第19話 家族会議

これは家族会議をする必要がある。


クリフ王がお怒りだ。


今までは、侯爵という家柄のおかげでよく声を掛けて貰えた。


私の代になって、いや歴代のパルドールの党首で『顔を見たくない』そこまで言われた者は無い。


しかも『王宮にすら用がないなら来るな』という事は、事実上、城には来てほしく無い。


そういう事だ。


『まずい』これは本当に不味い。


しかも、マルスン宰相から「マリルに関わるな」と言われた以上は、関わることは出来ない。


しかも…叙勲の儀式に我が家は立ち会う事すら許されない。


ほぼ全ての貴族が集まる、叙勲…さらにこれ程の功績だ、その後はパーティーに恐らくパレードまで行うだろう。


その全てに『我が家は関われない』


莫大な利益に王からの信頼…我が家の宿願であった『公爵』その全てに手が届いたはずがこれだ…


私は…マリルを傍に置いて置きたかった。


才能があるからじゃない。


才能が無くても娘なのだ、愛情はある。


だが、家族の口車に乗って馬鹿なことをしてしまった。


恨まれても仕方がない。


例え、才能が無くとも、我が家で普通に暮らさせればよかったのだ。


魔法学園からも追い出さず…せめて様子を見るべきだった。


今活躍しているという事は、あと半年様子を見れば、才能が開花したはずだ。



「カロリーヌ、話がある」


「何か御用ですか?」


「マリルの事だ」


「あの出来損ないがどうかしたのですか? また何かやらかしたのですか? もう家を追い出して貴族籍から抜いたので他人…放っておけば良いのです」


「そう思うのか?」


「そうですよ、兄のアントニーは魔法の才能、姉のシャルは研究者として国に仕えているのに、あの子は何の才能も無い出来損ないなんですから」


「それはお前の目が節穴だったからだ…私は魔法学園卒業までは傍に置きたかった」


「あなた…あんな子が居たら、二人の縁談に差し障るのよ、あんな出来損ない….」


「八花勲章…」


「勲章がどうかしたのですか?」


「今度、マリルがその勲章と『ドラゴンスレイヤー』の称号を貰う…そして我が家はその権利に一切関れない…その意味が解るかね」


「馬鹿な、あのマリルがですか…そんな…」


「しかも、冥界竜バウワーをたった二人で倒した…これのどこが出来損ないなのだ! なぁ? 最早国ですら手が出せない位の実力者だ…」


「そんな…あのマリルが…」


「家族で話し合わなければならない…今後どうするかをだ? 二人にも声は掛けてあるから直ぐに戻ってくる…ハァ~頭が痛い」


◆◆◆


「ハァ~マリルが、そんなのは眉唾ですよ? 父上馬鹿らしいですよ」


「そうよ、あの出来損ないのマリルが、そんな訳ありませんわ」


「だが、マリルの事は王に宰相、他の貴族に知れ渡っている」


「ですが…そうですわ、マリルじゃなくて一緒の男性が優秀なだけですわ」


「父上、魔法学園最下位の人間が満足に魔法が使えるとは思えません」


「そうよ、あの運動音痴のマリルが、そんな簡単に強くなるとは思えませんわ」


「あなた、こんな短期間にそんな、強くなる方法なんてないわ」


「だが、どうすると言うのだ?」


「父上、すべて私にお任せ下さい…貴族の権力でねじ伏せて見せます」


「そうね」


嫌な予感がする、だが、もう我が家には跡が無い。


マリル…


私は…この家族の提案を蹴ることが出来なかった。



「解った、全て任せる…」


どちらが正しいのか解らない。


だが、この結末がどうなろうと私は責任を取るつもりだ。

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