第24話 教皇は隣人?

とりあえず、家には帰ってきた。


マリルは落ち込んでいて喋らない。


半泣き状態で部屋に籠っている。


直接聞いた事は無い。


だが、マリルの中には『家族に認められたい』その気持ちが強くあった筈だ。


そして受勲こそが、家族に認められる一歩だった筈だ。


だが、それは家族によって阻まれた。


ハァ~これはどうして良いのか解らない。



トントン


僕はノックしてからマリルの部屋に入った。

マリルは布団にくるまって隅にいた。


「なによ!」


かなり落ち込んでいるのが解る。


「あのさぁ…落ち込んでいても良いし、引き篭もりたいならそれも良いよ…だけど、これからどうしたい?…それだけは決めて欲しい」


「今は何も考えたくないわ!」


「そう…僕はマリルが幸せになれるなら他はどうなっても構わない。それは僕自身も含んでね…だけど、どんなに辛くても今は、しっかり考えないと不味いよ…特に君の家族をどうするか…」


「私の…家族?」


普通に考えて『決闘に王様の前で負けた』それにあの損害只では済まないだろう。


それに加えて決闘の勝者に本来は生殺与奪権があるから…その話し位はくるだろう。


「そう、マリルが勝者だから、その後についてきっと話し合いの場が求められる…だから決めないといけない…これだけは急がないと…」


マリルは一瞬顔を曇らせた。


「そう…それじゃ、その事はセレスに任せる…ごめん、今の私はきっとうまく考えられない…ただ、命だけは助けて欲しい…それ以上はきっと望めないし、望んじゃいけない」


幾ら泣いていてもこういう交渉は待ってくれない。


「解った」


ただ…あのやらかし方…どうして良いか解らない。


王城崩壊…その弁償となれば手持ちで足りない。


待て…黒いトカゲであんな金になるんだ…青いワンコとか赤いトカゲを狩れば…う~ん、それも視野にいれてと…最初に誰と話せばよいのか?


「セレス様、おはようございます」


「おはよう…?….」


◆◆◆


「あの、なんでこんな所に居らっしゃるのですか?」


「私たちもこの建物に引っ越してきたものですから…」


何故なんだ…教皇が…なんで箒を持って廊下を掃いているんだ。


「あの、教皇様、なぜこんな所で掃除をしているのでしょうか?」


教皇だぞ…それがなんでこんな場所にいるんだ?


「いゃぁ~掃除なんて数十年ぶりですが、セレス様とマリル様の為と思えば、自らしたくなりましてな…おや、顔色が悪い様子、何か困りごとですかな?」

「まぁ、色々と…」


「おや…それじゃお茶でも飲みながら、如何ですか? ご相談に乗りますぞ」


「それじゃ聞いて頂けますか?」



部屋の中はこれでもかと豪華になっていた。


「どうぞ、おかけください」


何故上座なのか解らないが進められるままに座った。


僕は、今までの事を相談した。


「凄く優しい方なのですな…まるで『聖女様』のようですね」


「はい、マリルは凄く優しいんですよ、ですが聖女ではなくジョブは『賢者』と『剣聖』ですね」


《ななな、Wですと…やっぱり睨んだ通りでした…それなら》


「そうですか…それでセレス様のジョブは何でしょうか?」


マリルの話じゃジョブが無いと厳しいんだっけ?


『パーフェクトヒール』を使ったから…『聖人(聖女の男版)』と死んだ人間を生き返らせたから教会関係者なら可笑しく思われるといけないから『天使』をセット…あとマリルのパートナーとして『勇者』をセット…まぁ幾らでも組あわせる事が出来るけど、この3つで良いか?


僕やマリルのジョブは『偽物』だ。


一応、ばれるかどうか…試してみても良いだろう。


「良かったら、鑑定して頂けませんか?」


「そう…ですか。マルロー、マルロー」


「はい、教皇様、なんの御用でしょうか?」


「貴方の審議眼で、セレス様のジョブを見て欲しいのです」


「解りました…うわぁぁぁぁぁー-っ、貴方様はー――っ」


何でいきなり土下座しているんだ?


解らない…


「どうしたと言うのですか?」


「このお方は『天使様』で『勇者様』で『聖人様』です」

「なんですって…」


《こんな奇跡に巡り合うなんて思いもしませんでした。天使様クラスに仕えた人物など伝説の中にしかいませんよ。こんな方に悲しい思いはさせられません…ええっ『何を犠牲にしても』》


「そんな大した物じゃないんですが」


「あはははっ謙遜なさらずに『パルドール家』の件は私に任せて下さい…そうですね、一生修道士と修道女として教会で過ごさせるのは如何でしょうか? これなら命は助かるし、罪も償わせられます。それにある程度会心したら…マリル様に会わせる事も可能ですよ」


「流石は、教皇様、素晴らしい」


「そうですか…お褒め頂いて光栄です。ですが教皇なんて呼ぶ必要はありません…これからはロマーニと呼び捨て下さい…私たちは、貴方様たちに仕えるべき下僕なのですから」


「はい?」


まぁ良いや…これでマリルも、少しは元気になってくれるだろう。


「それでは、私たちは『すぐに王城』に行きますので、部屋でゆっくりとお待ちくださいませ」


「ああっ…解りました」


理由は解らないが…これで多分大丈夫だよな。








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