第21話 帝国

決闘騒ぎとは、何とも面白い。


クリフの若造が『ドラゴンスレイヤー』の称号を贈ると通達してきおった。


どうせ、せいぜいが火竜でも狩ったのか、そう思ったが、あの『冥界竜バウワー』を狩ったのだという。


何の冗談かと思えば…本当に王国に素材が出回っておった。


これは由々しき問題だ。


我が帝国と王国は戦争こそしないものの仲は決して良くない。


そんな国に、そんな猛者が現れたのなら、この世界の勢力図が傾いてしまう。


だが…


「あの二人が件のエターナルラバーか?どう見てもただの若者にしか見えないが…ギルフォード、どう思う?」


「はっ、帝王様、男の方は兎も角、女の方は…只の少女にしか思えません…隙だらけで、あれなら秒殺も可能です」


「それでは、大した実力者では無い…そういう事か?」


「はっ、その通りでございます…ですが、あの男は…」


「男の方がどうしたと言うのだ」


「かなりの強者です。私とて必ず勝利を拾えるとは思わぬ程の恐怖を感じます」

「『剣聖』のギルフォードが恐怖を覚える相手か…気になるな」

確か少年の名はセレス、心に刻む必要があるな。


「いや、幾ら強くてもまだ若い、脅威になるのは10年後でしょう」


「それなら、今は静観でよいな」


「その通りでございます、ガルバ帝王」


今の時代に『勇者』『聖女』『賢者』はいない。


だが『剣聖』だけは現れた。

その『剣聖』こそが、ギルフォードだ。


ギルフォードを臣下に迎える為に…幾ら使ったか解らぬ。


そのギルフォードからして『冥界竜バウワー』等倒せぬ。

大方寿命で死に掛けたか、ほかの『支配竜』と戦い傷を負った状態だったのだろう。


「はじまります」


「うむ」


どうやら決闘が始まるようだ。


「マリル、何か衝撃がきたら、ファイヤーボールと剣を振る事」


「ふん、私は宮廷騎士団故に、宮廷騎士団36名で相手する!」


「私はアカデミーの誇る戦闘魔法メイジ18名で挑むわ」



「卑怯じゃないか?」


本当に卑怯だ女1人に大人数。

帝国なら勝っても誰も称賛などせぬ。


「ふん、貴族にのみ助太刀は許されるのだよ…ドラゴンスレイヤーならこれでも余裕だろ!」


真のドラゴンスレイヤーなら余裕ではあるが、あの少女震えているではないか?


大丈夫なのか? 明らかに動揺しているぞ。


「マリル、いい加減目を覚まして、ファイヤーボールに剣を振って!」


「…ぶつぶつ...家族して..あっごめんセレス『ファイヤーボール』「えー-いっ」


なっ、なんだこの攻撃は…まるで魔王ではないか?


「危なかったですな…帝王様、訂正します。あれこそが王者の剣、私でなければ…」


「ギルフォード――っお前、体がー-」


目の前で魔剣クラソと共にギルフォードは上下にゆっくりと離れていった。


そして、この俺も…終わりだ。


目の前が暗くなった。


これが死という物か…


「パーフェクトヒール」「パーフェクトヒール」


「…」


「…」


生き返ったのか?


そんな馬鹿な…パーフェクトヒールは『死んでなければ何でも治す』最強回復呪文。


そんな者を行使する者が存在する…訳が無い。


あの呪文は『聖女』の中でも優秀とされる者が唯一覚えられる究極呪文。


それに『人間が使ったのでは死人は蘇られない』更に連発など出来ぬ。


「ギルフォード?」


なぜギルフォードが泣いている。


「ああっ、私は見誤りました…彼らこそが私の真の仲間...4人のうちの2人なのです…ああっ帝王様」


「それなら…何がなんでも我が国に貰わなければな…だがギルフォード、お前は良いのか? 帝国最強の名前が名乗れぬぞ」


「そんな物何時でも返上します。あの二人こそが、私の生涯の仲間であり友なのですから」


「なら決まりだな、何がなんでも我が国に迎えるぞ」


「はい」


世界の四職の内2職が目の前に居るのだ…手段は選ばぬ。


◆◆◆


「この国が嫌になったなら帝国に来ると良い…すぐに九柱騎士の団長に取り立て、欲しければ公爵にしてやるぞ…帝国は強い奴が好きだ...がはははっ」


まずはこれだ。


勲章なんてもので誤魔化さね。


最初から爵位でぶつける。






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