第30話 変わりつつある日常

「何処に行かれるのですか?セレス様にマリル様?」


「買い物にね…行こうと思うの」


「それなら、私にお申し付け下さい、なんでも買ってきますよ? 費用は教団しいては聖教国が全部負担しますからご安心下さい」


「流石にそれは悪いので、良いですよ」


「いえ、これは国を挙げての事なので気にしないでください」


「そ…そうなの? だけど今日は二人で散歩兼ねて出かけるだけだから良いわ」


「そうですか…それなら荷物持ちを兼ねて聖騎士でもお付け…」


「「大丈夫です」」


これ以上話していると、教皇様や大司教も出てきそうなので、そそくさとセレスの手を引っ張って、急ぎ出かけたわ。


「マリル?」


「セレス…そろそろ常識を覚えないと不味いわ…というかもう手遅れだけど、ロマーニ教皇はただでさえ【勇者絶対主義者】なの、それにあそこ迄親切にしたら…どうなる事か…」


「どうなるのですか?(ゴクリ)」


「そうね、例えば貴方が大国のお姫様を好きなったとするじゃない? そしてそのお姫様は婚約が進んでいて、明日が結婚式だとするわね」


「はぁ」


「多分、直ぐにその婚約は破棄、そのお姫様は貴方の横に居るわ」


「はははっまさか?」


「いいえ、本当よ! それどころか…王妃様と結婚したいと言っても連れてきそうよ…あの教皇なら」


「冗談ですよね」


「冗談じゃないわ…お城が欲しいというなら王国の王城でも帝国の王城でも分捕ってきそうよ…あの教皇様」


「そう…ですか? まぁ僕はマリル以外必要ないので関係ありません」


「そ…そう?」


「はい!」


「それなら、余り関係ないわね」」


「僕は、人工的に作られた存在のせいか『欲』というものが全く無いんです。僕にとっては宝石もそこらの石も鉱物として同じ価値しかない。食事だって美味しいという事は解りますが…好ましいだけで、どうしても食べたいという欲もありません。

以前食事代わりに食べさせられていたエネルギーチューブは、本当に不味いんですよ!あれに比べれば、土だって美味しく感じる位です。女性に関しても『マリル』『それ以外』しか僕にはありません。どんな人もマリル以上には愛せないし、僕にとっては『マリル』それ以外欲しい物は無いんです」


「あのね、その、私もセレス以上に好きな人なんて居ないわよ」


「ありがとうございます・


にこりと笑うセレスの笑顔…これ以上欲しい物は...うん私だって無いわ。

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