられていたわ。


セレスが収納魔法を使ってしまってくれたんだけど...


「勇者様は『収納魔法』をお持ちだ…これなら幾らでも捧げられる」


幾ら私でも気が引けるわよ!


「セレス逃げよう」


そう伝えると私はセレスの手を取って逃げ出した。


◆◆◆


「…此処迄くれば一安心かな」


「そうだね」


私とセレスは商業地域を抜けて噴水がある広場まで逃げてきたわ。


此処迄来ればお店も無いし、周りには子供しかいない。


これで、安心だわ。


「うわぁー-お姉ちゃん奇麗」


「そそそ、そうかしら?」


「うん、お姉ちゃんみたいに綺麗な人、私初めてみたよ」


「そうかしら? そんな事ないわよ」


子供とはいえ、照れるじゃない。



「お兄ちゃんもカッコよいよ」


「そうありがとう…」

何だか嫌な予感がする。


「お姉ちゃん、お菓子あげる」


「お兄ちゃんにもあげるね」


「そんな悪いわよ、このお菓子は自分で食べた方が良いわよ…お姉ちゃんは家にあるから」


「ううん…お姉ちゃんに食べて貰いたいの」


「そう? ならこの飴だけ貰うわ…ありがとう」


「お兄ちゃんも食べてよ…ほら」


「それじゃ貰おうかな?」


セレスがお菓子をパクついていたら...なにこれ?


「えーっキャルナばかりずるいよ! お兄ちゃん私のも食べて」


「ちょっと私が先に並んでいたのよ…あんたこそ遠慮しなさい」


「お姉ちゃん、私のはケーキよ食べて…」


「そんな安物食べないわよ…マリルお姉ちゃんは私のこのクッキーを食べるのよ」


「いいよ、それじゃセレスお兄ちゃんにあげるから…はい、あーん」


ちょっと待て…私たち『名前なんて名乗ってない』わ


「あの…なんで名前を知っているの?」


「「「「「だって勇者様と賢者様だもん、知らない訳ないよ?」」」」」


「セレス!」


「うん、いこう」


二人して一緒に走り出した。


「待ってお兄ちゃん…お姉ちゃん」


「まだ子供だけど…絶対に役に立つから…お願い傍に置いて」


「いう事なんでも聞くから…お願いします」


「ハァハァ…お話し、お話だけで良いから…お兄ちゃん」



さっきまで純粋な子供だと思っていたのに…今は欲にまみれた存在にしか見えないわね。


まさか幼女や幼児に追いかけられるとは思いもしなかったわ。



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