第25話 勇者絶対主義


私は今日…奇跡に出会う事ができた。


我が家は代々『勇者絶対主義者』だ。


それは代々受け継がれてきた。


『普通の人間と『勇者』を含む四職を一緒にしてはいけない』


当たり前の事だ。


『女神の寵愛を受けた人間』


『神の御使い』


それが勇者様なのだから『人間で一番偉いのは勇者様』だ。


だからこそ『勇者様の幸せが一番』なのだ。


そんな考えの私が教皇になったのに…今の時代には…なぜか勇者様が居なかった。


勇者様が居ない=魔王が居ない。


教皇としては喜ぶべきだが…私の思いは複雑だ。


何故『私は勇者様に会えない』のかそう何回思った事か解らない。


我が派閥は生まれた時から『勇者様達』への忠誠を代々継ぐ。


結婚の時の誓いさえ『世界で5番目に愛している』そう誓うのだ。


これは例えどれ程、家族を愛していても4職の方を優先するという考えだ。


勿論、夫が居ようが、妻が居ようが…四職の方が望まれるなら解れて結婚、いや奴隷にすら喜んでなる。


そういう教えなのだ。


『当たり前だ』


勇者様たちは、人間で一番『神に近い』存在なのだ。


我々は『死ね』と言われれば喜んで死ねる。


それが『勇者絶対主義』なのだ。


私はこの世に生まれて…どれだけ勇者に会いたいと望んだか解らない。


今まで幾ら望んでも『現れてくれなかった』


ようやく現れた『剣聖』を帝国に取られた時は苦しくて仕方なかった。


だが、剣聖は四職では一番下、時代によっては複数現れた事もある。


本当に信仰するのは他の三職だ。


事実、魔王相手に三職で戦った時すらある。


そんな我らの願いが叶ったのか…目の前に勇者のセレス様が居る。


しかも天使で聖人でもある。


そして、心を痛め傷ついたマリル様が居る。


そんな私が…初めて勇者様から頂いたお願い。


例え、戦争しても叶えて見せる。


「それでは、私たちは『すぐに王城』に行きますので、部屋でゆっくりとお待ちくださいませ」


「ああっ…解りました」


ああっ何という響きだ…すぐに行動を起こさねば。


◆◆◆


「マルロー、今すぐ枢機卿に連絡、急ぎなさい」


「通信水晶をつかい連絡済みです…今現在牢獄に居るので処刑されないように手配済みです」


「そうですか…では枢機卿に『パルドールの4人』は聖教国で貰い受け罰を与える…そう伝えなさい」


「はっ…その他の人間はどうしますか?」


セレス様やマリル様にとって大切なのは『マリル様の家族』だけです。


『他は要りません』


「そんな者を救う必要はありません『好きにしろ』とお伝えください…いや、マリル様に杖や剣を向けたのです死罪で良いでしょう」


「それではその様に致します」


「すぐに私も向かうという事も伝えておいてください」


「はっ」


私は、今いる者達に事情を話した。


「ようやく、ようやく女神様が私たちの願いを叶えてくれたのですね」


「やはりあの方達が私達の仕える人だったのですね」


沢山の声が上がる中…城に行く者を選ぶので一苦労しました。


何せ『全員が行きたがる』のですから。


仕方なく、その中から20名を選び城へ迎えに行く事にしました。


まぁ教皇である私が一回死んだのですから…逆らう事等許しません。


セレス様やマリル様が喜ぶようにすると致します。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る