第32話 酒場での出来事
「セレス様、マリル様、良かったらよっていって下さいよ」
いきなり、街のレストランで声を掛けられたわ。
確かにこのレストランは私達の行きつけだけど、可笑しな事に声を掛けてきた店員に身に覚えが無いのよね。
初めて見る顔だわ。
「どうする? マリル?」
セレスが私に聞いて来たわ、折角のお誘いだもん、食べていこうかしら。
「そうね、お腹すいたから食べていこいうか? おじさん、いつものお勧めの定食2つ」
「はい、ありがとうございます!ですが、今日は少しメニューが変わりますが宜しいですか?」
「うん、日替わりだから、変わるのよね、いつもの事じゃない?」
「それならば、腕によりを掛けて作ります」
「うん、お願い」
なんでこんなに愛想がいいのかしら?
皆、ニコニコしてこっちを見ているし...
しかも、店内の店員にも誰一人知っている人間がいないわ。
どうしたと言うのよ!
席も可笑しいわ、個室に通され、どう見ても調度品からすべてが高級品だわね。
「これは一体?なにかしら?」
「ここはセレス様とマリル様ようの特別室でございます」
何故かオルゴールの音色まで流れてきたわ。
「まずはアミューズをお楽しみ下さい。白身魚とオルマンエビから作ったムースをサーモンのキッシュの上に載せてあります」
これ、どう見てもコース料理だわ。
マナーはこれでも貴族だから困らないけど、可笑しいわよ。
「マリル、これ凄く美味しい」
食を気にしないセレスが美味しいなんて、やっぱり凄いわ。
「前菜は タイイのカルパッチョです…タイイは海から飛竜便で取り寄せました」
うん…これは完全にコース料理だわ。
しかも、王族が食べるようなレベルだわ。
セレスも、満足するような美味しさだわね。
「ダル豆と海鮮をミルクで煮込んだスープでございます」
「セレス…これランチじゃないわよ?」
「そうだね」
まぁ、セレスが満足そうに食べているし、お金に余裕があるから別に良いけど。
でも、此処迄の味なら、セレスにも美味しいって思って貰えるのね。
「A5ランクの牛ヒレ肉のポワレです」
幾らなんでもこれは凄すぎるわね。
「これ凄いわ…お父様に昔連れて行った貰った食事より美味いわ」
「確かにこれは美味いですね」
「デザートは アイスを使ったイチゴムースのパフェです…あっパンのお代わりは要りますか?…アイスティーのお代わりは如何でしょうか?」
「それじゃパンのお代わり良い」
「はい」
バスケットで最初に出されたパンも柔らくて、凄く美味しいわ。
「それじゃ僕はアイスティーをお願いします」
「はい」
氷の入った飲み物なんて、滅多に出ないわ。
「最後に南方の飲み物カフィでございます」
これで、終わったようね。
だが、これはどう考えてもランチじゃないような気がするわ。
「これはまるでディナーコースだわ、それも上級貴族ですら滅多に食べない位のものじゃない?」
「確かに…これどうしたんですか?」
給仕の方がにこやかな顔でこちらに話しかけてきたわ。
「何をおっしゃいますか? 勇者様に賢者様なのですから…世界最高レベルの料理を食べて頂くに決まっています」
「えーと…何?」
「料理をしたのは、聖教国から連れてきた三ツ星レストランの中でも最高峰のシェフと言われるドルマンシェフ。食材は『勇者様や賢者様に』と世界の信者から集まってきた物です。 王ふぜいが食べる物と一緒にして貰っては困ります」
「あの…前のここの人たちは…」
「そうよ…どうしたの?」
「聖教国の一等地のレストランと交換しましたのでご安心下さい」
「そうですか」
「それなら良いわ」
しかも、幾ら言ってもお金は受け取ってくれない。
暫く話していると奥からシェフまで出てきたわ...
「世界一の貴人に食べて貰える栄光を頂いているのです…お金なんて貰ったら罰があたります。しかもここのシェフに成ることで教皇様から一級信者の地位まで頂いたのです…どんな料理も作りますから…お礼と言うなら毎日食べに来てください」
「わたくしめも同じでございます…お二人の給仕をする事が最大の幸せなのです。もしお礼というなら、明日も来てください」
こんな騒ぎになったのよ。
仕方なく、明日も食べにくるからね…そう伝えて外に出たわ。
だが、この騒動はこれだけでじゃすまなかったのよ。
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