第29話 教皇も...

凄い勢いで走ってロマーニ教皇様が馬車を降り走ってくるのが解った。


マリルに気が付かれないようにこっそりと下に降りて待つことにした。


「この度は本当にお世話になります」


教皇自らが動いてくれても確実じゃない。


マリルにぬか喜びをさせない為に事前に聞いて置く必要がある。


「ハァハァ、ゼイゼイ、セレス様、パルドール家の4名の件は無事に話が終わりました」

話を聞けば、聖教国の修道所で引き取る事が決まったそうだ。


無事に引き取りが終わって、聖騎士たちが修道所に連れて行っている最中だそうだ。


「本当にありがとうございます」


「いえいえ、勇者様の為ならこの位大した物じゃありません」


「それで、お礼と言ってはなんですが…こんな物を作ってみたんです」


「これは何ですか?」


ちょっとだけ気合を入れて作ったんだ。


教皇様には気に入って貰えるかな。


まぁ…1時間位掛けたんだ。


「法衣です。一応魔力を込めて作ってみました」


「勇者様がこれを?」


「はい」


「この衣は一生大切にしますね」


少し気合をいれただけなんだけどな。


こんな笑顔を見せてくれるなら、もっと頑張った方が良かったかも。



「それじゃ、本当にありがとうございました」


「また、何かあったらご相談下さい」


本当に聖教国の人って良い人が多いな。



◆◆◆


「教皇様も勇者様に何か貰ったのですか?」


「ええっ、可愛いものですね、手作りの法衣だそうです」


孫から貰ったプレゼントより嬉しいものです。


勇者様が自ら作ってくれたのですから。


「セレス様が作られたのなら…多分、また飛んでもない物の様な気がします」


私も若いころは鑑定士として活躍した時期がありました。


そう言うなら調べてみますか。


「そうですか? 何か付与でもしてくれたのですかね…それじゃ【鑑定】」


えっ…これは…



【白の聖衣】


その昔、魔王ゾーラが身に纏まっていたという【闇の衣】のついになる存在。勿論、そんな物は存在しない…恐らくは技術解析により作られた高品質な品。


全ての悪意のある魔法を無効にする。

その魔法には魔王が使う死の魔法も含む。


炎や氷にも有効。

但し、物理攻撃(刃)などには弱い。


所有者 ロマーニ教皇



「教皇様?」


「あはははっ、マルロー、私はセレス様の為なら喜んで死ねる。あの方が欲しがるものは全てを犠牲にしても手に入れる事でしょう。こんな名誉ある贈り物、どんな教皇も貰った事は無い。セレス様は歴史状で最も女神に近い勇者様です」


「教皇様もですか…ハァ~本当に羨ましすぎます…どんな物か私も見させて頂いても?」


「驚きますよ」


「もう驚き…あっあああああっ国宝級どころか伝説級…あああっ」


「凄いですね…これは恐らく、伝説に伝わる翆玲の羽衣すら霞む存在ですよ」


魔王の魔法を完璧に防ぐ防具なんて私は知らない。


勇者の鎧でも緩和はするが完ぺきではない。


セレス様は勇者の他に天使のジョブまで持っていた。


考えられる答えは…女神が自分に仕える天使を勇者にして送ってくださった。

そういう事に違いない。


そうでもなければ…こんな人知を超えた物は作れない。


『鍛冶の勇者』だろうが、これ程の物を作った記憶は無い。


「マルロー…セレス様は勇者の枠でおさまりません…セレス様の意思は女神様の意思に等しい…【すべての人間はセレス様に逆らう事を禁ズ】そういう世の中にする事が私達の使命です」


「あの教皇様…」


「この意思に逆らう事は、絶対に許しません」


狂っている…そうマルローはこの時思っていた。


だが…もう止まらなかった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る